9 デートと言っても色々ある
1000PV突破してました。
ありがとうございます。
俺は何故か今、駅前のスーパーにいる。
そして、買い物カゴを片手にフルーツを物色していた。隣には、美月さん。何故こんなことになったのか――その経緯を説明すると、
あと後、俺は悩んでいた。デートといったらお金を沢山使うイメージしか湧かなかったからだ。もう一日中二百十円投資しているのに、これ以上無駄遣いは許されない。
そう悩んでいたら、目の前で、
「研究に手伝って欲しいんだけど……」
と美月さんが言った。理由を聞いてみると店長から新作を作ってくれと言われたらしい。
べた褒めじゃねーか!平気な顔なんて嘘だよな?店長はきっと名演技をしていたのだろう。
心の中では、なんだこの天才は……と言っていたに違いない。きっとそうだ。
そんな理由から、俺たちは今、買い物デートをしているのだ。食品は全て、美月さんが払ってくれるらしい。俺も払いますと言ったら、歳下なんだから意地張らないでお姉さんに任せなさいっ!とおでこをツンとされた。
やっぱり、可愛い……
そんな顔で言われてしまったら断ることなんて不可能だった。なのでここはお言葉に甘えることにしてた。
「新作って、なんだろう……」
美月さんがそう俺に尋ねる。喫茶店の新作なんて俺にはわからない。最近通い始めたし、他の喫茶店なんていかないから、喫茶店の新作がどういうものかを知らない。無知に等しい。
「さぁ……よくわかりませんが……フルーツを使ったスイーツとかじゃないですか?」
よくわからないなりに頑張って、必死に考えた結果を提示した。
「フルーツ………うーん。スイーツねぇ……それは、あるかも……」
考え込みながら、フルーツを物色し始める美月さん。
「どんなフルーツがいいと思う?」
「………どんなって、言われても………旬のフルーツとかいいんじゃないですか?」
以前ケーキ屋さんのチラシを見たときに、旬のフルーツを使ったスイーツが大きく掲載されていた。きっと喫茶店でも同じだろう……そう考えて提案した。
「なるほど………旬のフルーツ……ね……いいかもっ!」
どうやらお気に召したらしい。
今の時期、旬のフルーツって何があったかな……
俺は、スマホを開き、先生と知恵袋の両方に頼ることにした。
調べてみると、さくらんぼ、オレンジ、メロン、ビワなど色々あった。
……メロンって五月が旬なんだ……勉強になった……
メロンなんてスーパーに年がら年中あったイメージが強い。
さすがインターネット。
俺は再び、ネットの凄さを思い知った。
「今の時期だと色々なフルーツありますね………メロンとか、さくらんぼとかオレンジもありますし……」
「へぇ……結構有名なフルーツ揃い踏みだね……みんな買っとくか!」
「マジですか……」
「マジですよ……」
美月さん暴走している。別に旬のフルーツ全種類買わずとも……
「もったいないと思いますよ?」
「だって!せっかく店長が私に言ってくれたんだから!期待に応えないと………」
彼女はどこまでも努力家だ。この前まで自分のことを見下していた相手にこんなこと俺なら言えない。彼女らしい真っ直ぐな答えだった。
「そうですね……決めるのは俺じゃないですし、いいと思います」
「で、でも……やっぱり、洸夜くんが言う通り、全部はやり過ぎかなぁ……」
美月さんはまだ少し迷ってる様子だった。でも、ここは美月さんの意見を尊重したい。俺の意見を強行なんてしたくないし、払うのは美月さんなのだから、俺の権限なんてゼロだ。
「ここは美月さんのしたいようにすればいいと思います」
「で、でも……」
「作るのは、美月さんです。自分の直感を大切にしたください」
「う、うん……わかったよ……じゃあ、全部買う」
そう言って美月さんは旬のフルーツをカゴに入れた。
カットメロン、オレンジ三つ、ビワ1袋、さくらんぼ1パック。
「ほんとにかご持ってもらっていいの?」
美月さんが、俺に聞いてくる。
「いや、買い物かごぐらい持ちますよ。だって美月さん女だし……女子に持たせられませんよ……」
「洸夜くぅん……や、優しい………ありがとう……」
美月さんは顔を緩め俺にお礼を言ってくる。
俺は、女子に買物荷物を持たせたりできない。祖母に沢山言われたからだ。当たり前の行為だと思っている。
「別にそんな優しい奴じゃないですよ?愚痴だって言いますし……」
「そう?私には、いい人に見えるよ?何だかんだ言って優しいし………努力をする人を決してバカにしないし……」
「それは人として当たり前なのでは……」
「そうだけどしようと思って出来るわけじゃないと思うよ?私は最初美味しいって言ってもらったとき、とっても嬉しかったよ!」
「感想を述べただけです。正直に美味しかったので……」
「私が店長に色々言われても頑張れたのは、洸夜くんのおかげだよ?ありがとう……」
「買いかぶりすぎですよ……俺にそんな影響力はないですし……」
「でも、私にはあったよ。ありがとう!!」
「はあ……どういたしまして……」
こんなことを言われる心当たりがない。俺は昔からの言いつけを守って生きているだけ。自分の信念を貫いているだけ。
努力する人をバカにしない。人として当たり前だ。美月さんが言っている優しいも俺にとってはそんなつもりがない。しかし、俺の行いで美月さんが笑顔になってくれたなら素直に嬉しい。
「ねぇ……今日うちに来ない?まだ晩御飯食べてないでしょ?」
「そうですけど……」
「私が洸夜くんのために頑張って作るよっ!」
「え?料理できるんですか?」
「ふっ……洸夜くん、失礼な……私は、料理の天才だよ?」
「へえ……そりゃすごい」
「信じてないでしょ!?」
「いや、信じてます」
「うっ……絶対美味しいって言わせてやる!だから洸夜くん、私からの挑戦状だから是非うちでご飯食べよ?」
「そういうことならご馳走になります……」
俺としては、断る理由がない。ご飯作る手間が省けるし……美月さんの手料理が食べられるので一石二鳥なのだ。
「洸夜くん、これからお家デートね!」
美月さんが、そう言ってレジに走っていった。
かご持っているのは俺なのに、どうやって商品買うつもりなのかはこの際聞かないでおこう。
それに………そう!!きっとこれは、「晩御飯を食べる」これがお家デートなんだ。
俺は自分に必死にそう言い聞かせ、レジに向かった。
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