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この世界は


ひと段落したので、このまま先に進んでも良かったのだが、色々と知りたいことも有ったため、男たちが目を覚ますのを待つことにした。

ただ待っているのもヒマだし、もう数時間も水分を補給していない。

どうせなら、この倒されてしまった木を無駄なく有効活用させて頂くことにしよう。


「頂きます。」


俺は葉っぱを毟ると、むしゃむしゃと食べるのだった。


「ほぅ! これは中々イケる!!」


葉っぱなんて物は初めて食べたのだが、瑞々しい食感に、口の中に広がる青臭さがたまらない!!

葉っぱって、こんなにも美味しい物だったんだな、知らなかったよ。

こんなにも美味しい物なら、やっぱり自然回復は早急に対策しなければならない案件だろう。組織に戻ったら提案してみよう。

俺は、あまりの美味しさに俺はつい夢中になって食べて続けるのだった。


「ふぅ…お腹いっぱいだ。」


流石にこれ以上は食べられない。久しぶりに満足した気がする。

食休みでゆっくりしていると、リーダーの男が目を覚ましたみたいだ。


「いてててっ…って、なんじゃこりゃ~!!」


自分が縛られていることに気が付き、叫び声を上げた。

そして、俺が居ることに気が付き、自分が置かれている今の状況を理解したみたいだ。


「お、俺をどうするんだ!」


「何、ちょっと知りたいことを教えてくれれば、それ以上は何もしないさ。」


最初は怯えていたが、殺されないと分かったらしく、少し落ち着いたみたいだ。


「わ、分かった。で、何が聞きてーんだ?」


「まずは、此処が何処かを教えてくれ。」


「迷子か? まあいいか。此処はティアル領のリデアの街近くだ。」


ティアル領? リデアの街? そんな名前聞いたこと無いぞ? そもそも日本じゃない!?


「す、すまんが、国の名前を教えてくれ。」


「サジルヘイム王国だ。」


俺が戸惑っていることで、何か感じることが有ったのか、素直に教えてくれた。

しかし、やっぱりそんな名前の国は、聞いたことが無かった。

いったい俺は、何処に居るんだ!?


「なぁ、あんたは何処から来たんだ?」


男は俺の態度から疑問に思ったらしく聞いてきた。


「俺か? 俺は日本って国から来たんだが、聞いたこと有るか?」


「いや、無いな。」


「そうか…」


ふと、オカシイことに気が付いた。何で日本も知らない場所で、日本語を話せているんだ!?

いや、そもそも日本語を話していない? よくよく観察してみると、話している言葉と口が微妙に合ってない気もする。

まるで日本語吹き替え版の映画を見ているみたいだ。

知らない国、勝手に翻訳される言葉、まるで異世界転生した主人公みたいじゃないか。…まさかね?


次にお金のことを聞いてみたのだが、鉄貨、中鉄貨、銅貨、中銅貨、銀貨、中銀貨、金貨、中金貨、白金貨、中白金貨、聖金貨が有るそうだ。

聖金貨までは10枚で次の貨幣になるとのことだ。まぁ鉄貨10枚で中鉄貨1枚って感じだな。そして聖金貨以降は貨幣が無いとのことだ。

と言うか、お札とかが無くて、金貨や銀貨で支払いをするって時点で地球では無い可能性が高くなった。

最期に途中で出会ったガイコツ怪人について聞いてみることにした。


「骨だけで動いて、周りの草を枯らしてしまう、あの生き物は何だ?」


「それも知らないのか…アレはスケルトンで、魔王の手下だ。この辺りでは最弱の魔物だがな。」


スケルトン!? 魔王!? 冗談を言ってる……様には見えないな。と言うことは本当のことなのか?

そして魔王が居ると言うことは、ここは地球では無く、異世界と言うことで間違いなさそうだ。

そして、草を枯らすスケルトンを手下と使うってことは、間違いなく魔王は俺の敵だ!!


