41 仮カレカノ 友達と遊ぶ その3
今日はいつもと比べて長くなりました。
「ついたぁ〜!!」
奈美が、バスから降りると、そう言った。
降りた駅からまたバスに揺られること、十五分。
やっとこ遊園地と思われるものが見えてきた。
まさか、駅からバスに乗るとは思ってなかった。
なんか、もう既にかなりお金を消費してしまった。
電車代、バス代。これで、食費一週間分である。
テスト週間でバイトを少なくしていただけ、財布には大ダメージ。この後チケット代も払わなければならないので、また沢山シフトを入れなければならない。
サッカーの試合みたいな夏の過密日程が俺を待っている。
頑張らないと……
俺は、バイトを頑張ることを決意した。
全員がバスから降りると、早速受付に向かった。
休日なだけにかなり並んでいる。最後尾は、かなり後ろの方だった。
「ありゃぁ……これは、待つねぇ……」
「十二分待ちだってさぁ〜どうする?」
「並ぶしかないでしょ?」
「だよねぇ……」
俺たちは、列の最後尾に並んだ。最後尾の何分待ちという札は基本的にあてにならない。
どうせ、三十分とか普通に並ぶんだろ?
とか、思っていたが、意外も意外。十五分で済んだのだ。
理由はやはりアレだろう。
受付の熟女。
あの手さばきは、ベテランの域に達している。無駄に歳をとっていないと言えばいいのだろうか?
とにかく、すごい熟女だった。
俺たちが受付に行くと、
「8名さま?1日乗り放題券ですね?はい!ありがとうごさいまぁ〜す!」
とものの二十秒で終わったのだ。予めお金は用意していくようにと係員の人から言われていたので、出してはいたのだが、その熟女はひとりの金を見て、それを判断した。
一周回って雑な受付さんだったが、皆さんは早く終わって満足らしい。
休日なのに、あの時間で済んでいるのは、彼女の力のおかげであろう。
是非、定年まで職を全うしてほしい。
アレが彼女の天職だ。出会って一秒でそれがわかった。
頑張れ、受付のおばちゃん。俺も隠れファンとしていつまでも応援をしているぞ。(心の中だけだから、口に出すとは言ってない)
さて、遊園地の中に入った俺たち一行は最初にジェットコースターに向かった。
夏帆含め、女子三人衆はアトラクションが大好きらしく、昨日から、一番最初はジェットコースターと決めていたらしい。
隣で歩く夏帆は、笑顔で「楽しみだね!」と言うが、俺にとっては地獄である。
絶叫系無理なんだよ………
小さい頃、と言っても小学生の頃だが、ジェットコースターに乗って泣いてしまったことがある。
あの謎の浮遊感………アレがどうしてもダメだ。あと、早すぎて目が回る。
完全にトラウマだった。
本来なら、
無理!絶叫系、絶対乗れない!!
と言いたいところなのだが、今は、夏帆のお友達……
奈美と夢葉、他、クラスの男子がいる。
夏帆の名誉もあるため、絶対にそんなカッコ悪いことは言えない。
俺は夏帆に作り笑いして答えた。
「ああ、楽しそうだな!」
と…………
この後、どうなったかは想像にお任せします。
ジェットコースター後、俺たちは早めの昼食を取ることにした。お昼時に行くと混んで椅子などが取れないから時間ロスになる。そうならないように早めに昼食を取る。
フードコートに向かうと、人はいるものの空いている席はいくつかあった。
安堵である。
また昔の話になるが、遊園地で昼食を取るのに、席が空いてなく二時間待ったことがある。
その時は、脳内が幼稚だったため、フードコートでずっと待っていた。今考えれば、本当に無駄な時間だったと思う。
さて、俺の過去の話は置いておいて、早速注文をしに行かなければ……
席を離れて、店に向かうと背後から手が伸びてきてガシッと俺の肩を掴んだ。
その力があまりにも強く俺は後ろに倒れそうになった。
しかし、反射的に踏ん張って体勢を保つ。
コケて恥をかくことは免れた。
もうだいたい予想はついているが、掴んだ犯人の方に向いた。
そこには、案の定、棚山が立っていた。
鋭い目つき、握りしめた拳。
とにかく機嫌が悪そうだ。
今から殴られるのだろうか?
そう思うほど、棚山は怒っている様子だった。
「あの?なに?」
と俺が尋ねると、棚山が
「ここでは、言えねぇから、ちょっとトイレまで付いて来いや?」
ツレションはお断りします!
とふざけたいところだが、目がマジである。
これは、殴られるパターンか?
あんな正常を保てていない状態で人気のないところに行ったらなにされるかわかったもんじゃない。
しかし、夏帆の彼氏として、ここで引くわけにもいかない。
少し怖いが意を決してついていくことにした。
もし殴られたら顔面キックでも喰らわせればいい。
暴力?
いえ、正当防衛です。
俺は自分からは仕掛けないが、身の危険を感じたら一切容赦しない。
『身の危険を感じたら、ぶっ殺すつもりでボコボコにしろ!』これは、昔の恩師の言葉である。
指導者としては、アウトな人だったが、人間味があって俺は割と好きだった。
棚山が歩き始めたので、俺も後ろをついていく。
トイレに入ると、棚山が、
「おい?お前調子乗ってんのか?あ?」
といきなり胸ぐらを掴んできた。
胸ぐら掴まれたぐらいでは、俺は暴力を振るわない。
しかし、一応、念のため、拳は握っておいた。
この状態では、殴られることは確実である。大切なのはいかにすぐやり返せるかだ。
俺は、無抵抗のまま、
「なんのことだよ??」
と言ってみせた。
「俺、別れろって言ったよなぁ?」
「だからお断りしますって言ったはずだけど?」
「さっきから、調子なんじゃねーぞ?電車であんなこと言って、夏帆のこと倒れさせたり、ジェットコースターで隣の席に座ったり、移動する時ずっと手を繋いだり………お前いい加減にしろっ!!」
棚山は怒って言うが、俺は何かいけないことをしただろうか?
