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湖畔の私へ  作者: 炬燵猫
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黒犬

もうホントにギリギリ(ノω`)


 黒犬はスリムな体に、黒いねっとりとした液体を纏っていた。ピンと立った耳と長い鼻に、紅い瞳。

 のっそりと現れたその犬は、辺りを睥睨した。

 ちょ、イシャルあっちに居るって言わなかった? 後ろから来とるやんけ。


 距離はまだあったのに、振り返ったまま動けなかった。これに背を向けろって? 無理。


 異様な気配を放つ犬、何で此奴に気が付かなかったの? 漫画ならゴゴゴゴゴ……ってうねうね瘴気描かれてるレベルだよ。


 ラティファが震える手で私の手を取ると、後退りする。犬がゆっくりこっちを見た。

 燃えるような、けれど静かな紅い瞳が私を見つける。


 黒い体が膨らみ、強い風が吹いたように犬の体が波打った。


「夕菜!」


 ラティファが強く手を引き、体勢を崩しながらも私を引き倒す。刹那、私の立っていた場所から黒い水柱が立ち上がり、トプンと消えた。


挑発プロボーキ


 ネズミを相手にしながらも、移動してきたラドが黒犬を挑発する。

 立ち上がったラティファが私を引っ張ってラドの後ろ移動した。

 何あれ? 地面から出てきたけど……。


「ありがとうラティファ。急いでネズミ倒そう」


「しっかりしてよ、危うく呑み込まれるとこだったし」


 ローブをはたきながらラティファ。いや、本当助かったよ。固まっちゃって、全然動けなかった。

 ラドがフーリーを唱えた隙に距離をとる。


「集注! 乱れ打ち!」


「削り取れ、 ストームグラベル!」


 乱れ打ちで半分削られたネズミは石礫入の竜巻で色々削り取られて消えていった。エグい……。

 イシャルは普通にしてるので、矢と違って魔法は味方には当たらないんだね。さすが私の影の世界。


 増援呼ばれなくて良かったー。

 ネズミ×3ですら危ないのに、ボス+とか絶対無理。

 その黒犬はラドを殴るでもなく、此方の様子を伺っていた。即攻撃して来たは何だったん。


「夕菜、名前を付けれそう?」


「あれに?」


 いや、覚えてはいるけどさ。あれに? あれだよ?

 体高(キ甲までの高さ)ですらウチらの3倍近くあって、黒々とした怪しげな液体をまとったアイツですよ。

 大体、名前を付けたら通じ合うとか意味がわからないし。


「無理」


「なら。此奴を力尽くで倒して、散ってる雑魚を延々潰してくしかないの……。そっちも無理そう」


 こっちを見ていた黒犬が、ラドに視線を落とした。本気で二階建ての家位あるから、どうやって止めるのか想像もつかない。


「攻撃しても良いのかな……」


 明らかに強い奴が折角何もしてこないというのに、殴りつけるのは中々恐ろしい。タコ殴りにされるのが目に見えてるからね。


 こ、交渉の余地があるなら聞いてあげても良いのよ?


 此方の心を読んだ訳では無いだろうけど、黒犬はフンっと鼻を鳴らすと、ラドに前足を叩きつけた。


 盾を両手で構えたラドが、中心から少しずらした位置で足を受け止める。光がまたたいて衝撃を軽減し、湾曲した盾に沿って足が流れた。


 ゲームと違って、盾で止めてるのにダメージ入るとかは無いようで安心した。

 都合の所だけ取り入れていれば良いのです。


 黒犬の攻撃を受けて、皆が一斉に動き始めた。一通り弱体にの札を放つイシャルに、慎重に初級っぽい魔法を打つラティファ。

 ムスターファは散らばった矢を回収しながら矢を射ている。


「ラドに穏やかな癒しを、回天! 皆に魚眼石の光を、精神の癒し!」


 うわー、奴のHP全然減らないね。この減り方だと1時間かかるんじゃ……。


 黒犬が首を振って、ペッと黒い唾を吐く。地面にタールの様年度のある黒い水溜まりが出来た。


 ラドは体格的に左足の下に居るだけなので、後ろに居るのも不安だ。何時もと違って堰き止めてる感が無いんだよね。


「皆に加速の加護を、亢進!」


 付与していると、目の前に黒い唾が飛んできた。あっぶな!


 イシャルも何時もと違って右足の下にポジショニングして殴り初めている。


 長い戦いになりそうだ………。

 障壁も掛け直そうっと思ったその時、水溜まりから大口を開けた黒犬の顔が私に向かって飛び出してきた。



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