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47 駅のホームは響いてる

40万pvありがとうございます!


この章、ラストです。



「ふざけないでよぉっっ!!!!」


そんなことが彼女の口から飛び出るなど俺は思っても見なかった。


寧ろ感謝されると思っていたのだ。この難しい状態を回避したのだから。


それなのに、なんで、お前は涙を流しながら言うんだ?


俺は間違っていたのか?


そう自問自答しても答えなんて考えつかなかった。

だから、俺は聞き返す。


「ふざけんな、とはどう言うことだ?」


そうすると彼女は、


「わ、私、そんなこと……して欲しいなんて言ってないっっ!!」


夏帆のその回答に俺はわずかな怒りを覚えた。だってこっちは、本当に大変だったのだ。そして、これからも大変なのだ。

だから、せめて彼女からは、感謝されたかった。労いの言葉をもらいたかった。

自分勝手にことを進めたのは反省しているが、これしか道はない。



なのに、彼女は感謝どころか逆に怒っていた。


それに対して俺も言い返す。



「あのまま、お前が肯定してたら、明日全てを失っていたんだぞ?クラスの立ち位置、名誉、大切な友達………何よりも大切なものを失ってもいいのか?」


「いい………別に……いいよ!!」


変わらず頑固な姿勢を続ける夏帆。俺には全くわからない。

だって、それが一番大切じゃないか……


地位、名誉。居場所。


人間なら誰もが欲する。


それなのに、彼女は………


俺には彼女の心理が全くわからない。故にどんな言葉で次の会話をすればいいのか、わからなかった。

すると、夏帆は、


「わたし、全然、嬉しくなんてない………寧ろ、あんなことして欲しくなかった!!なんで?ねぇ!なんでしたの?なんであれで私を助けたの?わたしっ、頼んでなんかなかったぁ!!してなんて頼んでないっ!!!!」


夏帆は俺の服を引っ張って問い詰める。


そうやって言い寄られる俺はもう限界だった。

こっちのこともわからずに………

流石に怒りが湧いてくる。これほどまでに、わかってくれないとは………

俺がどれだけ心配して、悩んで、自分を投げ打ってまで助けたかなんて……

お前にはわからないんだな?

じゃあ、わかるように言ってやるよ。


………なんでだって?


理由なんて一つしかねーだろうが。


俺は後先考えず、怒りに任せて言った。


「お前が、クラスで一人のところなんて俺が見たくねーからなんだよっ!!!!!!!!!!!」


その声は、先ほどの夏帆の声よりも大きく、ホームに響き渡った。


俺のその言葉に、夏帆は「え?」という顔をしながら、俺の方を見つめていた。


俺は怒りに任せて、この際思っていることを全部ブチまける。


「助けるのなんて、当たり前だろ!だって、俺の大切な人が窮地に陥ってんだぞ?ここで助けないとか彼氏じゃねーだろ?」


「………でも、洸夜が犠牲になるなんて………」


「そんなことなんてどーでもいい。俺の価値なんてクラスの中じゃ最低値だ。これ以上悪くならないし、言われたってなんの問題もない………だけど、お前がクラスから居場所を失い、友達を失い、笑顔を失うところは絶対に見たくないんだよ!!わかれよ!そんぐらい!」


「な、何言ってんの?わかるわけないじゃん!私は洸夜が一人でいじめられるのが嫌なの!二人なら集中的に言われることはない!だから…………私も……一緒に言われればいいの………」


もう、彼女の瞳から涙が止まらなくなっていた。涙で溢れた顔を拭って、再度言葉を言おうとする。


「だから、私、明日、正直に言う……」


「なんて言うんだよ……」


「彼氏なんて、嘘なこと………本当は、洸夜があの洸くんってこと。」


「そんなこと、俺が絶対に許さない。絶対に言わせない」


「なんで………なんで、そこまでして、私を助けるの!?洸夜が私を大切な人って言ってくれるのは嬉しいけど、普通、そこまでしないよっ!!!」


「普通の大切な人なんかじゃないからだよ………」


「え………?」


「普通の大切な人だったら、俺だってここまでしたかわかんねーよ!だけどな、俺がここまでした理由なんて一つしかない!


