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33 テスト勉強 ①

すみません。

体調不良により遅れました。



翌日の放課後。



さて、頑張るか……


そう自分に喝を入れ彼女の家のインターホンを押す。


ピンポーン。


音が鳴ってから数秒後、「はぁい」と言う声が室内から聞こえ、扉が開いた。


全く……用心深さのカケラもない。このご時世、変な男は沢山いる。もし変人だったらどうする気だったのだろうか。少し注意しなければ。


無防備な夏帆の姿を見てそう思った。


「いらっしゃい!待ってたよ!!」


夏帆は満面の笑みを浮かべ出迎えてくれた。こんな笑顔を見せられると、なんか注意する気も失せるがここはしっかりしないとだ。


「おい、夏帆。しっかりとインターホン見てから開けろ。変な人だったらどうすんだ?」


「あ、そういえば……忘れてた。気をつける」


「まあ。気をつけるならいいけど……あと……」


「あと………なに?」


俺はもう一つ言いたいことがあった。

いやね。六月で蒸し暑いから薄着をするのは構わないけど限度があると思う。


「いくら部屋着でも男入れるんだからそこら辺もうちょっと気をつけろ…」


「……!!」


俺は、オブラートに包んで言ったつもりだ。

本当は言おうかどうか迷ったが、この女、本当に薄着なんだ。上、Tシャツだけの下はミニスカ。

これは流石に反応に困る。


「さ、サービスだから……」


「聞いたことないな……」


夏帆は今更気付いたようで、必死に照れを隠している。


「洸夜は私の大切な人だからいいんだよ」


「まだ返事したつもりないんだが……」


「ほんとだよ。全然待つけどあまり待たない」


「どっちだよ……」


こんなところで立ち話もなんなので、早速夏帆の家に入れてもらった。

彼女もまたマンション暮らしだった。だが俺の家よりも全然綺麗な家だ。もしや金持ちパターンか?と疑うほどに。


「そういや、夏帆一人暮らしだったな」


「うん。両親どっちとも海外だよ」


「一人って……寂しくないか?」


「それ前も聞いた……」


あれ?言ってただろうか?

残念ながら記憶にない。


「私は、もう一人暮らし長いから。中3からもう一人暮らしだし………」


「そうか………」


「それを言ったら洸夜だって、寂しくないの?」


「慣れた……」


「だよね……」


一人暮らしなんて長い。親が死んで、叔父の養子になり、名字を変え中1からだから、もう五年目だ。

寂しくなどない。



少し、ほんの数十秒歩くと部屋に案内された。



「じゃあ、お茶持ってくるから……」


そう言って、夏帆は退出した。彼女が部屋を出ると静寂が訪れる。俺は、部屋を見回した。


部屋には、ベットやぬいぐるみ。ハンガーには制服が掛けられていた。


「これって、明らかに夏帆の部屋だよな……」


俺がこの部屋に入る前、もう少し広いリビングがあった。大きい机もありあちらの方が勉強しやすそうなのに、何故こちらに?

俺は、考えたくなくなり考えるのをやめた。



すると、


「お待たせ〜〜麦茶しかなかったよ」


と言って夏帆が部屋に入ってきた。紙コップに麦茶を入れ、お盆に乗っけて運んできた。


「ああ、悪い……」


机に置かれた麦茶を手に取り飲んだ。冷蔵庫に入れていたのかキンキンに冷えていた。


「おいしい………」


「でしょ!意外に高いんだぁ〜。両親からの贈り物だよ」


「国外から茶葉が送られてくるのか……」


「うん……」


どうやら金は持ってるらしい。国産だって美味しいじゃないか、寧ろ俺は国産派。


そんなこんなで一幅を済ませ、早速勉強に取り掛かった。


「そう言えば、洸夜って進学考えてる?」


突然、夏帆がそう尋ねてきた。


「まぁ、国公立大学に行けたらいいけど……」


俺が国公立大学に拘るのはもちろん金だ。私立だと本当に高くて入れない。魅力的な私立大学は沢山あるが、ここは我慢だ。


しかし、国公立大学というと就職面接のときに響きが違う。国公立大学なんてどこもみんな頭がよく偏差値が高い。


だから俺は国公立大学に進学したいと考えているのだ。立派な社畜か公務員になるために。


「国公立大学かぁ……私には難しいかなぁ……」


俺の話を聞くと夏帆はそう言って、ガクンと頭を下げた。


「まあ、でもな、これからでも間に合わないことはないと思うぞ?」


「……ほんと?」


「保証は出来ない」


「なにそれ……」


夏帆は再びガクリとした。


「じゃあ夏帆はどこ目指してるんだ?」


話題転換。夏帆に話を振ることにした。


「うーん………高卒はやだから大学はいくかなぁ……でも、国公立は高すぎて無理だし……やっぱり陸上を続けるかも」


「陸上か………いつからやってたんだ?」


「えっとねぇ……たしか、小三からかな。友達に誘われて」


「結構ガッツリやってんだな……」


「まあ、競技歴は長いかも………」


「好きか?陸上」


「え?うん、まぁ……」


これに意図なんてない。俺はただ純粋に知りたかった。

彼女は最初、キョトンとしていたが、すぐに頷いた。


「じゃあ、続ければいいんじゃないか?」


「まあ、そうかもね。私、一回辞めそうになった時助けてもらったことあるからあの人のためにも」


「あの人?」


「うん、私が小六の頃、タイムが伸びなくて悩んで辞めそうになった時止めてくれた人」


「そんな奴がいたのか………」


「うん、宮水くんっていうんだけどね。」


「へ、へぇ……そうか……」


「だから私はその人のために陸上を続けられるだけ続けたい。そして、その人に会えたらお礼を言いたい」


「もう、その人が競技やってるかわからないんだろ?」


「やってるに決まってるよ。だって、長距離走でバケモノって言われて、県でいつも入賞してたすごい人なんだから!」


「そ、そうなのか………」


「うん、それにね。キックボクシングとかピアノとかも弾けて頭もいいハイスペックな人だったんだ」


「そ、そうか……会えてお礼言えるといいな。」


「うん………」


彼女の過去にそんなことがあって、そんな思いを抱いていたことを俺は初めて知った。


その宮水くんって人がサッカーで体力をつけるために陸上に入っていて中学と時と同時に陸上を辞めてないことを祈るだけだ。


そして、その宮水くんって人に夏帆が出会えるのを切に願う。




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