52 対決を前に
すみません。時間が取れなく今日は短いです。
あれから、約一週間が経過した。
今日は7月10日の金曜日。
あのあと、背泳ぎの練習はできなかった………というか、しなかった。空気的なこともあるし、何よりも彼女にそんなこと言えなかった。
夏帆が泣き止むと優しく手を引っ張ってプールから出た。その後は、着替えてそのまま家まで送っていった。
翌日会ったが、彼女はいつもの様子に戻っていた。すごく安堵したのを今でもよく覚えている。
結局のところ、背泳ぎの練習はできなかったので、家でシミレーションをしたり、お風呂で練習したりした。とは言っても狭い風呂なので、水に浸かりながら、空中で手を動かしただけだが………
対して部屋での練習と変わらないが水に浸かっている時の気持ちに慣れようとした。
という感じでそのくらいしか練習をしていない。
昼休みに、夏帆の席に棚山がやってきた。やってきた理由としては、種目の順番の報せと集合時間、集合場所であろう。
「夏帆、明日のことを伝える。よかったら夢葉や奈美たちも来てくれ」
棚山がそう言うと。
「そうだね。洸くんが勝つところ見たいし」
「うん、賛成!」
と棚山を煽っていた。しかし、珍しく棚山は何も言わずに、
「明日は、野球から始める。だからバッティングセンターに9時に来いとアイツに伝えておいてくれ」
「うん、わかった」
夏帆が頷くと棚山は、すぐ去っていった。緊張しているのか表情は硬い。
やはり本気なんだろうな。
棚山には悪いが俺も大事な人を失うわけいかないんだ。だから、本気でいかせてもらう。
俺は、改めて本気でアイツを倒すと誓った。
○
放課後、老人ホームに行く道中にて、
「洸夜、昼休みのあのこと聞いてた?」
「ああ、バッチリ聞いてた」
「じゃあ、そういうことだから」
「お、おう。わかった……なんか、自信満々だな」
「だって、洸夜は、負けないでしょ?」
「ああ、頑張る。お前がかかってるからな」
「………ホントに頑張ってよね?」
そう言うと、夏帆は俺の腕に掴まってきた。
「お、おい………今は……」
「誰もいないよ………いてもいい……」
俺が慌てると彼女は、落ち着いた様子で俺に言う。落ち着いた声音は、とても優しい。俺はそれ以上言葉が出なかった。
「私、信じてるから……頑張ってね」
そう言って彼女は俺の瞳を見た。その表情には迷いなど一切ない。
俺も、
「ああ、任せろ」
と言った。こんな無様な内容で彼女を取られたなんてかっこ悪すぎる。彼女と自分の今後のため、本気で頑張ろう。
彼女は俺の瞳をしばらく眺めてからニコッと笑い、俺から離れた。
もうこれで大丈夫だ。夏帆……明後日頑張るからな。
そう心内で改めて言って老人ホームに向かった。
○
7月12日、今日はいよいよ、対決の日だ。朝早起きして、入念に準備をする。
動画を見て、一緒にラジオ体操第一、ついでに第二までした。
しっかりとした朝ごはんを食べて、俺は家を出た。
向かったのは、夏帆の家。
マンションでインターホンを押すと、数秒後、夏帆が出てきた。彼女は「おはよ」と言った。俺も返した。
会話はそれだけだった。彼女は無言で俺の手を握ってくる。いつもよりも握る力が強いのは、緊張なのか、期待なのか、自信なのか……
色々な感情が巡る中俺たちは、バッティングセンターに向かう。
いよいよ、対決が始まるのだ。
次回から対決になります。
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