「これで最後だ。スケルトンを倒した時に石を落とすだろ? アレは何だ?」


「あれは魔石だ。」


「魔石の使い道は?」


「魔道具を動かすときに使ったり、魔法を使ったりする時にも使うらしい。

 魔法については、俺は使えないから詳しくは知らんがな。」


「そうか、ありがとな。」


俺は男のロープを解いてやった。まさか解放されるとは思ってなかったみたいで、リーダーは驚いていた。


「な、なんで解いたんだ?」


「もう暴れなそうだし、聞きたいことも聞けたしな。縛られたままだと困るだろ?」


「そりゃあそうだが、俺達は盗賊だぞ? 兵士に差し出せば金になるんだぞ?」


「捕まりたければ、自分で行けば良い。俺は知らん。」


この世界は地球では無いし、自然が守られている。と言うことは、今の時点と言うことになるが、人間はブラックタイガーの敵では無いと言えるだろう。

逆に魔王の手下が自然破壊をしているのだから、俺の敵はこっちになるのだ。人間同士のいざこざには興味が無かったのだ。

とは言え、魔石については言っておかないと駄目だよな。


「あー、スマンが魔石だけは貰ったぞ。」


「命を助けてくれるんだったら、その程度構わないが…」


「俺にとってはそれで十分さ、じゃあな。」


俺は男たちに背を向け、再び歩き出すのだった。目指すはリデアの街だ。



・・・・



あの後は特に何事も起こらず、休憩を挟みつつ歩くこと2日ほどして、高い壁に覆われた街へと到着することが出来た。おそらく此処が、リデアの街なのであろう。

街の入り口には、中に入る人の長蛇の列が有り、並ばないで入るのは駄目みたいだ。

街には特に用事は無いのだが、もしかしたら元の世界に帰るための情報が手に入るかもしれない。

なので、俺は中に入るために、列の最後に並ぶことにした。


「聞いたか? 最近魔王の動きが激しくなってきたんだとよ。」


「そうなのか? この辺じゃまだ変わらないみたいだけど?」


「馬鹿、スケルトンが増えているのに気が付いて無いのか?」


「……言われてみればそうかも。」


「だろ?」


「あぁ。じゃあもう少し南に向かった方が良いかもな。」


「この街での商売が終わったら行ってみようか。」


「だな。」


前に居た2人の商人の会話が聞こえてきたので、何気なく聞いていたのだが、どうやら魔王が攻めてきているみたいだ。

この商人たちが南に向かうってことは、魔王は北から来るってことになるのか? 一応、頭の隅にでも記憶しておこう。

それから1時間ほどして、俺の順番になった。


「よし、次!」


兵士らしき人に呼ばれたので、前に出る。


「身分証明を出せ。」


身分証? そんな物は持ってないぞ!?

仕方がない、素直に報告するか。


「すいません。持ってないです。」


「ならば、これに手を乗せるんだ。」


兵士が指を指したのは、占いとかで使いそうな、大きな水晶みたいな玉だった。

俺は言われた通りに水晶に手を乗せると、水晶は青色に光った。

これで何が分かるんだろう?


「よし! これで犯罪者では無いのが確認出来た。なら、仮証明を発行するので中銅貨1枚だ。」


なるほど、アレで犯罪者を判別しているのか。

地球では悪の秘密組織と呼ばれていたが、やっていることは地球の浄化と再生だ。悪いのは人間どもだから犯罪者になる訳が無い。

それにしても、入るのにお金が必要になるんだったら、例の盗賊達から貰っておくんだった。


「すいません。お金も持ってないです。」


仕方ないので、俺はこれも正直に話すことにした。


「一応借金と言う形になるが、発行することが出来る。借金は、7日以内に返済出来なければ、借金奴隷へ落ちることになるが、どうする?」


「借金奴隷になると、どうなるんですか?」


「借金する金額にもよるが、今回の金額の場合なら、1ヵ月の強制労働になる。」


なるほどね、最悪返せなかったとしても、その程度の労働で解放されるならば、問題無いかな。


「分かりました。仮発行をお願いします。」


「わかった。」


兵士が1枚の紙と、水晶の付いたリングを持ってきた。


「こいつが仮証明だ。一度街から出ると無効になるから気を付けてくれ。そしてこちらが返済が終わるまで付けてもらうリングだ。

 この水晶が青の内は問題無いが、6日になると黄色に変わる、そして7日を過ぎてしまうと赤になるからな。

 もし、赤になってしまうと犯罪奴隷となり、強制労働が終わるまで外れなくなるから気を付ける様に。」


「分かりました。」


なるほど、見た目で分かる様になっているんだな。

俺は仮証明とリングを受け取り、リングは左腕に装着した。


「何か質問は有るか?」


「えっと、お金を稼ぐ方法を教えて欲しいです。」


「そうだな、冒険者ギルドへ行ってみると良い。」


「冒険者ギルド?」


「そうだ、冒険者ギルドでは仕事を斡旋してくれるのも有るが、冒険者カードを発行して貰える。

 冒険者カードは身分証明にもなるから、持つことをお勧めする。」


「分かりました。そこに行ってみることにします。」


「頑張れよ。」


「はい。」


俺は兵士と別れ、街へと入るのだった。


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