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60 帰り道にて

久々の投稿で申し訳ありません。

この章の最終話です。



午後3時過ぎ。


本来なら段々と気温が下がるはずなのだが、体感温度は三十度近くて、今にも死にそうであった。


そんな中、電車に乗り込んで、ひとときのクーラー天国を味わってから、また夏帆の家の最寄駅で降りて天日干しが開始される。


この容赦のないガンガン照りの太陽の方向に向かって歩いて行く。


あと、夏帆の家までもう少しだ。


近くのコンビニに差し掛かるところで沈黙を貫いていた夏帆が、突然話し始めた。


「今日は、ありがと。そして、ごめん」


「もう謝るな。気にしてないから………」


プールのことをまだ悪く思っていたようで、再度謝ってきたので少し強めに言うと、


「うん…」


と小さく頷いた。流石にもうこの話題には、触れたくない。

そう思った俺は、話題を変えようと試みた。


「そういや、陸上の時、やたらと俺のこと見てなかったか?」


「へっ!?そ、そそそんなことないと思うよ?」


「わかりやすく慌てるな。もう隠すのは絶望的だぞ……」


「ごほん!サッカー上手だったね……まさか洸夜があんなに上手だったとはね………」


「話題を変えるなっ………て、そう言えばお前なんであんな難しい所ばっかり選んでたんだ?普通考えて無理な場所だろ?もしかしてサッカーしらなかったか?」


「いや、別に?地元のサッカークラブの試合だって見に行くくらい好きだけど………」


「じゃあ、わかるだろ………」


「だって!もし洸夜がダメだった時、あの人に成功させると困るじゃん。だからどうせなら共倒れにしようかなぁ………と」


「ホントに共倒れ寸前だったよ」


「ごめん………だけど洸夜ってやっぱりなんでもできるんだね!」


「まあ、サッカーは一番やってたからな……」


「どのくらい?」


「3歳から15歳までだな……正確には……」


「ガチ勢だった…………」


「とは言っても中学生までだったからな………」


「ねぇねぇ!どこ中?」


夏帆は食いつくように俺に聞いてくる。どうやらコイツは本当にサッカーが好きらしい。


「部活には、所属しないで○○ユースUー15に所属してたんだよ……」


「えっ………あの?」


夏帆は指示語だが、俺はサッカーの一部リーグに所属するクラブのユース出身だった。


「ああ、そうだよ……」


「え………知らなかった………背番号は?」


「10番……」


「エースだ………ポジションは?」


「トップ下………」


「成績は?そういうのあるでしょ?県リーグとか色々」


「えっと確か、中三の時に32試合で12得点14アシストとかだったかな………」


はっきりとなんて覚えていない。けれど俺たちの代のときは最速で県リーグ優勝を決めたことははっきり覚えていた。


「そんな凄かったなんて………トップチームだけじゃなくてU世代も見ておけばよかった………」


「まあ、ユースはそんな注目されないからな……」


「でも、結構凄い数だよ?そのまま上のカテゴリーにいかなかったの?」


「いけなかったんだよ……金なくて……」


「あ、そっか………ごめん」


「気にしてないし、たまに練習しに行ってるから大丈夫だ」


「え?そうなの?」


「そうだよ……休日にな………」


お金が払えないので練習には行けなかったが自主練の参加はコーチたちが許可してくれていた。

だから、俺はたまに練習に参加することがあったんだ。


「そうだったんだね…………じゃあ、尚更鈍ってないわけだね……」


「まあな」


この対決を左右した勝負だったと言ってもいいだろう。本当に接戦であった。


「それにしてもホントによかったね!私も洸夜が勝ってくれて嬉しかった!」


「ナチュラルに話を終わらせようとしているがそうはいかないぞ?」


「えっ………」


「なんで、そんな頑なに話したくないんだよ?」


「だって…………」


「なんだ?」


「洸夜………私の初恋の人の話、聞いてもいいの?」


「ああ、別に?」


俺はそんなことでヤキモチを妬いたり嫉妬したりしないだから、ふつうにそう答えた。


「そ、そうなんだ………」


「はやく勿体ぶらずに言ってくれ、何気に気になってたんだよ……」


「お前ならできる!俺は信じてる!」


「え?……」


「私の初恋の人は小学六年生のときに私にこう言ったの……タイムが伸びなくて苦しくて陸上を辞めたいと思ってたとき…………」


「そうなのか………」


「うん……その時、私ホントに救われて、彼が励ましてくれたおかげで頑張れるようになって………同時に意識し始めて……だけど、彼は高嶺の花で、誰にでも優しくて、カッコよくて太陽みたいで………私が釣り合うような相手じゃなかった………」


「…………」


「その人はね………陸上の大会のときに決まって同じ準備体操をしていたの。これをしないとダメなんだって………」


「……………」


「さっきの洸夜の準備体操が、宮水くんの準備体操と似ていて思わず、疑っちゃった………もしかしたら、宮水くんかもしれないって………苗字だって違うから普通はそんなこと思わないと思うんだけどね………」


「…………そうか?」


「え?」


「宮水って人はそんな凄い人なのか?俺はそうだとは思わないけど…………」


「は?な、なに言ってんの?」


「だから、宮水ってやつ、そんな凄い奴じゃないし、高嶺の花なんてこと全然ないだろ?だって、水泳はろくにできないし、普段男どもから絡まれるし、高いところとか浮遊感キライだし、お化け屋敷だって得意じゃないし………」


「こ、洸夜?」


「それに、大切な彼女を心配させるようなことをいっぱいした………」


「え、ちょっと待ってなに言ってんの?全然わかんない」


夏帆は必死に頭で理解しようとしているのだが、もう本能は理解してしまった様子で勝手に涙が溢れ出てきていた。


「隠すつもりは、全然なかったんだけどな………」


「ちょ、冗談やめてよ………」


「最後の大会で頑張って入賞したよな……」


「っ………だって苗字が………」


「中学に入って両親がいなくなったから旧苗字に直したんだよ」


「じゃあ…………」


「俺が、宮水洸夜だ………」


「そんなこと…………」


「ありえる………この世に絶対ないなんてない……」


「なにその名言……」


彼女は俯きながら近づいてくる。

そして、俺の片口にポンと頭を置いて、


「そんな都合のいいこと……」


「運命ならあるかもな」


「!!………」


「運命から人はどうあがいても逃れられない。それがいい運命でも悪い運命でも………」


「じゃあ、私たちは運命の相手だったってこと?」


「断言はできない………だけど、そうなんじゃないか?こうやってまた巡り会えたわけだし」


「そうなんだ………」


「それと、お前って……案外一途なんだな」


「!?……そんなこと………そうに決まってる……私はずっと洸夜ひとすじ………」


「今まで気付かなかったやつがよく言うよ………」


運命というのはいいことでも悪いことでも、やはり逃れることが出来ないと思う。

一回別れても、また再会して、必ず結ばれる運命に………俺たちは………最初から運命の相手だったのかもな。


涙を啜りながら、俺に寄りかかる彼女の頭をそっと撫でながら俺はそんなことを思っていた。

無事に終了しました。

この章は少し納得してない箇所や誤字があったので後で手直しする予定です。

次の章は、最終章となります。

夏休み編ですね。夏イベントもあります。


本当ならラストスパートをかけたいところですが……6月中は本当に多忙でしばらくこのペースになりそうです。

申し訳ありません。


必ず完結させますので最後までお付き合い頂けると幸いです。


ブックマーク、評価、よろしくお願いします。

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