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湖畔の私へ  作者: 炬燵猫
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お手伝いさん

 

「ねこ!」


「いぬ!」


『 ちょっとスタイルの良くなった猪!』


 今日はセグさんが薄い板に書いてくれたカードでお勉強。元々はフィナちゃんが描いてくれたんだけど、画伯過ぎてね……

 セグさんって、設計図書いた時も思ったけど、絵が上手なんだよね。

 3枚目が謎生物だけど、なんだろ?足が長くて、首が生えたイノシシみたいな体型のずんぐりとした……でも、鼻は普通の鼻だしな。


「ヴァディー」


「ヴぁでー」


「ヴァディー」


「ヴァディー」


 うん、と頷くフィナちゃん。


「ヴァディーは草、食べる」


 なるほど、この子は草食動物なんですね。



 ワラドくんのお家で、チビを出してから三日目。この三日でのインプット量は中々すごいと思う。絵による学習の効果だ。いやー、やっぱりパントマイムとは一瞬で入ってくる情報量が違うんだよね。絵の下には、読めないけど一応フィナちゃんに文字も書いてもらっている。


 五十音みたいな表は貰ってあるんだけど、並べた時の変化の仕方がさっぱりわからない。何でこんなに和風なのに、言葉だけはこんなに違うの?神様は意地悪です。


「皆さま、食事の用意が出来ました」


 了解です。この言葉は、テンプレで覚えたよ。


 遠慮がちに引き戸の外から声をかけたのは、なんとワラドくんのお母さんのミリィアさんだ。ミリィアさんは黒髪に小麦色の肌をした優しそうな女性だった。その細い腰で子供を三人も産めたのですか?



 あの日、ワラドくんのうちから帰って暫くすると、奥様がきっちりと着物を着こなした女の人を従えていらっしゃった。


 目を付けていた女中さんを早速連れて来たらしい。異議があるはずも無く、宜しくお願いしますと挨拶をした。

 エルティネット·ファフィジさん。エルだとウリ坊(エル)ちゃんと被ぶるから、ティネットさんと呼ばせて貰うことにした。黒髪をしっかりと結っていて、スッキリとした和風美人って感じ。ティネットさんはまだ二十歳そこそこに見える。


 サヒラーさんに何やら報告していたカイくんが、奥様とティネットさんにくむくむとくむ説し始めた。


 何を話してるのかな?っと思っていたけど、その時に、ワラドくんのお母さんを売り込んでいたらしい。お陰で、勉強時間が倍倍倍増しました。


 フィナちゃんだって、本当は専門の勉強をしたいだろうに、しっかりと教えてくれる。ありがたくて泣いてしまいそうです。


「ありがとうございます」


 フィナちゃんとミリィアさんにお礼を言って、私は台所へ向かう。


 奥様が、囲炉の部屋の直ぐ奥の部屋をダイニングルームに模様替して下さったから、フィナちゃんとサヒラーさんはそこで食べていた。だけど、私はアミルくんがデレた日から、アミルくんとご飯を食べてる。


 だって、カイくんも居なくなって小屋で一人飯って寂しそうじゃない?でも、それも今日まで、明日にはアミルくんも退院?出来る予定なのだ。


 台所でティネットさんから受け取ったお盆を持って、小屋へ向かう。

 コンコン、お昼ご飯出来ましたよー。戸を開けてくれたアミルくんに挨拶して、持ち込んだ小さな丸テーブルにお盆を置く。


 テーブルの横には、既に二匹が待機して居た。

 お盆に載せてきた、二匹用の餌皿を目の前に置いてあげる。みうは鳥を茹でて裂いたやつ、エルちゃんはドングリ、桑の葉っぱ、クズ芋など。


 両手を合わせて頂きます。

 今日メニューは、雑穀お握り·餡掛け豆腐·ゆで卵·葉物の漬物·お汁。相変わらずのもちもちぷりぷり雑穀ごはんに漬物が最高だね!この餡掛け豆腐も、屋台の厚揚げを油を落としつつもご飯のオカズになるように味付けがされていて美味しい。これはキノコの出汁かな、薄味だけどホットする。


 屋台飯でも種類があったし、現代みたいに薬品とかも無いだろうからいいかと思ってたけど、ヤッパリ全然違う。

 こんな品数食べれないもん、ティネットさんとミリィアさんに感謝だね。


『ご馳走様でした』


 最初の頃はあっという間に食べ終わってたアミルくんだったけど、最近はゆっくり食べてくれるようになった。お盆の上にお皿を並べて、さぁ、散歩に行きますか。


 アミルくんは丸三日寝てて、その後も三日間は碌に動いてない。まぁ、リハビリを兼ねた散歩だね。


 小屋を出て振り返ると、悠然とみうが出て来る。発色のいいオレンジ色の毛並みに、真っ白の胸毛が映えて猫の王様のよう。

 アミルくんが長い棒を持って後に続く。エルちゃんは短い手足をちょこまか動かして嬉しそうに駆け回る。


 散歩と言っても、小屋×2と井、馬小屋の周りをