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湖畔の私へ  作者: 炬燵猫
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ノンノン

みうはどこ?!

 

 大きな壁を超えた私の集中力は凄まじく、室内には奥様が指させるものがなくなってきた。復習がてら、物を答えるテストが始まった。

 椅子を指され「コル」湯呑みを指され「ミラル」飲む動作で「シャラボン」奥様は感動したように胸に手を当てた。


 私だって膀胱に余裕があればこれぐらい覚えれるのですよ! すぐ忘れるけどね。

 うーん、紙に書きたい。でも紙ってお高いんでしょ?


 人体シリーズに手を出される前に何とかしなくては。


 私はおもむろにたちあがり、さっとザックから小包装のチョコレートと飴を出した。さっきかりんとう食べたからクッキーは重いしね。


「チョコレート、飴」指さしながら説明する。奥様は飴の袋をパキパキプリプリ鳴らして不思議そうにしている。あーそっか、くむくむ星では袋自体がオーパーツなのかも。


 飴は5個あるので、目の前で1個空けてなかをみせる。改めて見ると飴って綺麗かも。パウダーが付いていないタイプのフルーツキャンディ。これは、パイナップル。奥様に見せたあと、口に入れる。


 知識なくて石に見えてるかもしれないし、毒味してあげないとね。顎をガンガン動かして両手でバツを作り、舌でベロベロしてみせる。

 これで歯を割ったりはしないよね。


  奥様は袋を開けようとして、見事にビニールを伸ばしてしまっていた。奥様、ちょっと貸してね、伸びちゃうとそこからはなかなか開かないんだよね。


 目の前で、ギザギザの下に爪を当てて固定し、もう一方の爪を当ててゆっくり裂くように開けてみせる。子供とかもなかなか開けれないもんね。わくわく顔の奥様に袋を手渡す。


 袋から飴を取り出した奥様は、掃き出し窓に向けて飴を掲げた。キラキラ、キラキラ、紫の光。うん、ブドウだね。


 ゆっくり飴を口に入れた奥様は、くわっと目を見開いた。ちょっと怖かった。あれは錯覚だったのかな? っと言う速さで、和み顔になった奥様は頬に片手をあてて「ハぃふゥ、ハぃふゥ」と繰り返す。甘いってことかな、はいふぅ。


「くむくむ、くーむ」


 お手伝いさんかな? 奥様を呼んでいる。奥様は頷いて、手を伸ばし何かを掴んであーんと、口に入れる動作をしてから「クムアルズゥン」っと言ってから、お手伝いさんにくむくむして出て行った。


 ご飯って意味だよね。ご飯の準備をしにいったんだね。お手伝いさんがくーむくーむ言いながら手を差し出して廊下側に動かした。


 どこに連れていかれるのかな? 飴とチョコはお礼のつもりだったし、このまま置いておこう。ザックは持っていきますとも。


 お手伝いさんに案内されたのはお部屋だった。客間だよね。窓際に文机(多分)があって、横にベットがある。初めの間に敷いてあった御座もどきが貼られた上に、布団を引いた感じ。


 何だか、外から見た感じよりよっぽど文明的な生活をされてますよね?


 お手伝いさんはくむくむ言って荷物を下ろさせると、立ち去った。

 これは、泊めてくれるってことだよね。ありがたい。


 ベットに腰掛けた私がくむくむ星の神に祈りを捧げていると、カイがやって来てちょいちょい手招きした。くむくむ会議が終わったのですね。はい、行きますよ。




 広間へ戻ると、ジュノィが渋い顔をして柔軟体操をしていた。長時間あぐらかいてると腰とか背中辛いんだよね。わかるわかる。


 おっさんの姿はない。


 ジュノィ村長、おっさんになんか難問吹っかけられたの? おっさん最後に見た時は真如しんにょを悟ったよう顔してたのに、ちゃっかり仕事はするんだね。


 座布団に座るとジュノィが重々しく切り出した。


「ゆうな、くーむくーむくむくむんくむくむてぃん。くむくむく、むくむくーむくさひらーんくんじぃろむ」


 あ、はい。分かりません。


 カイがスっと立ち上がると、ジュノィの横に来て両手を上にあげて三角を作るとしゃがんだ。しゃがんでるけど、大きな栗の栗のポーズだよね?


 ジュノィが私を指して「ユウナ」と言いながらカイを指して「サヒラーんマンジィr」っと言ってから私を見る。

 おっさんのお家ってこと?


「サヒラーんマンジィる」私が繰り返すのを聞いてから、もう一度「サヒラーんマンジィr」と言い「ユウナ」私を指さし、カイの元に大げさに足を上げて歩いてしゃがんだ。そして、ゴロンと横になって寝た。




 いやいやいやいやいや、ちょと待てちょっと待て村長さん。おっさんこの前めちゃ怒ってたやん? 私になんか文句言ってたよね? ここに泊めてくれるんでしょ?


 私が唖然としていると、カイが小さな文机を出してきて筆ペンみたいな物で(墨つけてなかったし)紙に字を書いた。

 ジュノィがカイの書いた文字を丸とかバツとかつけて添削して、やり直させる。書き直した紙に、大きな丸を書いてヨシヨシとカイの頭を笑顔で撫でた。


 ドヤ顔で私の事を見詰めるジュノィ。


 いやいやいやいやいや、言葉を教えて貰えるのは大変ありがたいよ? 文字も教えて貰えたら、勉強も捗るよね。


 でも悪の魔道士は勘弁してください! あいつ絶対危険な研究とかしてるから! だからあんなにクマできてたんでんでしょ?! 無理! ノンノン!


 青い顔をして、小刻みに顔を振る私の肩に、ポンと手が掛けられる。


 カイが優しいほほ笑みを浮かべて「くむくむ、くーむサヒラーんマンジィr。サハ ロゥンくむ、くーむくーむくむくむんくむくむてぃん」と語りかけ、うんうん頷いた。




 いや、分かるカぃ。




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