16 修羅場は突然訪れる
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午後、五時四十五分。
生徒会終わりにて………
俺は今、猛烈に悩んでいる。
理由は、あれだ。あれがあったからだ。
すまん。指示語が多いのは、それだけ動揺しているからでね。今、とても難しい状況にあるのだよ。
とまあ、冷静さを欠いて考えるのはよくないね。
これも久々だ。この冷静さを欠いたのも……
さっきから、指示語ホント多いなあ………
現在、俺は喫茶店で、「定期考査一週間早めよう!みんながバカだからこうなったんだよww」の企画書をまとめている。因みに、この企画のタイトルの名付け親は会長。
明らかに煽っているが、会長的にそういう方向でいくことにしたのだろうか?
ほら、あれだ。敵を作ることで団結力を高める的な……
はっきり言ってそんな感じは微塵もしなかったけど、きっと会長の演技だろう……うん、きっと、わかって煽っているんだ………うん、そうだ。
この資料が生徒に配られた時に怒りの矛先は一体どこにいくのだろう………
と考えて身震いしているが、きっと会長がどうにかしてくれるはずだ。うん。きっとそう。(思考放棄)
そんな感じで、キーボードを打っていると、美月さんがいつも通りコーヒーを持ってきてくれた。
「はいどーぞ!洸夜くん。お待たせ致しました。私の愛情たっぷりコーヒーです。きっと甘いですよ?」
「あ、ありがとうございます…………ブラックですよね?」
「はい!でも、私の愛情たっぷりなので、………甘々です」
「はあ……ありがとうございます……」
昨日ぶりの美月さんだが、なんか少し変わっただろうか?接客をしっかりとしているのだが、少し距離が近い気がする。それに少し頰が紅く、照れている。
しかし、今はそんなこと考えている暇はない。明日の職員会議までにこの資料を提出して、もしかしたらプレゼンまでしなければいけないかもしれない。
そうならないことを願うしかないがもしそうなったらいけないので準備は万端にしておく。
「洸夜くん。昨日はありがとう。お陰でうまくできそうだよ」
コーヒーをテーブルに置いた美月さんが俺に笑顔を見せてそう言った。結局、昨日では完成しなかった。完成させたかったが難しく出来ず、そのまま帰ってしまった。途中で投げ出した感じで少し罪悪感があったが、うまく出来そうで安堵した。
「すみません……昨日は帰っちゃって……今度、また手伝わせてください」
「ホント?また手伝ってくれるの?」
「はい、もちろんです。俺も中途半端で申し訳ないと思ってましたし………」
「じゃあ、今度は客引きのために何か考えてって店長に言われたの………」
「めっちゃ好かれてますね……」
「いやいや!!そんなことないよ!店長は「お前は全然まだまだ!たしかに昨日の考えたスイーツはアイデアや過程は素晴らしいがまだまだっぁ!!!新人にしては天才じゃね??だけどぉ!!本当にまだまだぁ!!だからねぇ!!………はぁはぁ……頑張りたまえ………」って言ってたし………」
べた褒めじゃねーか………
大丈夫。それきっと好かれてます。
俺はそれを聞いた瞬間にこう思った。それに、まさかの店長……………ツンデレでした。
もうっ!店長たらっ!!かわいんだからっ!!
どうやら店長も悪い人ではないらしい。
今度会ってみたいものだが………また、手を止めてしまった。
本当に今日は間に合わない。急いで仕上げなければ………
「多分、美月さんは好かれてます。それと今度の休日……日曜日なら大丈夫ですけど……それでいいですか?」
「うん、いいよ。またお家デートだね」
「はい、よろしくお願いします……」
「ねぇ、洸夜くん。さっきらずっと凄い勢いでカタカタしてるけど、生徒会ってそんなに忙しいの?」
俺が高速タイピングをしていると、美月さんが心配そうに声をかける。
「はい。もうすごく忙しいです………軽くブラックなんて超えてます………もうダークホール企業レベルですよ……」
「なにその企業……初耳なんですけど……」
「それくらい、忙しいです……会長がサボりぐせで……副会長は部活動ばかりですし………書記と会計……と他の雑用二人と俺でやりくりしてます……」
「た、大変だね………」
「すみません………今日もゆっくりコーヒーいただきたかったんですけど………そうもいきそうにないです……」
「ううん。気にしないでいいよ。そうやって頑張る洸夜くんを見るのが………えっと………好きだから……」
「…………え?」
「なんでもない!!それじゃあ、お会計の時に声かけてね!それまで、邪魔しないから!!」
そう言うと美月さんは小走りで戻っていった。
あれ?なんかさっき美月さんから面白い言葉が出てきた気がするんだが………
これって気のせいだろうか?
