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共感性羞恥と問題児先輩の異世界生活  作者: 吉井あお
第1章
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ep.2 光の勇者と幼馴染

「いえーいトールにいちゃん繁盛してる?」

「ポール?と、君達は?」

「俺はアル!」

「あたしはソフィー!」


ポールが宿屋へ遊びに来たかと思えば、友達を連れてきたみたいだ。

アルと名乗った少年はまるで太陽のような眩しい笑顔の少年という言葉が似合う男の子に見える。

ソフィーと名乗った少女も笑顔が眩しく、元気が有り余っているように見えて顔つきは知的だ。

恐らく、年齢差自体はあまりないのだろうけれど、純粋という言葉が似合う二人に思わずたじろぐ。


「こんにちわ、アル、ソフィー。僕はトオルです。」

「こんにちわー!」

「トールさんこんにちわー!」

「トールにいちゃんハンターになるんだろ?だから、最近なったばかりだけどハンターの友達!連れてきた!」

「え!僕のために?ありがとう。」

「アルとソフィーだけじゃ不安だったからなぁ、にいちゃんも同じチームとか組んでくれたら安心だけど!」

「あー!ポール何さ!俺だってちゃんと魔獣を倒したりした事あるよ!」

「どーだかな?どうせソフィーが上手くフォローしてたんだろー?」

「ひっどいな!俺ちゃんとやってるよな?ソフィー。」

「あたしがいなきゃダメダメだけどねー!」

「もー!ソフィーまで!」


身振り手振りでコロコロと表情を変えるアル。それを見てソフィーやポールはクスクスと笑う。

仲のいい雰囲気にこちらまで笑顔になる。


「仲がいいんだね?」

「まーね!」

「アルとソフィーは幼馴染なんだ。おまけに、アルは無自覚だけどソフィーが・・・」

「何の話だよ!」


照れた様子はなく、本当に無自覚に不思議そうな顔をするアル。


「トールとあと一人いるんだろ?ハンターになる人!」

「あぁ、ミチル先輩?呼んでこようか?」

「うん!」

「トールさん、お願いします!」


二人にお願いされ、宿の中へ入っていく。

それにしても元気な子達だったなぁ。あんな子達を見ているとこちらまで嫌な気持ちが吹き飛びそうだ。

僕の中でアルとソフィーの好感度が勝手に上昇する。勝手にだが、先輩も好きそうなタイプの子達だと考える。

お願いされたものを果たすべく先輩を探す。

先輩はフロントでロバートさんと話している様子だ。


「ミチル先輩。」

「お?トオルか、どうした?」

「ポールが友達を連れてきて、その友達がどうやらハンターらしくって一緒に___」

「ハンター!?まじか!すぐいく!」


先輩は目にも止まらぬ速さで外へ駆けていく。ロバートさんは複雑そうな顔だ。


「魔人、魔獣退治なんて、別に君らが必ずしなければならない事でも無いだろう?」

「ミチル先輩は聞かないですよ。魔人で人が困っているなら放っては置けないタチみたいなので。」

「しょうがねぇな・・・。」


ロバートさんの口調や表情に悲しさが見える。触れてはダメな話題のようだ。


「僕も行きますね、先輩が変なことしないように見張ってきます。」

「ミチルくんはああ見えてしっかりしてるよ。」


ロバートさんのフォローを聞き、おかしくて笑ってしまう。

先輩は頼り甲斐はあるかもしてないがしっかりはしていない。そう思いながら僕もポールの元へと戻った。



「で、何ですかこの状況は。」


戻ってみれば、木刀を持ったアルとミチル先輩がお互いをまっすぐ見つめ、対峙していた。

聞けば、ハンターのチームを組もうと持ちかけたアルに大人気ない言い方で断ったらしい先輩。

拗ねたアルを挑発するように勝負を仕掛けたのが先輩らしい。


「『俺は誰の下にもつかない、ましてや自分より弱い奴にはな!』って。」

「年下相手に何大人気ないことを・・・今まで部活の助っ人なり何なりしてたじゃないですか・・・!」

「あれは俺を持ち上げてくれたし、ルールに関しては向こうの方が上の強い奴だったからな!」

