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55 対決 水泳編

昨日は投稿出来ずにすみませんでした!





バッティングセンターからバスに乗って市民プールを目指した。

道中は女子たちから、褒めちぎられて大変だった。


バスが市民プールの前で停車すると、俺たちは降りて市民プールの中に入った。休日ということもあり、遊戯場の方は子供たちで溢れていたが競技用のところは少なかった。


やはり大人たちは、水遊びといったら海に行くのが当たり前なのかもしれない。

わざわざ市民プールにくる大人や高校生などは、だいたいがただ泳ぎたいという理由でくるのだろう。


なので、人にぶつかることがなく、本気で泳げる。


俺はさっさと更衣室に向かって水着に着替えた。

外に出ると、棚山が待っていた。


「次の勝負のルールを説明する。今回は100メートルメドレーだ。最初の25メートルをクロール、次に平泳ぎ、その次に背泳ぎ、最後にバタフライで泳ぐ。それで速かった方が勝ちだ」


まさかのメドレーだった。


俺はてっきり一種目で勝負をすると思っていたが、彼は全種目を入れてきた。その中には、俺が不安な背泳ぎもしっかりと入っている。


本来なら、異論を唱えたいが………


「ああ、大丈夫だ。それでいこう」


棚山に弱いところを見せるのはできない。勝つなら圧倒的に勝利しなければならない。

もう、変な虫が寄ってこないように、圧倒的なものを。


だから、俺はその案を呑み込むしかなかった。


「よし、決まりだ。じゃあ、先にシャワー浴びて、飛び込み台で待ってるからな」


そう言って去ろうとした、棚山を俺は止めた。


「おい、待て!」


「な、なんだよ……」


「プール入る前には、準備体操しろよ?」


「なんでだよ?」


「師匠の命令だ」


「なんだそれ……」


「ヤクザにボコられたくなかったら従え」


「唐突にスケールがでかくなったな………まあ、わかったよ」


ここで彼に怪我されるのは、困る。後の種目もあるからだ。

だから、俺は師匠直伝の準備体操を棚山に布教した。これが弟子の務め。


俺もシャワー浴びて、飛び込み台に行く前にしっかり準備体操をした。


競技用のプールに向かおうとした時、


「洸くん、頑張ってね!」


夏帆から声援を受けた。


「ああ、任せろ」


俺は振り返って返事をする。夏帆の表情は明るくなかった。どうやら不安要素があるのだろう。そしてその不安要素を自分が作ってしまったと思っているのだろう。


しかし、そんなことはない。


俺は出来ることは全てやった。夏帆の心配が杞憂に終わるようにするのだ。


「心配するな。勝つから大丈夫だ」


心配そうな夏帆の姿を見て俺は、夏帆の頭に手をポンと置いてそう言った。


「う、うん。そ、そうだよね!信じてる!」


夏帆も明るく振る舞う。しかし、その目は納得した様子ではなかった。

本当に自分を責めたがる彼女だ。こうなったら結果で安心させてやるしかない。


「じゃあ、行ってくるな」


「いってらっしゃい!」


無理に笑顔を見せている。

どれだけ心配なんだ。俺だってイメトレは完璧なんだ。

だから、絶対にこの勝負、勝ってやる。


俺は、競技用のプールに行き、棚山の飛び込み台の隣に立った。

判定は、公平に行えるようにプールの監視員さんに頼んだ。

監視員のスタート合図でこの勝負がスタートする。


俺は再び集中する。


監視員さんの声が発された瞬間に飛び込めるように、


そして、俺たちが構えてから数秒後、その声は聞こえた。


「よーい。どん!」


その声が聞こえた瞬間に俺たちはプールに飛び込んだ。


水中に潜った瞬間から、クロールを開始する。思い切り腕を使って水をかいて、一定の回数で息継ぎした。隣の棚山なんて見ている暇がない。


必死に泳ぎ切って向こう側が見えてきたので俺は、くるっと回ってターンした。その時、まだターンが終わっていない棚山の姿が一瞬だけ見えた。

どうやら、クロールでは、俺がリード。なんとか、今のうちに距離を稼いでおきたい。


次は、平泳ぎ。ヤクザの師匠直伝のカエルさんを披露する。

泳いでいる時、頭に浮かんできたのは、「カエルになりきれ!」と言う、おじさんの声だった。


腕を思いっきり使い、足で水を蹴る。とにかく自分はカエルなんだ!と思いながら泳いだ。そして、また向こう岸が見えてきたのでターンをした。


ここまでで棚山との差は、8メートルくらいだろうか?

俺がリードして背泳ぎにはいった。

しかし、ここが鬼門だった。なんせイメトレだけでろくに泳げていない。


言うなら、ターンからどうやって背中を向ければいいかわからなかったからどうにもならない。かなり減速して、無理やり背泳ぎを開始した。

まず、このメドレーの種目順に文句を言ってやりたい。本来の順番と異なっておりぐちゃぐちゃなのだ。だが、決めるのは棚山に任せているし俺も頷いてしまっているため今更だった。


自分でも泳いでいて不格好で違和感があるのはわかっている。だが、頑張ってこのレベルなのだ。


これ以上どうしようもなかった。


変な泳ぎで途中斜めになりながらも向こう岸が近づいている気がしたって………


これどうやってやればいいんだ?


背泳ぎからターンなんて俺はやったことがない。そもそもそんなのあるのだろうか?

わからないから無理やりターンした。


これ絶対に初めてでスムーズに出来るわけがない。


しかしなんとか、ターンして最後はバタフライ。これはふつうに出来る種目だった。棚山がどこにいるかなんて俺は気にしていられなかった。とにかく無我夢中で泳ぎ切った。


泳ぎ切って、向こう岸まで辿り着き水中から出る。


すると、



「水泳は、俺の勝ちだな。」


そう言って勝利の笑みを浮かべている棚山の姿があった。


俺は、この勝負に負けてしまったのか?


最初の二種目ではかなり差をつけていたのに………



しかし、男子軍たちが喜んで女子たちがしょんぼりとしている様子から棚山の言っていることは事実であろう。


俺は悔しかった。


勝負に負けたのはもちろんのこと。しかし、それよりも夏帆の心配を杞憂に終わらせられなかったことに強い悔しさと抱いた。

あれだけ勝つと言ったのに………



第2戦目。水泳部門。棚山の勝利。

次回は、テニスです。



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