45 誕生日プレゼントを買う月曜日
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翌日
登校するとクラスの雰囲気が少し違った。
いつもふざけ合っている女子と男子、その主格グループが真っ二つに分かれていたのだ。
棚山率いる男子軍。それに対すは、夢葉たちのいつもの三人組。
どうやら彼女たちはどうしても棚山の言動が許せなかったらしい。
まあ、普通に考えたらみんなそうだと思うが………
男子軍の中には当日のことを知らない人たちも数名いたが、何故だか空気を感じていたようだ。
これは何かあり近づけない雰囲気だと。
そのせいかいつものクラスが妙にシンとして、陰キャ男子ほか、主格グループじゃない女子たちもあまり会話が弾んでいなかった。
朝からお葬式みたいなクラスの雰囲気。そんなところで、俺が登校した。
教室に入るとき、全員から見られて何事かと思ったが、俺はクラスの主格グループが話していないことで、仲間割れを起こしたことを瞬時に察した。
普段から無言の俺は、いつも通りに教室に入った。普段教室で騒いでる奴らからしたらシンとして騒げなくストレスが溜まるだろうが、俺はいつもと変わらない。
無口とは、こういう利点があるのだ。
その後の朝のホームルーム、昼休みと時間が経過するごとにより、クラスの雰囲気はいつも通りに戻りつつあったが、変わらないのは、あの主格グループの仲間割れだった。
そして、両者会話が全くないままホームルームを終えた。
俺は生徒会に、夏帆は、部下に、それぞれの準備をしていると、棚山が夏帆に話しかけてきた。
「あのよ〜〜今日、女子たちと一緒にカラオケ行かね〜〜?」
やっぱり、昨日のことで彼女たちに拒絶されたのが相当嫌だったらしく、棚山は夏帆にカラオケに行こうと誘っていた。
なぜ、一番気まずくなるはずの夏帆に話しかけたのか?それは、きっと夏帆しか話してくれなかったからだろう。
夢葉、奈美の両名は彼を軽蔑した目で見て、会話をいっさいしなく、二メートル以上の距離を置いて、彼と目さえ合わせない。
徹底的な拒絶であった。
それをされては、流石の棚山も傷ついたのだろう。それで和解の場所を作るためにカラオケに誘ったのだ。
そこで、盛り上がってあわよくば、「あれ?謝んなくても、もう仲良くなってね〜〜!?俺って、天才!?じゃあ、このままでいいか〜〜」作戦を決行しようとしているに違いない。
だが、棚山が思うほど現実は甘くなかった。
夏帆は彼女たちの方を見て、無言で問いた。すると、彼女たちは思い切り首を横に振り、
「じゃあね〜〜夏帆。また明日!」
と言って教室から出て行ってしまった。
棚山は勿論その過程も見ていたので、夏帆がわざわざ結果を伝えなくてもわかる。
故に彼女は何も詳しいことは言わず、「そういうことだから」と言った。
寧ろ、ここで詳しく説明してたら立派な煽りであった。
すると、棚山は、少し機嫌が悪くなる。思い通りにいかなかったからだろう。
しかし、すぐに表情を元に戻し、
「夏帆は、これるか?」
と誘った。
「ゴメン、今日は大事な用事があるから……」
即答だった。
そう、今日は、部活後にばあちゃんに誕生日プレゼントを渡すためにショッピングモールに行かなければならないのである。
その言葉を聞いた、棚山はまた苦い表情をして、
「彼氏と遊ぶのか?」
と尋ねた。
「彼氏と遊ぶわけじゃないよ?ただちょっと大切な用事かなぁ……」
すると、棚山は、諦めたようで、
「彼氏じゃないならまだいいか………じゃあ、また今度な」
と言って去っていった。彼女は彼が去ると、ホッと一息付いていた。
昨日のことがあったのに、彼はどんだけすごいメンタルをしているのだろう。暴言メンタルは強い俺だったが、そのメンタルだけは彼を見習いたかった。
○
午後七時。
それが彼女との集合時間だった。場所はいつもの喫茶店。
俺は店の前に佇んでいた。時計の針は六時五十五分を指している。集合時間まで、あと五分。
もう少しで彼女がやってくる時間だ。
俺はその時計の針が段々と12の針に動き始めると何故かそわそわし始めた。
なんだこの緊張感。
今まではこんなことになかったのに、そんなことを思っていると、
「おまたせっ……はぁ、はぁ……集合時間ギリギリセーフ」
と言って彼女が駆けてきた。息を切らしているところから見てかなり急いできたのだろう。
そんな彼女を見て、俺は、少しドキンとした。
彼女が俺を待たせないようにして走ってきてくれたのだ。
なんだが、それだけでも嬉しかった。その一方で、なんか申し訳ないような気分もしていた。そんなまじめに時間を守るほどの集合なのかと。
そんなに堅苦しくしなくてもいいと思った。もしその雰囲気を俺が出しているならば申し訳なかった。
だから、俺はこう言う。
「全然待ってないぞ……」
「そ、そう?その割には、全然息上がってないし……あんなところで佇む余裕なんて……」
「そんな急いで来なくたって待ってるから大丈夫だ……」
そう言うと、夏帆は、「う、うん……わかった」と照れた様子で頷いた。
本当に突発的なことはよく出てくるもんだ。あの二文字なんて出る気配すらしないのに。
そんな自分にまた嫌気がさした。
○
ショッピングモールに着くと俺たちは早速ばあちゃんの誕生日プレゼントを探した。
因みにだが、夏帆にセレクトは全て任せている。
俺はプレゼント選びが下手なことに定評がある男だ。
小学生のころ友達の誕生日にスイカ一つ丸ごとプレゼントしたら反応に困っていた。
このように俺は変なプレゼントを送りつけてしまうので、セレクトはしないことにしている。
その中で、夏帆が俺に提案したのは、扇子であった。
扇子ならこの時期から使うものだし、何よりばあちゃんにピッタリのプレゼントだった。
暑い中、うちわを仰ぐよりも扇子を仰いだほうがよっぽど風流だ。
そんな理由からプレゼント選びは、さらっと解決した。
まず、扇子コーナーに行って、ばあちゃんに似合いそうな扇子の候補を五つあげた。
その中でばあちゃんの印象にピッタリな扇子を二人でよく吟味して、十五分ほど話し合って決めた。
そうして、手に入れたのが紺色の扇子。時期的にも青色が恋しくなる季節だからピッタリだろう。なにより、ばあちゃんは紺が似合う。
その意見は両者ともに一致していた。
プレゼントを買って俺たちは、ショッピングモールから出て、駅に向かった。
時計は夜の八時を過ぎていた。もう夜遅いので、夏帆を家まで送るべく、電車に乗って夏帆の最寄りまで、行った。
今日は、順調な月曜日だった。
珍しく、問題がなかったと安堵していた矢先こんなことが起こった。
それは、
棚山たちとの遭遇。
彼女の家の最寄り駅で俺たちはカラオケ帰りの男子グループたちと偶然にも鉢合わせてしまった。
最悪な状況だ。
この時、彼氏のときの顔だったら特に問題はなかった。
しかし、今の俺は、いつもの陰キャ。これは、彼女の名誉のため絶対無いように防いでいたことであった。
しかしそれが、最悪なかたちでそれに一番嫌な相手に見つかってしまった。
俺たちを見た、彼は当然のようにこう言った。
「なんで、お前らが一緒にいるんだよ?」
この章もあと、二話です。
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