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53 対決 野球編①

15万文字突破しました。

ありがとうございます!




「よお……逃げずにちゃんと来たな」



バッティングセンターに入ると、すぐに棚山と遭遇した。腕組んで余裕の風格をかましているが、目は座ってない。


おそらく緊張して今にも吐き出したい気分なんだろう。


俺も夏帆に強く握られなかったら同じだったかもしれない。だけど俺は大丈夫だ。応援してくれる、信じて待ってくれる大切な彼女がいる。


だから、思いっきりやるだけだ。


「ああ、逃げるわけないだろ?夏帆がかかってるんだ」


俺は、挑発するように彼に言った。互いに鋭い視線で睨み合う。


「お前が臆病なやつだったら不戦勝で楽だったんだがな……」


「残念ながら、俺は臆病とは程遠いから安心しろ」


「そうかよ……まあ、いい……じゃあ、伝えておいた通りに、五番勝負の一戦目は野球。バッティング勝負をする」


ここまでは、予想通りだ。俺もバッティングだと思ってあの思い出すだけでもトラウマになるような練習した。

だから自信はある。



「内容を詳しく説明する、バッティング勝負はあのバッターボックスで行う」


そう言って棚山が指差したのは、俺がたくさん練習した球速、球種を自分で選択できるバッターボックスだった。


「最大110kmまでにする。球種は特に指定しない。10球ずつ打ってどちらがたくさんヒットを打てたかを勝負する。」


「ホームランはどうするんだよ?」


「ホームランはヒット3本分にする。それでどうだ?」


「じゃあ、それでいい」


「決まりだ………それで、あと決めるのは――」


「先行か後行か……」


「そうだ……それを決める……」


「お前、どっちがいい?」


俺は、彼に任せることにした。はっきり言って後先などどうでもいい。どっちにしたってそんなに変わらないだろう……


「は?俺が決めていいのかよ?」


「ああ、俺に順番なんてどうでもいい。どっちにしたって変わらない」


「じゃあ、お言葉に甘えて、先行にさせてもらう。後の方がプレッシャーかかるからな」


棚山がそう言ったのを聞いてそういう考えがあるのか!と思った。


最初は相手の成績がないので、プレッシャーなしに打てる。逆に後行は、先行がすごい数字を出せば、ものすごいプレッシャーの中で打席に立つことになる。

確かに精神的な面では、先行が有利かもしれない。


けれど、あくまでもそれは先行がいい成績を残せればである。

ダメダメにすればなんの問題もないのだ。


「じゃあ、対決開始だ!」


棚山がそう言った瞬間から今日一日をかけての五番勝負の幕が切って落とされた。


「じゃあ、先行の俺からいくぜ!」


そう言って棚山はバッターボックスに入った。観客は、夏帆と夢葉と奈美。それと遊園地にいた男子メンバー。事情を知っているから棚山を応援すべく駆け付けたらしい。


「いけー!初球からホームランだぁ!!」


男たちから棚山へと応援が飛ぶ。


「「洸くん!!夏帆のためにがんばってーー!!」」


女子たちは俺を応援してくれている。


夏帆のためにホントに頑張るからな……


俺は声に出さずに心の中そう言ってから、再びボタンの方を見た。


球速は110kmまで。だから、初球ストレートは、危ない。豪速球でごり押しできるのならストレートでもよかったがヒットを打たれる可能性があるので、初球は、100kmカーブにした。


映像のピッチャーが動き出し、機械からボールが放たれる。


ガキん!


棚山は、初球を捕らえた。



しかし、ファール。


バットにかすっただけであった。取り敢えず、1球目はノーヒット。しかし、初球を打ってきた。

これはかなりの強敵かもしれない。


2球目は、遅めのフォークボールにすることにした。


これは、


がきっ!


と低い音を立てて、バットに当たった。ボールは、転がりつつもヒットした。


まさか、変化球にここまで柔軟だとは思ってなかった。


3球目は、スライダーの空振り、4球目は、ストレートであたりの大きさでいうと左中間くらい。


5球目は、もう一度カーブで、今度は空振り。6球目はストレートで、ホームランにかなり近いヒット。


7球目は、まだ投げてないシンカーで空振り。


しかし、初めてのボールでも危険な振り方をしている。これはもしかしたらホントに打たれるかもしれない。


7球目が終わった時にそう思っていたがそれが現実になってしまった。


8球目。


殆どの球種を出している俺は、選択に困っていた。どれを投げてもヒットを打たれる気がしてならない。


迷った末に、まだヒットが出てないカーブを選んだ。


ボールが放たれてからすぐ、カキーン!と素晴らしい音がバッティングセンターに響いた。


その音だけで俺はやられてしまったと悟った。


まだボールを追うと、打ち上げられたボールは綺麗にホームランボードに向かって当たった。


「よっしゃあ!!ホームラン!!」


彼が拳を握って大きくガッツポーズをする。棚山のホームランに男子チアリーディング(棚山の友達)は、凄い歓声を上げる。


「よくやった!!」


「それでこそ!棚山の中の棚山だぜぇ!!」


「なにぃ!?このイケメンっ!!惚れてまうやろー!」


男子たちは、大喜びだった。


俺はやらかしてしまった。ここはスライダーで行くべきだったかもしれない。


落ち込んでいると、後ろから。



「ほら!こんな一回くらいで落ち込まないで!まだ終わってない!!」


後ろから夏帆の声援。その声は、大きく力強い。表面だけではなく、内側から俺を奮い立たせてくれた。


おかげで俺はペースを崩さずに残りの2球も投げることができた。


9球目は、ヒット。10球目は、空振り。



これで、先行の棚山の打席が全て終わった。結果は、ヒット4本、ホームラン一本の計7ポイント。


俺はこの成績を超えなければならない。


さっきまでは、大丈夫だったはずなのに、少し緊張して手汗がすごくなってきた。頭では思わないようとしていても、身体は正直である。


ぎこちない動きで、バッターボックスに入って構えた。

その時であった。



「そんな構えじゃない!!あの時を思い出して!!」


夏帆からの叱咤。

その言葉で俺はあの辛い練習を思い出す。


そうだ、あの時は、130km投げられたこともあったんだ。あんな鬼畜なボールに比べたらこんなもの。


トラウマが、俺の心を燃やした。


さっきと感覚が全然違う。


「ったく……夏帆はどれだけ、こいつのことが好きなんだよっ!!」


と棚山が苛ついているのも、耳に入らなかった。


ただひたすら俺は集中する。


――さぁ!全部打ってやろうじゃないか!!


六月に入って作者が多忙になるためたまに投稿出来ない日があると思いますが、その時は、「あ、作者忙しいんだな」と思っていただけると幸いです。

なるべく毎日投稿するように致します。


ブックマーク、評価よろしくお願いします!

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