49 誕生会
今日は短いです。
夏帆と正式に付き合い始めて、三日目。
今日は、俺のばあちゃんの誕生日だ。
あれから、夏帆とこの関係について話し合ったのだが、正直に話すことにした。
多少、照れ臭いが俺たちは、この関係を隠したくない。自分の身内には正直に話して認めてもらおうと思っていたのだ。
学校では、棚山たち男子グループによる追っかけにあって、放課後は、生徒会の激務。
それが終わって、今に至る。
やっと癒しの時間なのだ。
待ち合わせの七時まであと五分。俺はいつもの喫茶店の前で待っていた。
しばらくすると、彼女が小走りでやって来た。
「ま、待った?」
「いや、待ってないし、そんなに急ぐこともないだろう……」
「いや、あるよ。だって、洸夜に早く会いたかったから……」
「そうか……うん。そうか……」
唐突にそんなこと言われるとなんかこっちが照れてしまう。
「よし、今日は遂に洸夜のおばあちゃんの誕生日だね、あのことも話すんでしょ?」
「ああ、話しておく方がいいだろ……そして、認めてもらおう」
「うん……」
彼女は嬉しそうにこっちを見つめている。なんか意識してしまうせいで、照れる。
ここは無心にならねば。
「じゃあ、行くか……今回も別の部屋で、飾り付けの準備があるし……」
「だねぇ……おばあちゃんが張り切って……この前よりも大きな部屋にして……」
「あの大きさ、四人で祝う用じゃないよな……」
「うん、忘年会する時の部屋の大きさだよ……あんな広い部屋………かえってさびしくなる気がする……」
「派手に飾り付けるしかないな……」
「そうだね……頑張ろ……」
部屋の飾り付けに若干の不安を抱きながら俺たちは老人ホームに向かった。
○
午後八時半
本来なら、とっくに夜勤の時間なのだが、気の利く職員さんたちは、残ってくれた。
そして、ばあちゃんの誕生会が盛大に開かれた。
なんと、そこには職員さんたちも参加していたのだ。
飾り付けは…………職員さんたちも手伝ってくれてなんとか間に合った。
豪華な飾り付け、食事、多くの人の中でばあちゃんの誕生日が祝われる。身内として、携わってくれた人全員にお礼を言いたい。
プレゼントをばあちゃんに渡した時は、とても喜んでくれた。
それから、誕生会も進んで、午後九時半が近づいて来た。
そろそろ時間的にも解散しなければならないし、あのことも伝えなければならない。
俺は彼女に合図した。すると、彼女も頷いて俺の方にやって来る。
さて、紹介だ。
緊張するなぁ……
「あの、ばあちゃん?」
「ん?どうした?二人とも……」
「あの、俺たちなんだけど……」
「ああ、そのことか………わかっておる。」
「「え???」」
まさかの回答に俺たちは驚いた。
「友達をこえて、親友になったんじゃろ?」
「「…………え?」」
俺たちは再び、驚いた。まさか、その解釈があったとは……
「みなさ〜〜ん!聞いてくれ!うちの洸夜がよくやく親友と呼べる人を作ってくれたんじゃ!!」
「本当?洸夜くん?うちの夏帆と親友?嬉しいわぁ〜〜、最初は、そこまで仲よさそうにはみえなかったものね………」
「ちょ、ちょっと!おばあちゃん!?」
「うちの洸夜は、人見知りで、友達なんて、本当に少なかったんじゃ。誕生日にこんな報告をされるなんて、嬉しいのぉ……」
ばあちゃんは喜んでいたし、職場さんたちも俺たちが親友と呼べる存在となったことに祝福していた。
今更、恋人です!なんてとても言える雰囲気ではなかった。
結局、ばあちゃんたちには、俺たちの関係は、恋人ではなく、親友ということになってしまった。
誕生会終了後、
「どうしよう……言える雰囲気じゃなかったね……」
と夏帆に言われた。
「まあ、あんなところで言っても、信じてもらえるか微妙だしなぁ……」
「だね……どうする?」
「時間が経過したら、進展して恋人になったって言えばいいだろ……」
「それなら、自然だね。賛成」
「じゃあ、適当に時間が経過して、そんな感じの雰囲気だったら言おう」
「うん、わかった………」
こうして、誕生会は、大成功に終わったのだが、ばあちゃんたちに俺たちの関係を伝えるという意味では失敗した。
しかし、急ぐことはない。
タイミングを見て、言えばいいのだ。
ということで、この件は保留。
誕生会が終わった俺には、最も面倒な厄介ごとが待ち構えている。
それは、
――棚山とのスポーツ勝負
これはどうしても頑張らなければならない。
絶対に勝ってやる。俺はそう心に誓った。
次回から本格的に対決に向けて始動します。
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