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湖畔の私へ  作者: 炬燵猫
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東の森へ

書いてあった地図が行方不明(;A;)


 台所ではミリィアさんが炊飯の真っ最中だった。ご飯炊くのも大変なんだよねー。

 あ、扇ぐのやりますよ。カイくんが。


 いや、火の前ってマジでヤバいんだよ。当たり前だけど熱いからね。


「5人 出掛ける、する。持つ 行く ご飯下さい」


「お出掛けですね。うけたまわりました」


 ティネットさん。何かお手伝いすることはありませんか? お、いい匂いの元はこの煮物でですね。え、お邪魔ですか? 何かお手伝いが出来たらと······。


 どうやら台所にも私達の居場所は無いらしかった。それでも取り縋る私に、お弁当用の葉っぱの採取が命じられた。正直、葉っぱの説明はほぼ理解出来なかったけど、カイくんが力強く頷いてくれたのでお任せしよう。


「ユウナ、こっち」


「わかった」


 体良く追い払われた気もしなくもないけど、きっちり仕事をしよう。食べ物を包む物だしね。

 日本だと朴葉ほうばの葉とかになるのかな。竹の葉でもいいよね。


 カイくんの後について歩くこと15秒。私達は早々に目的地に到着した。うん、庭の縁だね。火照った体に風が気持ちいい。


 木々が風に揺れる音って不思議だ。怖い時は凄く怖いのに、普段は心落ち着く音色。その風に揺れる、花芯かしんの黄色い白い花。連なって咲、揺れるその花は爽やかでありながら甘い芳香を放っている。


 まさかこれ? 確かに葉は大振りで、細長いから包みやすそうではある。いい匂いなんだけど、食欲は減退しそうなんだけど······。


「おにぎり 包む これ?」


「腐る しにくい 葉っぱ。これは昔から食べ物を包むのに使われているサンの葉だ。怪我した時にもこの葉を巻くぞ」


 殺菌効果とかあるのかもしれない。この匂いは花の匂いだろうし、決して食欲減退効果は無いはずだ。


 腰に刺した小刀を抜いて良さそうな葉を収穫していくカイくんに、見守る私。

 あ、葉っぱお持ちしますね。破れたら困るんで!


 無事葉っぱをゲットして早々に台所に戻る。


 葉っぱ取ってきました。

 あ、布巾でちゃんと拭いておきますね。手を洗ってカイくんが選別した葉を、固く絞った布巾で丁寧に拭いていく。食べ物を包む物だからね!


 ふぁー、ご飯の炊けるいい匂い。ヨダレが出る。


 +ふたりって誰の分だろ。行く人のいる人以外って事は、ワラドくんとアミルくんかな。山守のシフトは大丈夫か? あ、ワラドくんは東の守なのか。


 おにぎり、何味にする? この葉っぱ使うの? 塩漬けだね。包むのやらせて頂きます! ミリィアさんが綺麗に握った三角おにぎりを薄い塩漬け葉っぱで包む。綺麗に包むのが意外に難しいな。9個作ればいいよね。どうせなら居残り組もおにぎりが良いだろうし。

 もう一個は味噌焼きですか。ここの味噌、美味しいんだよねー。お昼までまだあるのにお腹すいて来ちゃった。

 大きな葉っぱで2種類のおにぎりを包み、ざるに上げて置いた煮物は大きめの竹筒へ。


 5人分のお弁当って嵩張るね。これに+竹筒か。


 お盆に並べたおにぎりと大きな竹筒1つ。


 あ、お水持っていくよね。え、自前の竹筒で? 私無いよ。

 これ使っていいの? これがボスのやつね。お茶ですか、ありがとうございます。


 お盆に並べたおにぎりと大きな竹筒1つ。


 竹筒にお茶を注ぎ終わったカイくんと見つめ合う。


 ここ迄だ、大人しく戻ろう。


 頷きあって母屋に戻った私たちの耳に、討論する声が聞こえた。


「 皆 のど乾いた。お茶 いる」


 私としたことが、お茶淹れるの忘れてたよ。ね、カイくん! 水から沸かさないとね。




 ◇◆◇



 村の門の影から見送るみうを抱いたフィナちゃんの視線を感じながら、いざ出発。目の前には一面に広がる田園風景。5人と2匹でテクテクと畦道あぜみちを歩く。


 空ちゃんはボスの肩の上だし、ハルちゃんは見当たらない。

 何時も出っぱなしのエルちゃんとチビがそれぞれ主人の横をフンフンしながら歩いている。エルちゃんの足、ちょこまか動いてて忙しそう。足が短いから仕方ないね。見てるだけで疲れてくるけど、本人は至って平気そうだし。


 カイくんと先をくボスがおもむろに立ち止まった。

 なんの変化も見えない道半ばで立ち止まった事に疑問を感じ得ない。


「ユウナ、ここから先、十分気を付けて歩く様に」


 名指しで注意された。


 前も後ろも大して変わりない田んぼに見えるけど、何かあるの? よく見ると向こう側の方が手入れが行き届いて無い感じはするけど、それぐらいだよね。


 そう思ってたのに、1歩足を踏み出したらムワッとした空気に驚いた。色んな音がして、空気にも雑味がある感じ。


「不思議そうな顔をしているな。ティム様の御池を出た時の方がよっぽど凄かっただろうに」


 池を出た時? ボスが日々お勤めをしているのは知ってたけど、上の神社だけの話じゃなくて、やっぱりあの池も神聖な場所だったんだね。神秘的な感じしたもの。

 寺子屋でもあのお山の神社と池の話は習ったんだけど、子供相手の話とはいえ、日常会話には出てこない単語が多すぎてさっぱりだったんだよね······。


 でも あの時は遭難ショックでそれどころじゃなかったかも。今のはほんとに不思議。

 ほら、あれだよあれ。神社とか、森林とかに足を踏み入れた時に突然空気が清涼でビックリすることあるでしょ。あれの逆。

 町が結界に守られてるみたいな事は知ってたけど、さかいはこんな中途半端な田圃たんぼなの?


「結界 ここ まで? 町、結界?」


「町の結界は3段階に別れておる。大領の邸宅や東のお宮がある辺りのアライラモン·ミークロック、町全体を囲むハージヴゥン、そしてその周りの田畑アークィヴァラ·ハージ」


 怖いぐらい分からん。


「結界、別れる 3つ」


 真顔の私を見てカイくんが端的に教えてくれた。


「ここ アークヴァラ·バージの終わり」


 ありがとうカイくん。さも分かったように頷いておく。


 ボスが私の様子をじっと伺っている。どうしたの? もう平気だよ。


「その様子では平気そうだな。進もう」


 その後、各々《おのおの》荷物を持った私達は何事もなくあっさりと東の森へ足を踏み入れた。


 まぁ、畦道の後草原を抜けたらすぐだしね。案内付きの山を堪能出来るなんて楽しみ! あ、魔物も居るんだっけ。




読んでくれてありがとうございます!

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