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湖畔の私へ  作者: 炬燵猫
54/55

相談2

ノートが見つからないよ!

 


 えーっと······何してるんですかね。フィナちゃんには愛しい男に傷をつけて喜ぶ性癖が?


 大荷物を持った私が固まっているのに気がついたフィナちゃんが、何も無かったかのように「あ、用意出来ましたか? 私からも持って行って貰いたい物があるのです」っと立ち上がった。


「検証に必要な物なので、これをよろしくお願いします。太史様には絶対に触らせないように。ほんとならユウナに触らせるのも不安なのですが、太史様がユウナなら大丈夫だと太鼓判を押されたので、お任せします」


 軽めのリストカット現場を見て動揺する私に、何か軽いものが包まれた風呂敷が重々しく手渡される。


「太史様、これ触る ダメ」


 うん? よく分からないけど、ボスに触らせ無きゃいいんだね。


「サヒラー様、触るダメ。分かった」


「本当は私も一緒に行きたいのですが·····」


 不安そうに胸に手を当てるフィナちゃん。


 いや、それはやめた方がいい。私とフィナちゃんでは世界が受けるダメージが違うと思うんだ。男性陣の為にもこの私が身を切って検証して参ります!


「大丈夫、フィナ待つ」


 小さな柔らかな手に手を添えて力強く頷いた。

 フィナちゃんの問題。気になるけどここで聞くより中で聞いた方が万倍早いから、今は我慢しておくよ。何も分かってないけど、中でちゃんと検証してくるからね。

 じゃ、 行ってくるよ!


「ちょっと待て、どこに行くのだ?」


 手を握りあって熱く見つめ合い、荷物を背負っていざ参らんと動きかけた私にボスが問いかけた。


「木の影······庭?」


 木の影なら良いって言ってたよね?


「いや、この際だ東の森へ行こう。金玉達が現実でどれほど戦えるのかも見たい。だがその前に確かめたいことがある」


「森 分かった」


 うんで、確かめたいこととはなんですか?


「その背のものを下ろして座ってくれ。見てるだけで疲れてくるぞ」


 あ、ザックね。でっかいからあれもこれと入れてたら膨れちゃっただけで、そう重くないんだよ。デザイン工学って素晴らしいね。

 此方へと椅子を勧められたので、大人しくザックを下ろして座る。


「ユウナ、フィナを良く見てくれ。何も見えぬか?」


 座り直したフィナちゃんを見つめる。うん、今日もうるわしい。


「フィナ キレイ」


「ありがとうございます?」

「そういう事ではなく」


 全身を見つめる。


「······髪 切った?」


「毛先だけですが、分かります?」

「ほう·······」


 以上! 美しいかんばせ以外何も見えない。


「では、これをじっと見つめてくれ」


 っと渡されたのは切り絵っぽい何か。

 昔流行った見つめると3Dに浮き出て見えてくるのの雑なやつって感じ。真ん中辺を見たらいいのかな? じーっと見る。

 

 おぉ、見える。紙からメラメラオーラっぽいものが出て来てるのが分かる。


 様子を伺っていたボスがサッと切り絵の紙の上にもう1枚薄い紙を載せた。

 すると目立っていた赤っぽい荒い波が消えて、小さな光がそこかしこに見えた。

 不確かに揺らめいていた光が安定して見えるようになった頃、ボスからお声が掛かった。


「ゆっくりフィナを見るのだ」


 目を上げるとライトが当たってるみたいに輝くフィナちゃんが居る。なんか美しすぎてかすみかがって見えるよ······。

 キラキラしつつモヤモヤしてる。


 ····ん?


『って、いる。すっごい細かいのが沢山いる!』


 でもこれ小さすぎるよ。5ミリぐらいの何かがフィナちゃんの周りにわっさーって動いてる。


「見えたか?」


「小さい 小さい 沢山 」


 透けてるけどうっすら青い。沢山いるけど、空間あたりの密度はそう無いかな。


 お、小さすぎてイマイチ分からないけど触れてるみたいに移動させる事は出来る。水の中で細かいゼリー動かすみたいな感じで、触れてないのに動いてるって感覚。


「ユウナ······。座ってください」


 あ、はい。

 決してセクハラしてた訳では無いのです。触れてはなかったから!

 我に返ってフィナちゃんを見ると、キラキラは見えなくなった。


「今見えたものは北西にある御嶽うたきの地祇の眷属だ。フィナがこの地に居るのは、居なければならないのは、地祇に魅入られたからなのだ」


「太史様! 私はこの家に居られるのが嬉しいのです。居なければだなんて、そんな言われ方をするのは不本意です」


 淡々と話すボスに感情もあらわに反論するフィナちゃん。


「本来ならそなたは中央インブラードの大学へ行けたのだぞ」


「 わざわざ冊子を取り寄せて、教えて頂いています。こんな有難いことはありません」


 ボスがため息を吐いた口を覆いながら続ける。


中央インブラードで得られるものは知識だけではない。同世代の学友、様々なつてに後ろ盾。······そなたなら何処の巫女にでもなれたであろうに」


「そのような事望んではおりません!」


 ちょ、喧嘩しないで下さいよ。フィナちゃん落ち着いて。ボスはフィナちゃんが心配なんだよ。多分。


 うん、私は全然分からないよ? わからない単語が出まくってるからね。お手上げだよ。

 フィナちゃんの事でなんか意見が割れてるな位にしかしか分からない。やっぱりその話をするのは影の中に入ってからじゃないと難しいんじゃないのかな~。


 あ、でもそう言えば影から出てきてからラティファと話せてたじゃん。ラティファ達は元々聞き取れては居るみたいだけどさ。

 テーブルででも皆も小さくしてもらえば話が通じる? 真の卓上会議が開けるわけですね。試してみなくては。


「戻りました。太史様、もうお帰りになられていたのですね」


「おかえり」


 タイミング悪く帰ってきたカイくんの腕を取り、反対の椅子に座らせる。被弾したくないから今は放っておこうね。


 あー、なんかいい匂いがし始めたよ。まだ早いけど、これお昼の準備始めちゃってるよね。森に行くならお弁当にしてもらった方がいいか。


 オロオロするカイくんその場に残し、台所へ避難しようとした私にボスが「弁当なら二人分追加してもらってくれ」っとのたまった。


「太史様、聞いているのですか! 私が不満なのはそういう事ではなく本家の···「分かった もらう」」


 ごめんねフィナちゃん、そんな目で見たってご褒美でしかありませんよ。


 ヒートアップするくむくむを背に台所に向かう私に追従ついじゅうするカイくん。


 しょうがない、一緒におにぎりでも握ろうね。




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