ep.3 ギルドのルール
「アルたちはチームの勧誘に来ただけなのに、なんでこうなるんですかね先輩。」
「トオルもしつけぇな。なぁアル?」
「トールは優しいんだな!ありがと!うん、実は勧誘もなんだけどギルドの仕組みとか、それを教えてあげたいってソフィーが。」
「うん!トールさんとミチルさんに教えてあげたくて!」
燦燦とした金髪を可愛らしく揺らしながソフィーは自慢げに話す。
「まず、魔人と魔獣は知ってるよね?」
「邪神に力を与えられて魔人になって、その魔人が力を制御できなかった時に魔獣になるんだろ?」
「正解!ミチルさん!でも他にも特徴があるんだよ!」
「他にも?」
「魔人と魔獣だったら魔獣の方が力が強いでしょ?だったら魔獣の方が得じゃんって思うじゃ無い?」
「確かに。」
「魔人は人の姿に戻れるの!」
「そ、そうなのか?」
「うん!魔人は多分昼間は人の姿で生活して、夜に街に魔人となって現れるんだよ!人としての生活もあるから、勝てないハンターとかがいたら真っ先に逃げちゃうし、頭も正常だからなかなか捕まえにくいの。」
「でも、デメリットもあるんだぞ!」
「うん、デメリットはさっきも言ったみたいに魔獣に比べ力が劣るのと、昼間は魔人になれないの。」
「そうなのか?」
「うん。研究だと月の光を力にして魔人になってるんだって。」
「詳しいね。ソフィー。」
「いっぱい調べたから!で、魔獣についてだけど、魔獣のメリットは魔人から魔獣になる時に力の増加もだけど、月の光の力を溜めておける器官が作り出されるんだって。だから昼間でも凶暴な奴は動き回るんだ。」
「デメリットは?」
ソフィーは一言ためる。嫌な思い出を思い出したかのように重々しく吐き出す。
「人の姿には一生戻れない。完全な獣となるの。理性も精神も、完全な獣に。」
「なるほどな、どちらにせよ両方が人を襲うなら倒さなくちゃな。」
ミチル先輩は己の為すべきことを見つけて楽しそうだ。
僕はまだ魔人や魔獣を見てないせいか実感が湧かない。
「ギルドについてだけど、基本的にギルドには魔人捜査のクエストしかないの。」
「え?魔獣は?」
「魔獣は各々討伐して、ギルドに報告、報酬を受け取る形になってるんだ。たまに魔獣の共同討伐クエストがあるけど。」
「へぇー。初めて知った。」
「でね、魔人捜査のクエストなんだけど、まず魔人には一人一人ネームが付けられてるの。」
「ネームか。」
「私たちが今捜査してるのは『セカンド』とか『人形師』とか『ミス・トランク』とか・・・色々なネームがあるんだ。」
「いっぱいいるんだな。」
「最近の注目の三人だよ。まぁ注目されてはいたけどクエスト契約の料金は安かったからまだまだ未知数なんだ。」
「安い・・?高くなったり安くなったりするの?」
「正確には、だんだんと高くなっていくんだけど、まぁ最初から説明するね!最初に、殺人の現場の鑑定や場所、傾向から魔人か、そうではないか判断されて魔人と判断された場合、その特徴からネームがつけられるの。」
「ネームが付けられたばかりの、まだ情報の少ない魔人のクエスト契約は安いの。そこからクエスト契約したハンターが捜査し、情報をギルドに提出。あ、情報を小出しする度に捕獲報酬とは別に情報提供料が貰えるんだけど。」
「でね、情報が出て、捕獲できやすくなる度にクエスト料が高くなっていくの。後々契約する人は事前情報が多くて捕まえやすいからね。地道な努力を重んじるのがギルドだから。」
「基本的に高い料金のクエストは捜査が進んでいて、もうすぐ捕まえられそうで、捜査人数が多いクエスト。安い料金のクエストは捜査が進んでいなくて、捕まえるには程遠い情報、捜査人数は少なめのクエストだよ。」
「なるほどね、大体わかったよ。」
「えへへ、だから、戦えなくても特徴的な捜査スキルを持ってる人は結構重宝されるんだよトールさん。」
「僕、スキルの把握がまだ出来てなくて・・・。」
「そうじゃなくて、戦わなくてもきっとミチルさんの役に立てるよ!」
ソフィーは僕を励ましてくれる。ソフィーの優しさに胸を打たれる。
「でも、情報提供料でお金が貰えるなら虚偽の情報提供でお金を稼ぐやつとか出るんじゃないかな?」
「そこらへんは大丈夫!クエスト完了時の情報提供の正確さとか、頻度とか、チームだったり一人一人をギルド側が審査して評価してるの。貢献度に応じて今後の情報提供料なんかが変わってくるんだ。虚偽ばかりを提供してるといずれクエストすら受けれなくなっちゃうんだ。」
「そうなんだ。あ、でも魔人の捕獲に関してだけピカイチの人がいると、最初っから所構わず安いうちにクエスト契約をして情報が多くなった時だけに動くっていう裏技的な・・・。」
「そこも、一人、もしくは一チーム三つまでのクエスト契約しかできないから大丈夫!表向きは三つまでしか同時並行で操作するのは限界だろうって事になってるけど、そういった裏技防止もあるかもね。」
ギルドの仕組みは理解ができた。ソフィーに感謝すると嬉しそうに、自慢げに照れている。
「あたし達、今夜からセカンドの捜査をしようと思ってたんだけど、そこでトールさんやミチルさんとチームを組みたかったんだけどね。」
「俺が負けちゃったから。ごめんよソフィー。」
「ううん。大丈夫!これからトールさんもミチルさんもギルドに入るハンター仲間だから!話しておきたくて。」
「ソフィーは優しいなー。ミチルも見習えよなー!」
ポールは悪戯っ子のように笑って先輩を突く。
先輩はあまり気にしているように見えない。
「とにかくありがとうソフィー。チームは組めないけど、いろいろ教えてくれたお礼は忘れないよ。」
「ありがとなソフィー、アル。」
「チームが組めないならこれからライバルだなミチル!」
「負けねぇぞ?」
「俺だって次こそは負けないからな!」
ニシシとアルは元気そうに笑う。
「じゃ、俺たちは早速捜査を始めるから、またな!ミチル!」
「バイバイ、トールさん!」
「俺も暇だしついてくよー!」
そう言って、アル、ソフィー、ポールはまだ賑やかな通りへと帰っていった。