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38 結局そうなるのか

誤字報告ありがとうございます!

助かりました!



「よおきた!さあさあ!」


老人ホームに到着すると、ばあちゃんと夏帆のばあちゃんが笑顔で迎えてくれた。


「久しぶり……」


俺はばあちゃんに会うとそう挨拶した。何故かこの数ヶ月毎日のように通い詰めていたからテスト期間中に会ってないだけでもかなり会っていない気がしていた。


「おう、久しぶりじゃな。おれおれ詐欺」


「それやめてくれ、意外に傷付く」


「おー。洸夜はおれおれ詐欺が弱点なのか、よしよし」


何を思いついたかは知らないがよろしくない顔をしていることは確かである。

心配だなぁ………


俺がそんなことを思っていると、隣にいる夏帆が、


「お久しぶりです。テスト週間頑張りました!」


笑顔で挨拶した。どうやら余程、嬉しかったらしくもう報告したいオーラが溢れている。


「あら、夏帆。その様子だといい結果だったの?」


夏帆おばあちゃんが嬉しそうな夏帆を見てそう言った。


「うん、私、今回429点だった。快挙だよ!快挙ぉーー!」


夏帆は自分のおばあちゃんのところに駆け寄り笑顔で報告する。


「あら〜、それはすごいわねー。どうしたの?そんなに点数上がってなんかあったの?」


その質問が飛んできた瞬間、夏帆が固まった。

そのあと、


「え?なんでも?ほら、ね、大学のことを考えたらさ、ね、ほら、心配なったから頑張ったのです!」


と随分早い口調で話した。

そうだよな。言えないよな。

でも、さすがに普段と違いすぎるから、これは気付くだろ……


「なるほどねぇ……よく頑張った。偉いわ!!」


なるほど、偉いんですね?わかります。

俺も同意見です。


どうやら、気にならないらしい。まあ、それならそれでいいんだが………


一方で、俺は……


「どうじゃった?一位は取れたかの?」



ばあちゃんにそう問われたので、「うん、取れたよ」

と答えると、


「ようやったな。さすが、わしの孫じゃ!!このまま励めよ?」


「ああ、頑張る」


ばあちゃんに頭を撫でられた。久しぶりのばあちゃんの手の感触があった。

洗い物のし過ぎで、ガサガサになった手も以前と変わらぬまま。小さい頃と少しも変わらない手があった。


ばあちゃんに撫でられたまま俺は、また誓う。


次も一位を取ってやると。






あれからしばらく団欒を楽しんでいると、介護士が急に俺のばあちゃんを呼び出した。


「幡川さーん。お風呂の時間ですよー」


「な、なに?もうそんな時間かの?いささか、早過ぎはしないかの?」


現在、午後七時半。


うん、ちょっと早い気がするけど、老人ホームなら当たり前か?

残念ながらそこら辺は知らないので、俺も突っ込めない。


介護士はそそくさと、ばあちゃんの車椅子を押して、ばあちゃんを風呂場に連行した。


ばあちゃんが部屋からいなくなると、


「はあ、やっといなくなったわ!」


と夏帆のおばあちゃんが言う。


あれ?なんかこれ、聞いたことあるな。既視感ある。

すごくある!!


嫌な予感がした。


「あのね、二人に折り入って頼みがあるの」


まさか……まさかなのか?


俺がそう思っている隣で、


「どうしたのおばあちゃん。私に出来ることならなんでもするよ?」


もう、ダメだ。回避不可。

半端諦めの眼差しで、夏帆のおばあちゃんを見る。


「そう言ってくれると嬉しいわ!あのね、今度の木曜日のことなんだけどね?」


「木曜日?七月二日?」


もうダメだ。これ決定だ。この後言うことが手に取るように分かる。


「そう、それでね?洸夜くんと夏帆に弥津紀さんの誕生日プレゼントを買ってきてほしいの!」


夏帆おばあちゃんは、テンション高く言うが、俺は、


わかってました。七月二日って時点でもうわかってました。


と心の中で言っていた。


「それでね?」と夏帆のおばあちゃんが続けて言うが、これも俺はもうわかってる。なぜならテレパシストだからね。わかるのさ。


「七月二日に盛大に誕生会を開きたいの!私の誕生会よりもうんと大きな誕生会を!」


よっしゃ。テレパシストはしっかりテレパシーしてました。

これもわかってました。プレゼントと言い出した時点でもう予想済みです。


そして、


「うん、わかったよ!」


と夏帆が言うのもなんなら予想していた。


やばい……俺、予知能力とかあるのか?

それともメンタリスト?

なんだかよくわからないが今日の俺は人の言い出しそうなことを次々と的中させていく。


「じゃあ、休日によろしくねー」


と夏帆おばあちゃんは言うが、俺たちには、無理なお願いであった。


「え、えっと、それはね……おばあちゃん。」


「あら、なに?どうしたの?」


「土曜は部活だし……日曜は前々から予定が………」


「予定?彼氏とのデート?」


「ち、違うから!!全然違う!うん、違う!そんなんじゃない!!」


と夏帆は顔を真っ赤にして、否定する。どうやらデートが恥ずかしいらしい。

しかしデートじゃないもんな、夏帆の友達に彼氏を紹介するだけ…………あれ?デートより重くね?

夏帆のおばあちゃん、ニアピンである。

どうやら夏帆おばあちゃんもメンタリストとかそういう部類らしい。


「冗談よ。でも、私、そろそろ彼氏紹介してほしいわぁ……まだ、一回も出来なことないものね……」


「いいから、そんなことは!!」


俺が夏帆の方をチラッと見ると、目があった。そして、何故か速攻で目を逸らされる。


「でも、そうだと困ったわねぇ………どうしたらいいの?せっかく洸夜くんと夏帆の二人で選んできてほしかったのに……最悪、介護士さんにでも……」


「月曜日なら……」


「え?」


「月曜日なら大丈夫だよ!そうだよね?洸夜??」


「あ、えーっと、えっと……」


「ね????」


「……はい、大丈夫です」


「ということなので、月曜日に行ってきます」


夏帆がその場で話をまとめたが、


俺は、こう思った。


――いや!結局こうなるのかよ!

次は、夏帆の友達と遊ぶ話です。



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