21 過酷な日曜日 ③
8000PV突破ありがとうございます。
皆様のお陰で、日別ランキングbest100に入ることが出来ました。
ありがとうございます!!
今回は、夏帆視点。
ああ、どうしよう。
もうちょっとで、洸夜との待ち合わせだ。
緊張するなぁ……
コンタクト洸夜なんて久しぶりだし……
これって、まさかのデートなの?
仮の彼氏になってくる洸夜。私が望んでいる設定だ。
けど、奈美と夢葉も遠いところから見ている。
洸夜には伝えてあるから、恋人っぽいことは許されるだろうけど緊張するなぁ……
集合時間はいつもの喫茶店で午後一時半。
今日はおばあちゃんの誕生日プレゼントを買いに来たんだ。
時計の針が一時二十五分を指した。
「悪い、待たせた……」
彼の声がした。カジュアルな普段着の彼だ。
そして、いつもよりやっぱりカッコいい。
彼が何故、メガネをして根暗になって交流を拒んでいるのかがわからない。
それが謎で気になるのだが、本人に聞くのは気がひける。それに、聞いてはいけない気がする。
「よし、じゃあ行くか」
彼がそう言うと、歩き出す。
よし、今日アタックしてポイントを稼がなきゃ。
まず手を繋ごう。今日は恋人同士の設定だからそんくらいは大丈夫だよね。
「ねえ、洸くん」
「まってくれ、それ偽名?」
彼が尋ねてきた。
「今日は、川幡洸って人ね」
「それ、偽名の意味がないだろ……」
ん?私の偽名が気に入らないのかな?
「まさか、ご不満?」
「いや、俺は、バレなきゃいいけど……」
「じゃあ、バレないからそれで」
「心配だ……」
彼が予想以上に心配性であった。だいたいこのくらいのアナグラム解けるわけがない。大丈夫だよねきっと。
偽名問題が解決したところで最初の要求。
「洸くん、手つなご?」
「ん?あ、いいけど……」
予想外だった。洸夜はさっと手を出してきた。
あとは私が彼の手を掴めばいいだけ。それなのに、やたら緊張する。
なかなか手が繋げない。
手を繋ぐのに手こずっていると、彼が私の手を握った。
え?な、なに!?
私が隣で歩く彼を見ると、
「嫌なのは分かるが、さっさと繋げ、不自然に思われるぞ」
あ、そっか。今日は、奈美と夢葉が来てるんだった。
それにしても……
「嫌じゃないもん。」
「え?なにが?」
彼が私の言葉に反応した。
あ、心の声が……
「別に……大丈夫……なんでもない…」
「そ、そうか……」
手を繋ぐのに嫌じゃない。と言おうと思ったのに、恥ずかしくて言えなかった。
せっかく言うチャンスだったのにぃ………
私たちが最初に向かったのは、洋服屋さんだった。
おばあちゃんが気に入りそうな服を買いに来た。
「俺、あんま婦人服に詳しくないから任せていいか?」
彼はあまり詳しくないらしい。
きっと、服も最低限のものしか買ってないんだろうなぁ……、前に家に行ったときもそんなに多くなかったし……
取り敢えず、おばあちゃんに似合いそうな服を選ぼう。おばあちゃんは、割と何色でも着こなせる人だから色はそんなに気にしなくても良さそうだ。
それに、明日から6月。梅雨になって湿っぽくなる。
冬みたいなモコモコは却下で、夏も着れる風通しの良い生地でおばあちゃんに似合う服にしよう。
「ねえ、これとかどう?」
私が選んだのは、紫の服。前、老人ホームに行ったときも紫の服を着ていた人が多かった、これなら喜ばれるに違いない。
「お、おう………いいと思うぞ」
「そ、そう?私着てみようか?」
「お前の服じゃないだろ……」
あ、しまった。今日はおばあちゃんのためのショッピングだった。褒められたのが嬉しくてつい……
でも、
「お前じゃないもん」
呼ばれるならやっぱり名前で呼ばれたい。
「夏帆の服は買いに来てないだろ……」
少し面倒くさそうな顔をしながらもしっかり名前で呼んでくれる洸夜。嬉しい……
「じゃあ、私の服も買ってい?」
「まあ、いいけど……」
「じゃあ、こっちこっち!!」
私が手を引くと一瞬ビクッとしながらもすぐにいつも通りになり、そのままついてくる。
せっかくなんだから手を繋げばよかった………
若者の服のコーナーに行くと私たちと同い年くらいの人たちがたくさんいた。
特に女性が多く、私たちをみて、「うわ、あのカップル顔面偏差値たかっ!!」とか、「彼氏さんカッコいい」とか、小声でコソコソ話し合っていた。
そうでしょ、そうでしょ!
