表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
湖畔の私へ  作者: 炬燵猫
53/55

再び

夏から放置してしまっていたこのお話を、読み返しつつ描き始めたいと思います。週一ペースになるかもしれませんが、再びよろしくお願いします(/ω\)

 

 結論から言えば、ボスは意外にも早く戻って来た。約束の30分より早く帰ってくるなんてと、逆に心配になった程だ。

 カイくんへの返事も「留意りゅういする」だったから、ああ、コイツ絶対30分じゃ帰ってこない、良くて1時間だなと思っていたのに。


「太史様、おかえりなさいませ」


「お、おかえりなさい」


 なんだかんだ言いつつ信じてなかったと思われるカイくんは、長丁場に備える為鍛錬場に荷物を取りに行ってしまった。


「ユウナ、金霊達は素晴らしいな! 性格も全く違うから良い相談相手になる。戦闘も中々のものだったぞ」


 椅子に座るのも待ちきれずと言う感じで話し始めるサヒラー様にサッとお茶を出すミリィアさん。


 そうでしょ? 皆、中々の強者ぞろいですよ。色んな意味で。

 でも、カイくんと違ってボスは私の影に入ったでしょ? 黒いやつはもう全部マロになったんだよね。


「黒いの、居ない。敵、何?」


「色々な種類が居たぞ、前が黒い敵しか出なかったというのが不思議だな。小動物が多かった。襲っては来なかったか人型も確認したぞ」


 人デスとな、巨人なのかな?

 だってネズミで大型犬よりデカかったよ。人ってすごいサイズになりそうじゃない?

 ボスは興奮した様子で立ち上がり、唾を飛ばして話し始めた。


「驚いたことに、私が背に乗れる程ソラが大きくなったのだ。小さくて愛らしいと思って居ったのだが、大きなソラも事の他可愛らしくての。体のモフモフ具合に対して手足のちんまい事よ!」


「勉強、出来る、そう?」


 変なスイッチが入ったのを感じた私は失礼を承知で言葉を割り込ませた。そのまま聞いてたら、ソラちゃんの可愛いところ50選を聞かされてしまう。


「比較的安全そうな場所に、教室を作っておいた。敵襲がある様な所で閉鎖空間は恐ろしいので青空教室だが、黒板と机は用意した。夕飯後に授業を行う」


 てか、あの空間って固定なの? ボスが作ってきた教室とやらは次はいる時もあるんだろうか。


 なんにしろ、あんなに話せるパールパーティが現実ではワンワンブーン言ってるだけっていうのは辛いから、筆談覚えてくれたらありがたいよね。こっちは話せば分かってくれると言う手軽さだし。イヤー筆談(向こうだけ)って素晴らしいわー。


 って、待って。私の勉強間に合うのか? 皆が書いてくれても私だけ読めないとか悲し過ぎる。出来ることならパールパーティと共に授業を受けたい。さっきキャパオーバー的な事を言ってたけど何とかならないものかな。

 だって、400倍の時間差があるんだよ。ボスがこの調子で潜ってたら絶対パールパーティの方がすぐ覚えちゃうって!


「私も 文字 勉強する したい。いっしょ 授業 受けたい」


 泰然と腕を組んだボスが頷いて口を開いた。


「そういうかと思って、出来るのかを訊ねたのだが人ひとりの影では無理だそうだ」


 くっ、やっぱり無理なのか。ってか、ふんぞり返って紡いだ言葉がそれですか。


「それで私は聞き返したのだ、ならば2人ならどうなのだと」


 おお、何と単純な疑問。確かにそうだね、重ねた影に入るなら2人でも行けるんだね。影の中の世界も混ざり合うのかな? 

 流石ボス、どっちにしろ私も青空教室に行くよ!


「分からぬと言われた」


 分からんのかい!


「では、これから検証するのですか? 危険ではないのでしょうか······」

「私いく 授業うける」


 驚いた様子で私を見たフィナちゃんが耳打ちしてきた。


「老けるか様子を見ると言ってましたよね? 太史には問題ないでしょうが、年頃のユウナには大問題なのではないですか?」

「言葉 勉強する。かく勉強する 大事!」


 今ですら何となく分かるよって感じになったけど、まだまだリスニングすら怪しい。スルーしてる単語が3割ぐらいあるんですけど。


 確かに400倍早く老けるとか恐ろしいけど、短期間なら大丈夫。幸い私には見極める秘策があるのだ!

 ここに見えるはマロの腹から飛び出した時に出来たかすり傷。この程度の軽い擦り傷のかさぶたなら三、四日で剥がれるはず。余裕をみても2時間篭れば判断がつくはずだ。


 置いていかれる焦燥感に駆られながら延々ボスの小じわチェックするよりはいいと思う。


「これ見て」

「擦り傷ですね」

「これ、治るかためす。時間たつ 一刻 経てば治る。たたない、治らない。私、試す」

「なるほど、確かに分かりやすいですね。よろしくお願いします」

「はい!」


 2時間も居れば5日は経ったって事だし、これぐらいの傷なら治らない迄も目に見えて快方するでしょ!


「ああ、重ねた影に入るとどうなるのかは分からぬが、木々の影なら間違いなく入れるそうだ。何人だろうと入れそうなそれは巨大な空間らしいぞ」


 あ、そうなの? 行くけどさ、それはそれで怖くないですか?


「勉強するなら準備して来るといい。私は少しフィナと話すことがあるのでな」


「分かった」


 私は聞かない方がいい話かな? お部屋でノートでも漁ってますか。


 って、普通に話し始めてるし。何だか知らない単語が多くて意味が分からなかったけどさ。

 そこまで隠したいわけじゃないけど、説明が面倒or私の語学力的に理解不能って事かな? &なのかもしれないね。




 長丁場を覚悟して十分に準備を整えて戻ってきた私を待っていたのは、目を輝かせてソラソラ鳴く40近いオッサンと、慈愛の笑みを浮かべながらボスの腕に傷を付けている恐ろしい少女だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