20 過酷な日曜日 ②
一日二話なんて久々です………
7000PV突破ありがとうございます。
「ちょ!!ちょっと!!意味がわからないです。どういうことですか!?」
突然、なんの予兆もなく美月さんから別れを告げられた。
「そのままの意味よ。もう君とは一緒にいられない。」
「まさか、あの時のことで………」
もう許してくれていると思っていたのは、俺だけだったのか……
「そうじゃないんだ。私、店長から本店で働かないかと誘いを受けたんだ」
「誘い?」
「うん、本店で働く予定の凄腕の人が急遽変更になって、それで店長が私を推薦してくれて……」
やはり店長はべた褒めだった。
「そういうことだったんですね………」
「正社員として雇ってくれて……短大も少し休むつもり……」
「そうですか……」
「私も最初は悩んだ、こんな短期間で推薦してもらっていいのかなって………でも、私は、そこで働いてみたい、洸夜くんみたいに美味しそうに飲むお客さまをもっとみたい!!………これは、私に出来た夢でもあるから」
「そうですか………」
俺に引き止める権利はない。
それに、美月さんは、立派な夢を持った。
応援してやりたい。
「急で本当にごめん。だけど……私は、やってみたい」
「はい………俺も応援します。美月さんは絶対にお客さまを笑顔に出来ますよ」
「ありがとう……」
寂しくないと言えば嘘になる。
美月さんのコーヒーは大好きだ。
本当に激務でもあれが飲めただけで疲れなど吹き飛ぶ気分になった。
悲しいが……それも仕方ない。
だが、最後に俺は、やらなければいけないことがある。
「美月さん、いつ出発するんですか?」
「明日だよ。ちょっとここから離れた場所だからね」
「この喫茶店の本店って関西でしたっけ?」
「うん、だから取り敢えず、一年は向こうに行くつもり。短大も許可は取ってある」
「そうですか……成功したら向こうにずっといますか?」
「まあ、そうなると思う」
「また美月さんのコーヒー飲めますよね?」
「関西に来てくれれば是非」
「ありがとうございます……」
残りのケーキの味はあまり覚えていない。
俺は、ある一つのことで頭がいっぱいだった。
美月さんがケーキを食べ終わって席から立ち上がる。
「う〜ん、美味しかった、それじゃ、会計いこうか?」
「俺が払います。」
「で、でも……」
「最後ぐらい俺にさせてください。服も買ってもらいましたし………」
「そ、そう?じゃあ、お言葉に甘えて……ごちそうさま」
俺は会計に行き、お金を払った。
普段は、痛いと思う千二百円。しかし、今は全然痛くなかった。
外に出ると、時計は十一時を指していた。
「午後からだよね?もう遅くなると悪いから、ここら辺でお開きにしない?」
「美月さん………」
「ん?なに?」
「ちょっとついて来てください」
「ちょ、ちょっと!?洸夜くん??」
そう言い、俺は、美月さんの手を引いた。
それ以外はなにも伝えずにひたすら目的の場所に向かった。
「着きました……」
俺が向かったのは、アクセサリー屋。
「え?アクセサリー屋って………何をするの?」
「俺は、貧乏でろくなもの買えませんが、最後に昇格祝いをさせてください」
俺はこのことで頭がいっぱいだった。今まで色々助けてくれた美月さんに感謝の思いを形として伝える。
それには、アクセサリーがピッタリだと思った。
俺は女性が何をもらって喜ぶがなんてわからない。
ベタかもしれないし重いかもしれないがそれしか思い浮かばなかった。
「洸夜くん、私はあなたにそれは頼めない、私は、二重の意味であなたと別れるから」
涙腺が崩壊しそうな顔をして、美月さんが俺に言う。
だが、俺は譲れない。ここだけは譲れないのだ。
「わかってます…………もうわかりました。でも、これだけは絶対に譲れないです。ここら辺で待っててください」
そう言って、俺は店内に入り、ネックレスを探した。指輪とかだと勘違いさせてしまいそうだからネックレス。
宝石のネックレスは高すぎて買えない、だから普通のネックレスを探した。
コーナーに行くと、目に留まった金色のネックレス。
これが一番良かった。一番美月さんに似合いそうだった。
それを持ち、レジに行って買う。八千円と俺にしては破格の価格だが今の現状なら安い、安すぎる。
それを買い、ついでに隣の花屋に行く。
探している花はピンクのバラ、ダリア、ガーベラ。
『感謝』という花言葉を持つ花を片っ端から探した。
それを3本ずつ買い花束にしてもらった。
それを持ち、再び美月さんのところに戻った。
「洸夜くん……」
花束をみた美月さんは、涙を浮かべる。
「すみません。事前に知ることが出来たらもっと豪華なものを用意できたんですけど………」
「バラ、ダリア、ガーベラって…………」
「はい、花言葉は『感謝』美月さんと出会えたことに感謝、コーヒーを飲ませて頂き感謝、癒して頂き感謝、沢山感謝します。そして、この袋に入っているのはネックレス。花は枯れてしまい残りませんが、ネックレスは残るので……どうぞ」
「………ホントにいいの?」
「もちろんです。絶対成功してくださいね。俺はいつも応援しています。
……俺は、………努力家な美月さんが大好きなので」
「ありがとぉ………大切にする」
美月さんは号泣していた。
俺も自然に涙が流れてくる。本当に久しぶりの涙だった。
俺からのプレゼントを受け取ると、美月さんは歩き出す、
その姿が次第に遠くなる。
すると、突然美月さんが振り返る。
そして、
「洸夜くん、ありがとぉ!私、君のこと大好きだよ!!」
と笑顔で言った。
言い終わると歩き出し、その距離がまた離れる。
その姿が完全に見えなくなった。
見届けると俺は、顔についている涙を袖で拭き、
「俺も午後に向けて家帰って、服着替えよ」
と言って歩き出す。
こんな涙がついた服、きてられない。
評価、ブックマークありがとうございます。
3桁突破したときは、びっくりしました。
この章が終わるまでは、毎日投稿を目標にして頑張ります。




