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依頼を受けてみた


とりあえず全く知らない人よりは、登録の時にお世話になったアズサさんだっけかな? の所に並ぶことにした。

受付カウンターはガラガラだったため、直ぐに俺の順番になった。


「次の方どうぞ~」


「すいません、この依頼を受けたいのですが。」


俺はそう言って、冒険者カードと一緒に依頼の紙を提出した。

アズサさんは冒険者カードを機械に入れ、情報を読み取っている。


「えっと、名前はハルトさんと。依頼を受けるのは、今回が初めてですね。」


「はい。」


「配達依頼ですが、大丈夫ですか?」


「内容は先ほど『読み聞かせ屋』から聞きました。今の時間からですと他の仕事は無理でも、この依頼なら最悪荷物の1つでも運べば、飯代くらいにはなりますからね。」


「なるほど、分かりました。」


アズサさんは、質疑応答しながら機械を操作していた。ちなみに受けた依頼の内容はこんな感じだ。


----------------------------------

【荷物配達】

目的  :荷物の配達

期限  :1日

成功報酬:荷物1つ運ぶ毎(銅貨1枚)

依頼失敗:荷物の紛失、依頼放棄

----------------------------------


「はい、受付が完了しました。こちらの地図の場所に行って、依頼人の指示に従って下さい。

 依頼が終わりましたら、この依頼票にサインを貰えば完了になります。そしたらこちらの受付カウンターまで持って来て下さい。」


依頼票と冒険者カード、そして地図を出してきたので受け取った。


「それでは行ってきます。」


「それでは私、アズサが受付致しました。頑張ってくださいね。」


俺はアズサさんに見送られて冒険者ギルドを後にした。

早速地図を見ながら目的地へと向かうことにする。

手書きの地図なので、縮尺が間違ってたりとした御蔭で少し迷子になったが、無事目的地に到着することが出来た。


「ここだな。」


俺は建物の中へと入ると、そこは倉庫みたいな場所だった。

沢山の荷物が山積みとなっており、沢山の人が働いていた。

とりあえず指示を出している監督みたいな人がいたので声を掛けてみることにした。


「すいません。冒険者ギルドの依頼を受けて来たのですが。」


「ん? あぁ、依頼ね。確認するから依頼票を見せてくれるかな?」


「どうぞ。」


俺は依頼票を監督さんに渡した。


「うん。ウチで出した依頼で間違いないね。それじゃ、あそこに居る人の指示に従ってくれ。」


言われた方を見ると、荷物の脇で紙の束を持って荷物をチェックしている人がいた。


「分かりました。」


俺はその人の所へと向かうことにした。


「すいません、配達依頼の指示を貰えと言われたのですが。」


「おっ、今丁度配達員が出払ってたから助かったよ。」


「俺はどうすれば良いですか?」


「まずはこいつを渡しておく。」


渡されたのは、この街の地図だった。


「そこに有る荷物に住所が書いて有るから、その場所に持って行って、相手のサインを貰って来てくれ。

 サインは、住所が書いて有る紙のこの部分だ。この紙の枚数で依頼料が増えるから頑張ってくれ。」


「わかりました。これって一度に複数持って行っても大丈夫ですか?」


荷物によっては2,3個同時に持って行けそうだ。同じ地区なら往復するより楽だからな。


「すまんが荷物は1つだけにしてくれ、盗まれる可能性が有るからな。もちろん盗まれたら弁償してもらうよ。」


「わかりました。」


そうか、重ねて持って居たら、乗っけている荷物を盗まれることも有るのか。

下手に複数の荷物を持って居ると追いかけられなくなるってことか。

結局は、横着するなってことだな。


俺は荷物の住所と地図を見比べて、運ぶ荷物を選定する。

何だかんだ言っても、近い場所に運ぶのが効率良いからな。

俺は荷物を1つ持って、配達へと出発した。


・・・・


近いと言ってもそれなりの距離は有ったため、配達屋の営業時間が終わるまでに5つの荷物しか運ぶことが出来なかった。

まぁ、借金奴隷になる前に比べると、貰えるお金が天と地の程の差が有ったけどな…(遠い目)

