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27 もっとも憂鬱な月曜日 ③その2

夏帆目線です。



昼休み



今日の午前は色々あった。

まず、洸夜が登校すると、早速男子が洸夜に絡み始めた。


その時、彼は男子たちを煽らないように極力黙っていた。そして、彼があの先輩と付き合っていないと言った時、私の胸が勝手にドキッとした。


そこから謎の安心感が広がって、彼がそこまで言うのだからやっぱり付き合っていないのじゃないか?

と勝手に解釈して安心している自分がいた。

午前に会ってお茶しているのだから嘘かもしれないのに、そのことを信じている自分がいる。本来なら、絶対信用しないつもりだった。

だって彼は、私に嘘をついたから、誤魔化したから、隠し事をしたから。

だけど、彼のその言葉を聞いた瞬間にこのことは彼の言い分を信じようという思いになったのだ。私の都合の解釈かもしれない。それかただの病気。

完全に気持ち悪い奴だと自分でそう思っていた。


だけど、涙を流したのは、私の直感がドライアイなんかではないと訴えている。昨日はずっと変だった。

だから、それだけは信じられない。彼がどれだけそうだと言ってもこれだけは理解できない。


私は、後悔もしていた。一方的に話をやめずに話すように諭せばよかったと後悔している。


そして、棚山たちが、彼とあの先輩の文句を言っている時、彼の拳が強く握られていることに私は気付いていた。


しかし、それがどういう理由かわからない。

自分の女を侮辱すんな。

俺を侮辱すんな。

自分はいいけど先輩を悪く言うな。


私から見ても理由の候補はたくさんある。しかし、彼は珍しく怒りを抱いていた。そんな彼をみると、私も棚山に対して怒りを覚えたのだ。


洸夜を虐めて最低な奴だと。

複数で一方的に虐める。外道にもほどがあると。


典型的なやり方かもしれないが客観的に見て気分が悪い。それを昔、洸夜にやっていたと思うと申し訳なくなって泣きそうになる。


だから、私は、彼の心の支えになりたいのだ。

償いの意味を込めて。

どんなことがあっても、私は絶対に味方だよ!って………


一限の開始前。生徒会から配られたプリントを見て、私は驚いた。

生徒会がそんな提案をするとは、思ってもみなかったのだ。しかし、学校の内状は生徒会が一番よく知っている。そして、力があるのも事実だ。

生徒会は毎年、会長、副会長が決まると、それぞれの学年の成績優秀者の中から生徒会員が数名選ばれる。

だから、生徒会はエリートの集まりなのだ。

今考えると、洸夜は多忙の中そんな凄い所に所属してたんだなぁ……

と尊敬してしまう。


そして、また同じように棚山がこちらにきて、文句を言い始める。このクラスで生徒会員は洸夜だけだから仕方ないといえば仕方ないが、それを言われる洸夜も酷である。


別に、洸夜がプレゼンから、資料作成やこの煽り文章を書いたんだったら仕方ないが、洸夜がそこまでしているとは思っていない。

もしそうだとしたら明らかに配分がおかしい。もっとメンバーがいるから。

多分分担してやっていたんだろう。

だから、ほんのちょっとしか関わっていない洸夜にそこまで言うのはどうかと思ったのだ。


あんなに詰め寄られて………さっき、湧いていた怒りが再び湧いてきそうだ。

しかし、洸夜は事態の悪化を防ぐために煽っていないことも知っている。ここで私が何かを言って迷惑を掛けたくない……と思いがあり、我慢するために今日の一句を読んでいたのだ。


