6弾 女子高生とギャル風女子とチンピラ男子
“歩兵が引き金引く時は必中させる思いを込めていない。狙撃となるとその1発1発の弾が運命に背負う”
だから準備を整える。弾を多量に減る必要がない。カップルは最早カップル同士風には見えなくなっていた。この近くの住宅街での40代の夫婦同士の喧嘩と重ね合っていた。しかしただの喧嘩よりも一致しない。男がポケットに手探っていたのは恐らく仕損じた時の隠し玉だろう。斎藤の持っていたナイフだ。形状で言えばサバイバルナイフ。好きで選んだ訳ではないかと、黒美は彼の奥底に目を伺える。銃が手に入らない日本だから。理由はそれだけだとしか断定できない。殺意込めた日本人の主力武装と言ったらまず接近戦か。
自分の本銃を見せたら、相手は自分の価値に嫌にも目を配るじゃないかな。そしてナイフを落とす。
男は右手に掴み出す。少女は蛇の睨まれた蛙みたいに身動きが取れなくなっていた。論戦では通用できない(相手は頭悪いから)。
男は右腕をふわりと振り上げる。顔が憤怒と悔恨、悲しげが一同となった表情になる瞬間がスコープからはっきり映っていた。男は左斜めにこちら向いていた。棒の先を男の肩と同じ高さ。胸の真ん中辺りに重ね合わせる。
ヒューと微かな呼吸を繰り返す。
息を僅かな量で吸う。人差し指の腹を引き金に付けた。
一気に引かず、絞るようにそっと絞る。引いた際に銃が動かないよう、コインを銃身に乗せて練習を繰り返してきた。
男が飛び交うモモンガのように両腕、両脚を広げる姿勢を出す。
人差し指がそっと引き金を絞った。
人生初めての実弾。そして人生初めての命の奪った瞬間。閃光が男の胸の中に吸い込まれいく。電撃を喰らったような痛撃を受ける。よし…いや…まだ早い。
前から押し付けられ、後ろへ転倒する。夜空を見上げてガーガーと口から息と血を吐き出した。何が起こったのか。何をされたのか。自業自得だと相当理解していないのは目の開きだった。
電気で動く人形の顎と等しくガクガクと口を揺らした。
瞳が目の前の彼女に合わさる。彼女も合わせていた。
血など見慣れていない彼女は凍りついた。こうなると予想しておきながら、ホラー映画などのグロテスクなシーンが生を見て実感すれば震えが止まらなかった。しかし相当毛嫌ってたのだろう。人の死に様を微笑んでいる。この女もどこか常識が欠いているのだろう。
「はは‥ざまーみろー」
そう言わなくても分かる。今は魔王様となってしまったようだ。ビッチじゃない…