お前が、俺の一番大切で、特別で、愛おしい人だったからだよ!」


怒りとは、人の躊躇をなくす。昔、ばあちゃんにそんなことを言われた。だからケンカするときは、お互い思っていることを出来るだけ吐けと。

そうすればお互いの心理を理解できる。あとは共有する努力をすればいいと。共有できずに仲直りできないようならそれまでの関係だと……

しかし、俺たちはそんな関係じゃない。俺はそう信じていた。




だから俺たちも同じかもしれない。

あれほど躊躇ってきた言葉が出たのは、これが初めてではない気がする。以前だったそうだ。すれ違いがあった時も怒りが背中を押してくれた。

お互い言い合ったことで相手の心理を知ることができた。伝えなきゃ、お互いわからないもんな。


それを聞いた夏帆は、より一層涙が止まらなくなる。


「なぁ、なにそれっ………全然、理由になってない……」


「理由なんて、想いだけで十分だろ……一個人の想いで相手を助ける………大義名分を掲げて、正義をふりかざす奴よりかよっぽどマシな気がするけどな……」


「想いだけで………相手を助けるなんて……」


「お前だって、俺のために一緒に言われようとしてたんならそれだって、一個人の想いじゃないか……」


「………!!」


「俺は、自分の大切な人が暴言吐かれるなんて、嫌だ。だから俺が身代わりになる。」


「……………だけど、それじゃ………洸夜が」


「その代わり…………今、あのテストの時のお願い使っていいか?」


「へ?……」


夏帆は予想外だったようで声が裏返る。


「だから、テストの時のやつだよ」


「今、使うの?」


「ああ、今、使いたいと思った」


「いいけど……なに?」


さて、お願いを使うのだ。

なぁに、もう一回言ってしまったからな。彼女なんて俺の想いを知っている。躊躇うことなんてない。


「夏帆が好きです。付き合ってください………そして、俺の心を癒してください」


これが俺のお願いだった。


「な、な、そんな………こんな状況で………付き合ってなんて……」


「ふざけてない」


「で、でも………それは、私からのお願いだったのに………」


「俺は好きな人ができたら自分から言う。これは俺の主義だ」


「なにそれ………言い合いしてたのに………なんでこんな風になるの?」


「お互いの心理がわかったからだろ?俺は少なくともそうだった」


「趣旨がズレてる……元はと言えば、明日のことの話だったのに………」


「だから、解決策も含めてお願いしたんだけど……」


「え?……いつ?」


「さっき………俺の心を癒してくださいって……俺が言われたら、放課後、それか休日、俺の癒しになってくれればそれでいい」


「っ………そんな」


「ちゃんと解決できる。俺が解決させられる自信がある。」


「でも……」


「できる」


「う、うん……」


「だから……夏帆」


「返事だよね……うん、わかってる。だけど、まさか、こんな展開になるなんてなぁ……観覧車の方がロマンチックだったのに……」


「テンプレ通りの展開なんて、ドラマやアニメじゃあるまいしあるわけないだろ……」


「まあ、そうかもね……」


そう同意した夏帆は、一度涙を拭ってから、改まって


「こちらこそ、よろしくお願いします」


彼女がこう言った瞬間、俺たちは、仮の彼氏彼女じゃなくて、本当のカップルになった。


「そう言えば……私、洸夜と同じ時に、お願いごとするって言ってたよね?」


ふと、思い出したような口調で夏帆がそう言った。


「ああ、そういやそうだったな………なんか、あるか?いや、さすがに唐突過ぎたからないか……また今度でも……」


「あるよ?」


「あるのか………」


「うん、さっきまでなかったけど、今、あった」


「そ、そうか……で?どんな願いだ?」


「キスしよ?」


「聞き間違いか?もう一回」


「だからキスしよ?」


「詳しく聞こうか」


「私たちは、今現在のところ本当のカップルですよね?」


「まあ……そうだけど……」


「ならば、イチャイチャしても何ら問題はないと思うのです」


「人目があるだろ……それにこんな駅のホームで……」


「人はいないよ?そして、今の姿が嫌なら、メガネを外せばいいでしょ?」


逃げ道を完全に絶たれた俺は困り果てた。

いくらお願いだからと言っても路上はマズイ。だからなんとしても回避したかったのだが……


「お願いは絶対でしょ?」


と言って俺のメガネを外した。


「おい、視界がぼやけるんだけど……」


今日はコンタクトレンズを持ってきてない。だから視界がぼやけた。

目の前にうっすら夏帆が見えるがボヤけている。


するとその夏帆が段々と近づいてきたのだ。そして、すぐ唇に柔らかい感触が伝わる。


「はい、お願いは叶ったよ……洸夜ありがと……」


メガネを返され付けると目の前に頰を赤く染めながらお礼を言っている夏帆の姿があった。


「路上キスだな……」


「なんかやめて……聞こえがわるい!」


そう言って夏帆が俺をポカポカ叩いた。


今日は特にないもない日かと思ってたらビックイベントばかりであった。

どうやら、俺の月曜日は呪われている。


そんな気がした。


何はともあれ、自分の気持ちを躊躇せずに言えたことが良かった。心の中のわだかまりが取れた気がする。

明日からまた面倒になるが隣に彼女がいるのだ。

問題ない。戦闘力53万だ。



夏帆、ありがとな。俺に想いを伝えてくれて……おかげで俺も今ここにいる。


この記念日……六月二九日を俺は絶対に忘れない。



遂にこの章も終了しました。


最初から数えると47話。洸夜たちが結ばれるまでこのくらいかかりました。

この物語は、シリアスが多くて作者自身が鬱になることも多々ありましたが、無事なんとか結ばれるまできました。


あと、この物語は二章分あります。


ネタバレになるかは微妙なところですが、この先、洸夜と夏帆がギクシャクすることはもうしない予定です。

望んでいた人がいたらすみません。


段々と砂糖とコメディーを入れていく予定なのでよろしくお願いします。


明日も更新しますのでブックマーク、評価、よろしくお願いします!

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