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67 病名は……

残り、二話です。



「は、さ、さすがにそれは――」



そんなことはありえない。


そう夏帆に言おうとした時、自分の頰に涙がつたっていることに気付いた。


「洸夜?」


夏帆が心配そうに見つめる姿を見て、慌てて衣服で涙を拭き取る。


そんなことはありえない――突発的にそう思ってしまったがよくよく考えてみれば、自分にも心当たりがあった。


そうだ、確か、それはあの時。


テスト週間に電話した時だ。



その時、ばあちゃんは、「腹が痛い」と言っていた気がする。確かそんな会話をしたはずだ。


これが倒れた原因の一つになっていたであろう。


俺はとにかく、夏帆に聞き返す。


「で?ばあちゃんどうなったんだ?」


「すぐに救急車に運ばれて、近くの病院へ……」


「病院の名前は?」


「えっと、総合中央病院」


「わかった!」


俺は彼女から場所を聞いた瞬間に脚が動いていた。


「待って!」


それを夏帆が止まる。


「なんだよ、早く行かなきゃ!」


「今、まだその病院の最寄り駅までの電車もバスも動いてない」


「じゃあ、走って!」


「それだと時間かかる」


「じゃ、じゃあ!」


「今近くにいるタクシー呼んだ」


「でも、金が………」


畜生、こんな時に…………


俺は拳を強く握りしめた。


「だから!私がいるじゃん!すぐに行くよ!」


夏帆はそう言うと、俺の手を引っ張って家を飛び出した。


「お、おい!」


「急ぐよ!」


「鍵閉めてないだろっ」


「今のご時世ほっとけばみんな自動で閉まるよ!」


エレベーターを使い、一階まで降りると、道路にはタクシーが止まっていた。


そこタクシーに乗り込むと、


「総合中央病院まで、急いで!」


「かしこまりました」


タクシーの運転手は、すぐにナビを付けて、走り出す。


「お客さん、どうしました?そんなに慌てた様子で?」


「おばあちゃんが倒れたんです!」


「そ、それは………」


「急いでください!」


「かしこまりました」


夏帆がそう言うと、運転手のアクセルを押すスピードがあがる。


「会社には内緒にしてくださいね」


速度違反をして、一歩間違えれば自分が逮捕されてしまうのに、それを顧みず俺たちのお願いを聞いてくれた。


標準速度よりも20キロくらい速いタクシーは、真っ直ぐに総合中央病院に向かって行った。


――頼むから、無事でいてくれ。


タクシーの中で俺はただひたすら願うことしかできなかった。





「お客さん!着きましたよ!」


病院の駐車場に荒々しく車を停めおいたタクシーの運転手がそう言う。


「ありがとうございます!」


俺はそう言うと、すぐにタクシーから飛び降りた。


「これでお願いします。お釣りはいりません!」


そう言って一万円を渡して夏帆もすぐに飛び降りた。


病院内部へ走る俺たちを背後から見ていた運転手は、「どうか、ご無事で!」と言っていた。


今から戦に行くわけじゃないんだけどなぁ……


運転手さんの声を聞いたら自然に涙腺が緩むまた涙が溢れ出す。


それに、気付き再び衣服で拭き取る。俺たちは全走力で病院の中に入って行った。


中に入ると、車椅子で夏帆のおばあちゃんが待っていた。


「あの!俺のばあちゃんは?」


「今は、検査中よ」


「あの………何があったんですか?」


「わからないわ。私がトイレに行ってきて帰ったら車椅子から倒れて腹を痛がっているから………」


「そうなんですね……」


「今すぐ、どうなるとかはないらしいから大丈夫よ。」


それを聞いて俺は一安心した。


こんな形でもしものことがあったらと思うと本当に怖かった。安心した俺からは自然に涙が溢れていた。


「洸夜……」


俺の涙を見た、夏帆が俺をそっと抱きしめて、「大丈夫。大丈夫だから」と慰めてくれる。


それを横目で見ながら、夏帆のおばあちゃんは、


「もう少しで、検査が終わるわ。私たちも上に上がりましょうか」


「はい……」


夏帆のおばあちゃんに促されて、俺たちは病院の上に上がった。





上に上がり、ばあちゃんの病室に向かおうとしたとき、ばあちゃんの担当医らしき先生と遭遇した。


「もしかして、君が、幡川さんのお孫さん?」


「はい、そうです。幡川洸夜です。あの、俺のばあちゃんは………」


「幡川さんは、検査を終え今は病室で横になっております」


「大丈夫なんでしょうか?」


「はい、今すぐにと言うわけではありませんが………」


少し躊躇いを見せた後に、医師は重そうに口を開く。


「幡川さんは、ステージ3相当の胃がんです」


「っ………」


「転移がすでに始まっていて、早急に手術が必要になるでしょう」


「………たっ、た、助かるんですよね?」


声が震えてしまう。視界が涙で滲む。


「まだ、どうなるかはわかりません………転移が始まっているとなると…………」


「なると………どうなるんでしょうか?」


「高齢になればなるほど、治りにくくなりますし、完治はほぼ不可能と言っていいでしょう」


「っ……」


医師から言われた言葉に対して俺は、ろくな反応をできなく、言葉を詰まらせるだけだった。


こんな優しい言い方をしているが医師が言葉をオブラートに包んで言っていることを俺は知っている。


リンパ節などの転移。ステージ3なら、5年後の生存率は約47%

つまり、二人に一人は死ぬ。しかも高齢者ならもっと確率は下がるだろう。


以前、がんのことについてインターネットで調べる授業があってその事実は知っていた。


知っていたからこそ、この現実を突きつけられて、俺は涙が止まらなかった。


高齢者になれば進行度は遅くなるが治りにくい。それに、胃がんは気付きにくい病気で早期発見は難しい。


俺があの、ばあちゃんの何気ない言葉にもうちょっと、疑念を抱けていたら………


少し、いい未来に傾いていたかもしれない。

悔やんでも悔やみきれないそんな後悔が俺の中を支配する。


この後すぐに手術が予定される。



――今、この状況で、俺にできることは何があるのだろうか………


病気については、かなりインターネットで調べましたが、作者の低脳では理解することが難しく、実際の内容と異なっていることがあるかもしれません。すみません。

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