3 生徒会長のしたっぱというよりかは下僕
翌日の放課後
今日も安定のボッチ生活。
朝、学校にボッチ登校。体育のペアは誰もいなくボッチ。お昼は一緒に食べる人がいなくボッチ。
科学の実験でもペアを作れずボッチ。
うむ。今日もなかなかいいボッチだった。
そして、今は執務室。
「洸夜くぅ〜ん。なんで昨日途中で逃げちゃったのかなぁ?」
「……………」
執務室の中央に座り、持っているペンを机にトントントントン叩いてイラつきを露わにしている女性。
猫撫で声のような優しい声。しかしその目は全く笑ってない。
ぼく、わるいボッチじゃないよ………
そう、言い逃れしたい。しかし、それが出来るわけもないのだ。だって、その声の主は。
「ほらほらぁ〜なんで黙ってんのぉ?わかんないよぉ〜、生徒会長はわかりません。しっかりした説明、又は謝罪と弁明をしなさい?」
「えーとですね………俺もよくわからないっていうか……うーんて感じなんですよ。わかります?」
「わかりません。だからしっかりとした謝罪をしなさぁ〜い?わかりましたか?」
「はい、すみませんでしたごめんなさい……」
もう、逆らえない。もうこれ以上は無理。
俺を笑顔で支配するのは、この学校の生徒会長、金崎南海だ。
「うん。謝罪は受け取る。はいじゃー次は理由を簡潔に述べなさい。サンニーイチ!ほらっ!」
なんて強引なんだ。
自分のペースに持っていけない……
これこそ、南海の得意技、職質である。
これに俺は何度も完敗してきた。くそっ!!奴に勝つことは不可能なのか!?
そんなことを内心思いながら俺は昨日あったことを会長に話した。
「へぇ〜洸夜くんってば、そうやって私以外の女の子とイチャイチャしていいと思ってんのぉ〜?ねぇねぇ?」
全てを話すと会長はさっきと変わらない表情で言ってくる。しかし、先程よりかは、まだマシになったかもしれない。ペンをトントンするのをやめたから。
「いや、イチャイチャなんてした覚えないですけどね……」
「そう?君はボッチなんだから一定の時間、側に女性が居たらそれはイチャイチャになるでしょ?」
なんだそれ?どんな原理だよ?
ボッチが一定の時間女子と一緒にいたらイチャイチャ認定なんて初耳だぞ?
「じゃあ、俺と会長は毎日イチャイチャしてますね」
「それはいいんだよ!だって洸夜大好きだもん!」
「はいはい、俺も可愛がられてとっても嬉しいです」
こんなことを言ってからかってくるのだ。中学時代から。
「またまたぁ……ホントに好きなんだよ?洸夜にファーストキスを奪われてから……ね!」
「救助で人口呼吸しただけですよ?誰かさん、深い川に入って溺れてらっしゃったので」
「もうあの味は忘れられないわ」
「はいはい、そう言っててください」
もう面倒になり投げやりになって会話を終わらせて目の前にある資料とにらめっこする。
「昨日、逃げ出したんだから。昨日の分もしっかりやってね」
うわ!やっぱ鬼だ。鬼会長。鬼神、山姥、鬼畜野郎。
並べられるだけ鬼を並べた。
「はいはい、私のこと大好きなのわかるからちゃんとやってね!」
会長はそんなのお見通しらしい。
伊達に三年以上一緒にいないな……
「これ、終わらなかったら持ち帰りでやってね?」
なんとまたまた無茶振り。
「あの、話聞いてました?この後、老人ホームに行ってその後十時から一時までバイトなんですけど?」
「違法な時間までバイトを許しているのは、どこの誰だったっけ?え?あなたの為にここまで優遇させてるのに、そんなこと言っていいのかなぁ?」
「ダメでした。すみません。靴舐めろと言われたら舐めさせて貰います!……ホントにお世話になって感謝の念に駆られる日々でございます。俺はこんな超美人な先輩を持って幸せ者です。ありがとうございます」
「うん、賢明だね。大好きな洸夜に靴を舐めろとは言わないけど……」
ちょっと気持ち悪かったらしい。会長が若干引いている。
「はい……ありがとうございます。この仕事、一刻も早く終わらせてご覧に入れましょう」
「うわぁ、さすが頼もしい!私の洸夜は違うね!」
「いや、あなたのもんじゃないし、それに頼もしくもないです」
ここは、訂正。普通のどこにでもいるごく一般ピーポね。
「違うよ、洸夜は普通の人間じゃない。キックボクシング、サッカー、習字、ピアノ、塾、陸上。全部習って出来るハイスペックさんだもんね」
「なんの、ことだか?」
資料に赤ペンを入れ修正しながら俺はすっとぼける。
「私は君をホントウなら部活に入れたいくらいだよ。学校の名前を売る為にね。でも、それはしない。何故なら、私が大好きな洸夜を独り占め出来る時間が増えるから。あなたは、天才でありイケメンであり…………」
そんな言葉を無視し黙々と資料を片付けていく横で、会長がそう言う。
「そして、私の下僕。」