こんなことなら、お金をケチらずにさっさと依頼を受けておくんだったと反省するのだった。

依頼完了のサインと、運んだ数を記載された紙を受け取った俺は、冒険者ギルドへ報告するために戻ることにした。


冒険者ギルド内は沢山の人が居て、混雑していた。

正直、この列に並ぶのも嫌だなと思い、列が空くまで素材集を眺めることにした。


「相変わらずこの世界の文字は分かりにくいな。」


どの文字も同じ模様に見えてしまう。地球でも、外国人が漢字を識別しにくいって聞いたことが有るし、おそらく似た様な感じなのだろう。

何となくボーっと文字を眺めていると、5種類の文字が、よく使われているのに気が付いた。


「もしかして、ローマ字みたいな感じなのだろうか?」


文字を区切ってみると、確かにそう読めなくも無いな。

例えば毒草のページを見ると、DO、KU、KU、SAと4文字が使われている感じに見える。

俺がハッキリと分かる文字は、毒草、腹草、薬草、魔草の4つだ。

これらパターンに当てはめると、多分だが『あ・う・お・か・く・こ・さ・すそ・は・ふ・ほ・ま・む・も・や・ゆ・よ・ら・る・ろ・だ・づ・ど』の24文字が分かった。

『い』と『え』が分かれば、もっと読めるようになりそうだが、どっちがそう読むのかは分からなかった。


「待てよ、この依頼票にも文字が書いて有るじゃん!」


依頼票の文字を当てはめていくと、さらに文字が読めるようになった。

今の時点で分からないのは、『わ・を・ん・ざ・じ・ず・ぜ・ぞ・ぱ・ぴ・ぷ・ぺ・ぽ』の13文字だけだ。

後は、『1』と『5』の数字だけは分かるようになった。


「ただ、直ぐに忘れそうなんだよな…」


今は文字を見ているから分かるのであって、明日になったら忘れてそうだ。

何か書くものでも有れば良いのだが…

そう言えば、ここの納品カウンターって売買もしているんだったな。

丁度誰も居ないみたいだし、買取をしている親父に聞いてみるか。


「ちょっと良いか?」


「何だ。」


「何か書くものとかは有るのか?」


「有るぞ。紙1枚で鉄貨1枚、書くためのペンが1本銅貨1枚、インクが中鉄貨1枚だ。」


「紙だけ買って、書く物を借りるのは~」


「駄目だな。」


「ごもっとも。」


手持ちは少ないが、一応帰る金額は持ってるし、ここは必要経費として購入することにしよう。


「ペンとインク、そして紙を5枚くれ。」


「ほらよ。」


何かメモが必要になるかもしれないし、多めに買っておくことにした。

品物を受け取り、代金を支払うと、残金は銅貨2枚だけになってしまった。

とりあえず忘れないうちに、文字表を作成することにした。


「よし、出来た。」


所々抜けては居るが、追々埋めて行けば良いだろう。


「ずいぶん熱心に調べていたみたいだが、何を書いたんだ?」


俺の行動が気になったのか、親父が質問してきた。


「これか? いちいち『読み上げ屋』に頼むのもお金がかかるからな。だから文字を覚えようと思ったんだ。」


「ほぅ? ちょいと見せて見な。」


別に見られても困る物じゃ無いので見せることにした。


「どれどれ……何か変な記号が書いて有るが、合ってるな。

 だが、所々抜けていると言うか、足りないな。」


記号って多分、『ひらがな』のことだろう。


「そこは分からなかったんだ。」


「なるほどな。分からないのは『わ・を・ん・ざ・じ・ず・ぜ・ぞ・ぱ・ぴ・ぷ・ぺ・ぽ』と数字だな?」


「はい。」


「どれ、ペンを貸してみろ。」


「えっ? タダで教えてくれるですか?」


「努力する奴は嫌いじゃ無いからな。サービスだ。」


「ありがとうございます!」


俺はペンを男性へと渡した。


「で、何処に何を書けば良いんだ?」


「じゃあ、此処に『わ・を・ん』を、でこっちが『ざ・じ・ず・ぜ・ぞ』、此処が『ぱ・ぴ・ぷ・ぺ・ぽ』です。」


「任せろ。数字は此処に順番に書けば良いんだな。」


「はい。」


男性がサラサラと文字を書いて、文字表を完成させてくれた。


「ほらよ。」


「ありがとうございます。」


俺は感謝して文字表とペンを受けっとった。


「それにしても、何でその順番に書いたんだ?」


あいうえお順は、ひらがなの読み方だからな。


「普通はどの様な順番なんですか?」


男性が言った順番は何か適当な順番に聞えたので、下手に覚えると混乱しそうだったので、聞き流すことにした。


「まぁ、こんな感じだな。」


「参考になりました。」


「何、俺も暇だったからな。」


そう言って男性がガハハッと笑った。


「そう言えば名前を教えてませんでしたね。俺はハルトと言います。」


「俺はアイザックって言うだ、宜しくな。」


「はい。宜しくお願いします。」


俺はアイザックさんと別れ、人が減って空いてきた受付カウンターに並ぶことにした。


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