しかし、棚山のある言動で私は、堪忍袋の尾が切れた。

「お前はオタク部かもしんないけどよ?俺は、サッカーに命かけんだよ!あ?わかるか?部活の時間削られる苦痛………わかんねぇよなぁ!?暇人はよぉ!!」


この瞬間私には、自分を制御させることができなかった。棚山(あいつ)は、彼のことを暇人と言ったのだ。

その言葉は彼に一番言ってはいけない言葉だと誰よりも私が知っている。倒れて救急車に運ばれてしまうほど、多忙なのだ。

そんな状況なのに、彼は勉学を欠かさない。勉学は将来的にばあちゃんを心配させないようにする為だと言っていた。

自分のことなどいつも後回しでしかないのだ。

他人のことしか………他人の幸せを一番に考えることしか出来ない優しい人なのだ。

どんなに多忙でも言えば、絶対に時間を作ってくれる人なのだ。


そんな優しい人にこんなことを言う、棚山を私は黙って見過ごすことが出来なかった。


そして、私はああ言った。

彼は私の言うように大声をだして言わなくなったが、毎時間の終わり、休み時間になると周りにたかり、チクチクと愚痴を吐いていた。

そして、時間が経過するごとに彼の表情が悪くなっていることに気付いた。


大丈夫かなぁ……と心配するのだけど、昨日の事があった手前、私からは話しかけられない。

一方的に電話を切ってしまったからだ。そんな馴れ馴れしく、いきなり話しかけるなんて私にはとても出来なかった。


昼休みになり、昼食を取るために、私の机の周りに椅子を持って、奈美と夢葉が来た。


弁当を食べ始めると、彼も食べ始めた。しかし、何故だか物凄い勢いで口に運んでいた。

そんなに急いでどうしたのかなぁ……


と不思議に思っていると、奈美が話し掛けてきた。


「ねぇねえ〜そういえばさぁ〜。あの彼氏さんって歳上?」


また始まった。奈美の尋問が……

ここは、ふつうに答えていいよね?


「いやぁ……同い年だよー……」


「そっかぁ……。だからあんなに仲よさそうに手繋いでたんだぁ……同い年だと無理に気を使わなくていいもんねー」


「まあ、そうだねー……気は使ってなかったかなぁ……」


「彼氏のこと好き?」


夢葉が少し頰を赤らめ聞いてくる。こんなこと聞いている自分も恥ずかしいようだ。


「う、うん……まあ……」


これは、偽りでない気持ち。


「どういうところ?」


奈美も聞いてくる。完全に私を質問責めにしているのを気付いてほしい。


「優しいところかなぁ……あと、何気に気を使ってくれるところ………」


彼は、いつも他人のことを考えてくれる。そして気を遣える。前も送ってくれようとしたり小さなことに気がきく人なんだ。

私は、そんなところが………


あれ?私なんか、自然な形で自分の本心を語っている気がする。


「そっかぁ……じゃあ、嫌いなところは?」


嫌いなところ?そんな、そんなの………ある……

ホントは全部、好きで居たいけど………

少し………嫌なトコがある。



「え〜〜……う〜ん………信じてくれないところ………かな?」


「え?それどういうこと?」


夢葉がそう尋ねてきた。その問いで私は自分の本心を赤裸々に語っていたことに気付いた。


あ、ダメ……そんな、言いたくない……

もし、彼が聞いていたら、嫌われるかもしれない……

仮の設定に……文句なんて……贅沢なんて……


「悩んでても、誤魔化して、隠しちゃうから……」


「そっかぁ……。そりゃかなしいね………」


夢葉がそう言いながら頷いている姿を見て、私はまた本心を語ってしまったことを自覚した。


慌てて、目線を洸夜の方に向けてみると、彼は少し俯いている。そして、さっきまで動いていた箸が動いていない。


そっか………聞いたんだ……


彼が私をどう思ったかはわからない。

けれど、彼は、すぐにご飯を食べ終わると、すぐに五限の教科書を広げ始めた。


もしかして気にしてないのかなぁ……


そんなことを考えていると、奈美が、「今日一緒に勉強しない?」と誘ってきた。


しかし、私は断った。

だって、今日は大切な用事があるから。


そういえば、今日から部活がテスト週間で中止になっている。いつも通りに、待ち合わせしなくていい筈。


どうしよう?待ち合わせどうする?


と聞いてみたいが、近くに奈美と夢葉がいるため、聞けなかった。私たちはご飯を食べ終わってトイレに行った。


向かう途中に、


「ねぇねえ〜、夏帆、今度彼氏さんと遊んでみたいんだけど……」


「それそれ!私ももうちょっと、彼氏さんのこと知りたい!!」


二人がそう言ってきた。確かに、二人の言い分はわかる。私は、彼氏について殆ど喋ってないので、二人は知りたいのだ。

私、あの偽名すら教えてないもん。


だから、


「とりあえず、聞いてからね……」


と返答を濁した。トイレが終わり、教室に帰ってきてみると相変わらず、洸夜は教科書を広げていた。


私も隣に座り、五限の教科書を出そうと思ったらノートの切れ端があることに気付いた。


それを見てみると、こんな内容だった。



『悪い、今日の集合とかなしで、先に行っててくれ……』


これを見て、私は、戸惑いを隠せなかった。


え?どういうこと?一緒に行きたくないの?

もし、一緒に行けたら、会話して、この……意味わかんない気まずい関係をどうにかしてからおばあちゃんのお誕生日会を迎えたかったのに………

もしかして………この状態がいいの?

仲直りなんて、甘い考えだったのかなぁ……


隣の彼を見てみると、彼は変わらない表情で教科書を覗くだけ。


ねえ……なんで?なんで、一緒に行ってくれないの?

なんで、話してくれないの?

これが老人ホームに行くまでに仲直りする最後のチャンスなのに。


私は、彼がわからなくなりそうだ。

あと、3話でこの章が終わります。

GW中には必ず終わらせますので、よろしくお願いします。

次回も夏帆目線です。

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