電車のことはまだわからなくもないが、他は彼氏彼女なら当然のことだと思うのだが………
「それがなにか、問題でも?」
「あるに決まってんだろ!それは、俺がしたいと思っていたやつなんだよ!!?」
知るか!そんなこと。
妄想で好き勝手やったらいいだろ……
国で思想の自由は約束されているんだから。
「それにだ!お前、イチャイチャしてんじゃねーよ!」
もうここまでくるとただの嫉妬である。
くどいようだが、彼氏と彼女ならある程度のスキンシップは許されるだろ。(仮でもそれは同じと自分に言い聞かせ、羞恥心を消す)
「お前、き、キスはしてないだろうなぁ!してたらぶっ殺すっ!!!」
「し、してない…です……」
勢いに負け自然と敬語になってしまう。
「はぁ!そんなイケメンなのにキスもできねーのかよ!?チキンだなぁ!!」
こいつは、ツンデレなのだろうか?
いや、胸ぐらを掴んでいるから、やっぱりボコデレだ。
このたまに褒めて、そのあとツンするのやめてほしい。反応に困る。
「すみません………」
ここでなぜか、謝るという選択肢を選ぶ俺。
言った後になぜ謝った?と自問自答した。
「ま、まあ。キスはしてないから殴るのはやめてやる。いいか?別れろよ?わかったか!!?」
一方的に強く言って、棚山は出て行った。
結局、なにがしたかったんだ?
俺の中に疑問が浮かんだ。
その後、フードコートに戻ると人がごった返していた。
店には、半端ないほどの行列。十五分待ちは確定である。
人を待たせるわけにはいかないので、昼ごはんは諦めた。
昼ごはん代が浮いたと思って我慢しよう。
そう思い、席に戻ると、各々が昼食をとっていた。
また同じように女子グループと男子グループに別れている。
俺は女子グループの席しかなかったのでそっちに座った。
なにも食べ物を持ってこない俺に、夏帆は驚いたのか、
「あれ?洸くん。食べ物は?」
と尋ねてくる。
「ちょっと道案内してたら遅れた」
ホントはトイレなのだが、長時間いたのだ。
大と間違われる。デート中にそれはご法度。俺自身の印象や夏帆の印象まで悪くしてしまうから、テキトーな嘘をついた。
「そ、そっか……大変だったね」
夢葉が同情する。
「あ、じゃあさ、夏帆?」
奈美がなにか思いついたようで夏帆の名を呼んだ。
「え?な、なに?」
「洸くんにあーんしてあげたら?」
「ブッ……ちょ!ちょっと!奈美!ジュース吹き出しそうになったじゃん!!」
「いいからいいから、そんな誤魔化しは、ホントはしたいんだよね?」
「ちょ!夢葉までぇ!」
「え?いいの?彼氏が人助けをして食べ物がないのに……それじゃ、洸くんが報われないよ?」
「た、たしかに……」
なぜ、そこで納得する………
頷いた夏帆に俺はそう言いそうになった。
「それに、彼女のあーんなんて洸くんにしたら最高のご褒美だよね?」
「あ、えーと……」
「「ご褒美だよね???」」
「はい、その通りです………」
「だってさ……夏帆?」
「わ、わかったよ……洸くんがそこまで言うのなら……」
と言ってポテトを差し出してくるが、
俺、一回しか言ってないよ?
そこまでなんて口では言ってない。
しかし、彼女たちの目はマジでありガチである。
この人たちの目……本当に怖い。
女性アイ恐怖症とか患いそうだ。
俺は差し出されたポテトをあむっと食べた。その後、夏帆が「おいし?」と尋ねてくる。
完全にデートである。それを見て、二人はキャッキャしてるし、もうこれ何やっても恥ずかしい。
俺が頷くと目線が合う。今まで合わせないようにしていたのだが、遂にあってしまった。
俺は無意識に反対を向いた。それは、夏帆も同じである。
すると、またもや殺気が………
その殺気のほうに視線を向けると、安定の棚山さん。
口パクで、「殺すぞ、別れろ、殺すぞ、別れろ、羨ましい、殺すぞ」
を繰り返していた。
どうやら、俺は危ないらしい。
夏帆からには見えないようにして言っているため夏帆には見られたくないらしい。
つまり夏帆が安全地帯である。より一層離れられなくなった。
もう次はない。胸ぐらを掴まれた後は、トイレの壁まで追いやられて、壁ドンされてから、耳元で「別れろよ」と言われる未来が安易に想像できる。
そんなシチュエーション絶対回避する他ない。
昼食を食べ終わると、さっそく女子たちが動き出した。彼女たちの歩くスピードは早い。夏帆と手を繋いでいる俺も引っ張られる形で早歩きをした。
早歩きでどこに行くのだろう?
そんなことを思っていた、その時。
「ついた、次はこれね!」
と夢葉が言った。
「ウソだろ……」
俺は目の前のアトラクションを見て、思わず声を上げた。
お化け屋敷。
それは、俺にとってはトラウマなほどではないが苦手な部類に入るアトラクションだった。
夏帆は、隣で「楽しもうね?」と言うが、
お化け屋敷でどうやったら楽しめるのか逆に問いたくなる俺だった。
今日は色んな意味で、苦手なものが多い。
次はお化け屋敷からです。
遊園地編はあと、最低でも2話ある予定です。
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