ここは、俺の聞き間違いだ。俺は過去に聞き間違いを沢山してきたからな………ばあちゃんにお前の聴覚はわしとどっこいどっこいだって言われたことあるし……
さすがあの時は傷ついた………
だから、確信のないときは聞き間違ってことにしている………
俺はさっきのことは忘れて、再びパソコンと向かい合った。
○
午後七時前
もうすぐ夏帆がこの喫茶店にやってくる。
企画書は一通り終わったが、まだ例の件が残っている。
「はあ………文化祭早めるは予想外だったあ………」
例年通りなら二学期が始まって三週間目にある文化祭。しかし、今年は二週間。
例年より一週間短いのだ。一週間なんてそんな支障をきたさないと思ったら大間違い。この一週間がカギになる。文化祭の仕上げを行うのも、最後のリハーサルをするのも最後の一週間。今年はこれがない。
準備期間が短くなるのだ。しょぼい文化祭も覚悟しなければならない。しょぼい文化祭なんて嫌なはずなのに、何故会長は、一週間早めたのだろうか………
疑問は残るが会長から命令されたのでとりあえず資料を作成している。
しかしもう、七時前だ。そろそろ終えて会計を済ませなくてはいけない。俺は、立ち上がりレジまで向かった。
「はい、二百十円になりまぁ〜す」
レジで待ち構えていたのは、美月さんだ。
「なんで、私服なんですか?」
俺がそう尋ねたのも無理ない。だって、レジを打っているのは、私服姿の美月さんだからだ。
「え?なんでって………今日のシフトは七時までだからだよ……洸夜くんのレジを済ませたら帰ろうと思って……」
「そうなんですね………」
毎日決まったシフトじゃない美月さん。今日は、俺と同じ時間に出るらしい。
「ねぇねぇ、洸夜くんはこの後なにをするの?」
「この後は、一件用事とバイトですね……」
「へぇ……用事とバイトかぁ……忙しいね……」
「まあ、仕方ないですけどね……」
「じゃあ、途中まで一緒に行こうよ……」
「いいですけど……集合場所ここですよ?」
「え?………ここ?ここなの?」
「はい、七時にここですよ……」
「そうなんだ……じゃあ、急がないと!」
美月さんがそう言う。時計を見ると六時五十九分。
やばい!急がないと!
二百十円を美月さんに渡して、レシートをもらう。
その時に、七時を知らせるチャイムが鳴った。
「ごちそうさまでした……」
そう言って、喫茶店を出た。美月さんも一緒に出てくる。
外に出ると、そこには夏帆がいた。
「おう、待たせた……」
「あ、洸夜……また喫茶店なんだね……」
夏帆も走ってきたのだろうか……少し息が切れている。そうして、後ろの美月さんを見た。
「えっと……洸夜?説明して?」
さっきの微笑みとは程遠い、表情で俺に尋ねてくる夏帆。
「先輩だけど……」
「そうじゃなくて……なんで、その人がいるの?」
「どうしたの?洸夜くん。もしかしてこの女性が待ち合わせ相手?」
「え?そうですけど……」
「そうなんだ……へぇ…」
美月さんも夏帆を見ると表情が変わる。
「あの?この前、駅で見かけました。洸夜の先輩なんですよね?なんでこんなところに?」
夏帆が鋭い目つきで、美月さんに話しかける。
あれ?二人の表情がさっきからおかしい。
な、なに?やめて………
こんな駅前で隠キャメガネを挟んでこんな険悪な雰囲気やめて………
二人の雰囲気は最悪だ。これが修羅場って、やつか?
俺がそんなことを考えていると、美月さんが、
「え?洸夜くんに寄ってもらっただけだよ?彼はとってもいい人だから?」
「見た目、隠キャメガネですよ?こんなヤツがいい人なんですか?」
ちょ!ちょっと!西条さん?あれ?夏帆さん?
酷くない?自覚してるけど……それでも酷くない?
昔は全然傷つかなかったのに……心が抉り取られるような感覚がした。
「いいんだよ?だって洸夜くんは、見た目だけじゃなくて心も優しい人だもん……」
「み、見たんですか?……いつ?」
「それは、内緒。でも洸夜くんの寝顔は可愛かった」
「ぐぬぬぬぬ………」
夏帆が悔しそうに、歯ぎしりする。
な、なに?なにを争ってんの?
寝顔見て、比べて、どうするの?え?まさかの、脅迫材料?
い、いやよ!そんなことに使われてたまるもんですか!
警戒する俺だったがとりあえず事態の収拾を図る。
「ほら、なんで威嚇し合ってんのか、わかんないけど、とりあえず落ち着いて……」
「「君は黙って!!」」
押し返されました。
何故こんなことになっているのか、わからないがこれだけはわかる。
――修羅場は突然訪れる。
引き続きゆっくり執筆しますので、よろしくお願いします。




