17 色々大丈夫だよな?
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「ねぇ?洸夜………説明は?あんな所でいきなり手を引っ張られたら…………嬉しいじゃん……」
あれ?空耳だろうか?
少し、夏帆さんからあり得ない言葉が飛び出したような気がするんだが………
今の状況を説明すると、修羅場の事後である。
もう両者が一触即発しそうな雰囲気だったので、美月さんに、「もう、予定の時間が迫っているんで!また明日!!」と言い、走ってきたのだ。
何はともあれ、明日、美月さんに会うの嫌だなぁ……
怒りの矛先が俺に向かっていたらどうしよう……
そう考えると、今日の夜は寝れそうにない。
そうして老人ホームに向かって歩いているのだが、この後、夏帆によって事後説明と追求が行われる。
もう既に覚悟済みだ。さあどんとこい!
「ねえ、洸夜はあの先輩とどういう関係なの?」
「前にも言ったはずだが……」
「先輩はわかってるよ?それに付き合ってないことも。でも、なんで一緒に出てくるの?」
「先輩のバイト先があそこなんだよ。お前も以前見ただろ?」
「お前じゃないもん……」
そこ気にするところか?
以前はお前って言っても大丈夫だったし……どうした?
俺が言うのもなんだが、今、そんなこと言ってる状況じゃなくない?
しかし、どうやら言わなきゃいけないみたいである。
「夏帆も以前あそこに行っただろ?」
「うん……」
「あん時に、奥にいたひとだよ。覚えてないか?」
「う〜ん。微妙……いたようないなかったような……」
「それからまた行く機会があってそんときに仲良くなったんだよ……コーヒーについて悩んでいたから、味見係やってた」
「そ、そうなんだ………へぇ……」
「だから一緒だったんだよ。俺が行った時とシフトが被ってたからな」
そんなことを言っているが、美月さんが俺の来る時間を知り、合わせているのはこの際言わなくてもいいだろう。
火に油を注がない主義だからな。
そんな感じでなんとか、夏帆には納得してもらった。
後の不安材料は美月さんだ。険悪な雰囲気だったから俺の言い分を聞き入れてくれると嬉しいのだが……
そんな事を考えて歩いていると老人ホームが見えた。
「なんか、凄く久々な感じだね。」
夏帆が俺の方を見てそう言ってくる。
俺は、「ああ、そうだな」とだけ答えた。
なんか、本当に夏帆はどうしたんだろう………
いきなり下の名前で呼ばせたりしてなんか怖い。
俺を手なずけて、黒歴史を作らせて……それで……脅迫材料に………は……考えすぎか………
しかし、最近の夏帆は俺に打ち解けてくれたのか、普通に話してくれる。
なんかこれも楽しいな………
○○
老人ホームに到着するとばあちゃんたちは笑顔で迎えてくれた。
「よぉ〜きた。やっと、二人揃ったな。」
「まぁまぁ!良かった〜。洸夜くん。体調は大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です。夏帆さんが来てくれたお陰で助かりました」
「こ、洸夜………いや、それほどでも……」
夏帆が少し頰を赤らめ照れる。
「そう。良かった〜。夏帆ったらすぐに家に行くって言って。本当に心配してたのよぉ〜。」
「そうなんですか。ありがとな……夏帆。あの時はホントに心配かけたし……助かった」
「い、いや。別に……そこまで言われるほどじゃないし………当然のことをしたまでだし………」
俯きながら呟くようにして言う夏帆。その声音は次第に小さくなって最後は殆ど聞こえなかった。
その様子を見ていたばあちゃんは、改めて夏帆にお礼を言った。
「ホントウに感謝するぞ。夏帆さん。このボンクラの孫がホントウに心配を掛ける。」
チクショウ!!ぐうの音もでない。
「今度、洸夜から何か一つお願いを叶えてもらうといい。叶えてやるよな?洸夜。」
「はい。仰せのままに…………」
前回は色々心配かけたし、夏帆の願いを叶えられる範囲で叶えてやろう。
「そ、そんな!!大丈夫ですよ!洸夜くんは、確かに悪いけど……どうしようもなく悪いけど。悪くないです!!」
あれ?夏帆さん、フォローは?
このままだと俺、ただの悪い人だよ?
「でものぉ………洸夜はどうしようもなく悪いやつじゃし……」
ばあちゃんそれはもう十分に自覚しております。
ですからこれ以上マイハートをえぐらないでください。
「お願いなんて大丈夫ですよ。」
夏帆はさらっとばあちゃんに言った。俺にそんな事頼まなくても自分でできるって事ですよね?分かります。
「そうなのか?なんて優しいお孫さんじゃ!!ぜひ嫁に欲しいくらいじゃ!!」
「よ、嫁っ!!!?」
夏帆はただただ驚愕する。
嫌なのはわかるけど、そこまで反応しないでほしい。
それと、「まあ!!」と言って笑顔を見せないでください。西条おばあちゃん……
「なんて冗談じゃ。こんなクズな孫に嫁に入らんくていい。もっとステキな男がこの世の中にはごまんといる。それよりか、殆ど洸夜よりもいいやつじゃ」
あの、それだと俺が文字通り底辺になるのですが、身内に甘くされるのは嫌だけどそこまで酷評されるのもなんか傷つく。
それに今日のばあちゃん。ボディーブローひどい。
俺のクリティカルゾーンにバシバシ入ってきているんだが……
「洸夜くんはそんなに酷い生命体じゃないですよ」
夏帆さん。フォローするなら人間って言って。
「そうか……なんか二人仲良くなった気がするな」
「え!!?仲良くで、ですか!?」
「ああ……当初から見たらかなり良い雰囲気になっているぞ」
「そうですか………」
夏帆は頰を赤らめ俯く。これは怒っているのか?
お前とそんな仲良いわけじゃだろ!!って言っているのか?
だが、ばあちゃんの前だから俺に気を使っているのか?
だとしたらなんか、申し訳ないことをした……
そんな事を考えていると、
「ちょっとトイレに行ってくるからゆっくりしててね?」
と言い、車椅子を使い、西条おばあちゃんは部屋を出て行った。その様子を確認したばあちゃんは、にゃっと笑い俺たちに話しかけてきた。
「やっと出て行ったわ……二人に相談がある。」
「なんですか?」
夏帆が尋ねる。
「夏帆さん。加代さんの誕生日はいつじゃ?」
「来週の月曜日ですけど……」
「じゃろ!だから、二人に頼みたいことがある」
「なんでしょうか?」
「二人に誕生日プレゼントを買ってきてもらいたい、無論お金は後で払う」
「で、でも……」
「わしは車椅子じゃし。動けん。だから頼む」
「私は別にいいと言うか、寧ろ祝っていただき感謝してるくらいですけど……洸夜くんの予定は?」
「暇じゃろ?」
暇じゃないです。はい。
「いやぁ………どうだろう……」
「バイトない日はいつじゃ?」
「日曜日です………」
「じゃあ、その日に夏帆さんとデパートでもなんでもいいから行ってきなさい。わかったか?」
「はい………」
俺は返事をした。
確か、日曜日はバイトも休みで、アレも休みで、喫茶店に行けばいいだけだったはず、
………多分大丈夫なはずだ。
うん?いや、大丈夫だったか?