「持ち上げられてた自覚あったんですか・・・。」


先輩は豪快に口を開けて笑う。その隙を狙ったアルは一気に先輩の元へ駆け込んで行く。


「ファイアソニック!」


アルがそう叫び木刀を振るう。斬撃は炎となり、先輩の方へ飛んでいく。

先輩は木刀でその飛んだ炎の斬撃を一刀両断、木刀の先がチリチリと少し焼けこげる。


「くそっ!」

「どうしたアル?俺はまだ一歩も動いていないぜ?」

「ファイアソニック!」

「うお、あっぶね!よく見ろよアル!」


今度は動き回りながら、四方八方から炎の斬撃を繰り出すアル。

先輩は木刀で斬撃を確実に切り、消していく。ポールや僕の横に炎の斬撃が飛び、熱くもヒヤヒヤしながら戦いをみる。

アルは一旦炎の斬撃を飛ばすのをやめると、直接木刀で斬りかかる。

大きな咆哮とともにミチル先輩の頭上にまっすぐ振り下ろされる木刀。

先輩はそれを木刀で受け止めると力任せにはらってしまった。

アルは木刀とともに飛ばされて地面に転がる。


「うわっ!」

「足は速いが、攻撃は軽いなアル。俺はお前に教わるものは何もなさそうだぜ。」

「っ、そんなことはないさ!」


アルは自信満々に蹲っていた体勢から顔を上げる。僕らが不思議に思っているとアルは先輩の木刀を指差す。

見れば、先輩の木刀は炎で焼け焦げたところに強い打撃が加わったせいか一部を残して不自然に曲がっていた。

まさか、ささくれた木の部分で攻撃だなんて道を外れたことを先輩はしないだろう。

先輩がプラプラと折れかけで揺れる木刀の先端を見ている間にアルは体勢を調える。


「もらったーっ!」


今度こそ、先輩の頭上に振り下ろされようとする木刀。

当る。と思った瞬間、先輩は体を屈めてその一撃を避け、アルの腹へ拳を突き出す。

アルはそのカウンターに吹っ飛ばされて地面に音を立てて転がる。

大きな咳、と何か吐き出すような苦しそうな息。

僕は血の気が引いた。


「な、ななななな、何やってるんですか・・・?」

「アルー!しっかりっ!」

「ミチル!まじで容赦ねぇぞ!」


ソフィーとポールは吐いているアルの元へ駆け寄る。

僕は先輩にドン引きの目を向けながら駆け寄る。


「こ、子供相手に、なんてことをっ!」

「年下だろうと関係ない、やるからには全力だぜ!」

「ぼ、木刀での勝負じゃなかったんですか!?武器がなくなったなら拳でって、不良じゃないんですよ!?」

「え、俺の地元ではそうだったんだが・・・。」

「いや、ほんと、ありえないっすよ、くそ先輩・・・!手加減ってものを覚えろよっ・・・!」

「おい、くそは無いだろう、くそは。あ、もしやトオルのスイッチに引っかかったか?」

「大勢のギャラリーがいたら引っかかってる所でしたけど、って、今はそんな話をしてないんですよ・・・!」


先輩の容赦の無さに怒りつつ、アルの様子を見にいく。

カウンターを腹に決められて、吐いていた割にはもう落ち着いたのかケロッとしている。


「大丈夫?」

「うん、平気だよトール!クッソー!ミチルのやつ!絶対勝てたと思ったのに!」

「でも惜しかったよアル!珍しく頭も使ってたしな!」

「珍しいってなんだよ!ミチル!もう一回だ!」

「おう!何度だって、っていたたたた!」


あんな一撃を貰っても怯むことなく笑顔のアル。

その笑顔に感激しつつ先輩に釘を刺すように視線で訴えれば、僕の視線なんかよりももっと背筋が凍るようなオーラを纏った人物が先輩の背後に現れる。

ニコニコと笑っているが、黒いオーラを纏ったアンナが先輩の肩に手を置いていた。


「ミチルくんは大人気ないですぅ。あんなに吹っ飛ばす必要はなかったと思うんですぅ?」

「わ、悪いな、でも手加減は本人の為にならな、い、たたたっ!」

「小さい子をいじめちゃだめですよぉ?」

「アンナさん・・・。」

「アンナ怖。」


アンナの形相に僕まで気圧されつつ、一先ずこの勝負はミチル先輩の勝利ということで幕を閉じた。


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