洸夜はちゃんとすれば十分カッコいいんだから♪
メガネとって前髪から目を出せばね。
自分に視線が向けられていることに気づいた洸夜は居心地悪そうにしてる。
「や、やっぱり俺、店の前で待ってるわ」
やっぱり……そう言うと思った。
だけど、今日は逃がさないよ。だって折角のデートで、しかも設定は恋人なんだもん。
「ダメ……」
「い、いや。でも……」
「ダメ」
「………はい」
少し強気に言うと洸夜は観念した。
そして、
「悪いけど、近付くぞ。こんな女性の服のコーナーで離れてたら不審者だと思われる」
たしかに……カップルできたならまだしもこんな所で、一人なら完全なる不審者だ。
洸夜が近づいていつもより距離が近い。しかも今日は恋人設定で手を繋ぐのも自由だ。
そう考えると、本当のカップルのデートみたいな感じで緊張してしまう。
しかし、今は楽しもう。緊張なんてしなくていいんだ。とりあえず楽しもう。
そう言い聞かせ、私は服を手に取る。
「ねえ、これなんかどう?」
洸夜に見せると、「まあ、いいんじゃね?」と曖昧な返答が返ってくる。
「じゃあ、試着してくるから……」
私が行こうとすると、彼もついてくる。
「なんで付いてくるの?」
私は一瞬、焦った。い、いくら恋人設定だからってそこまで…………別に、嫌じゃないけど……
「夏帆と離れたら俺不審者だぞ?店員さんに声掛けられたりしたくない」
「たしかに……」
ごもっともな意見だった。
今は、離れるわけにはいかないんだ。
「じゃあ、着るけど覗かないでね?」
試着室に入るとき、そう彼に釘を刺した。
「安心しろ、そんな趣味はない」
だが、彼は普通に返答した。
なにそれっ!??なに?私の身体にキョーミないっていうの!?そうですか??あー!!そうですか!!
ごほん……冷静に……冷静に……
それとも異性としてみてないとか?
う〜ん。わかんない。強がっているだけかもしれないし……
とりあえず、服を着てみた。そして、彼にみてもらう。
「どう?」
「いいと思うぞ」
淡白である。ならば、
「かわいい?」
「ん?ああ、かわいい」
無難に言ったつもりだろうが、私にはお見通しだ。
かわいいって聞いた瞬間、彼が少しビクッとしたことを……私にはお見通しだが……
……かわいいって言ってもらえた………嬉しい。
「具体的にどう似合ってる?」
私は欲しがりなの。
「う、まあ、夏帆は基本的に何色でも似合うしルックスがいいから、それも十分似合ってる」
「あ、ありがと……」
まさか、そこまで言われるとは思わなかった。
なんだか恥ずかしい………
頰が紅く染まっているのを自分でもわかる。
こんな顔、洸夜に見せられない。
私はすぐに試着室に戻った。
そして、着替えてまた出る。
「もういいか?」
試着室を出ると彼は私にそう言った。
「いいけど……洸夜は?」
そう尋ねた瞬間、彼の瞳が揺らいだ。
「いや、俺はあるから大丈夫」
さっきの声のトーンより少し低くかった。
レジの会計を済ませ、店内を後にした。
時計の針をみると、三時を指している。
「ねぇ、もう三時だし、お茶にしない?」
私は、彼にそう提案した。
そうすると、彼も「ああ、そうだな」といつもの感じで、返す。
私たちが向かったのは、ケーキ屋さん。フードコートみたいにその場でケーキを食べることが出来て、他にも色々注文できる。いわばカフェみたいな店だった。
そこに行き、店員に案内されて、椅子に座った。
店内は趣がありとてもいい内装だった。
店員が注文を受けに来た。
「ご注文は何にいたしましょうか?」
「私は、ショートケーキと紅茶で……洸くんはどうする?」
そう尋ねて、彼をみると、また瞳が揺れた。
「洸くん、どうしたの?」
「い、いや。大丈夫……問題ない」
「そ、そう?」
「あ、ああ、俺も夏帆と同じやつにする」
「かしこまりました……少々お待ちください」
店員は去っていく。これからお茶会が始まる。
以前というか、昨日この章があと五話くらいと言っていましたが、それで収まらない確率大です。
すみません………
……私があと○話というのは、あてにしない方がよろしいです。
予言通りになど絶対にできない自信があるので!!(謝罪)
ポイント評価などして頂けると執筆が早くなると思いますのでよろしくお願いします。




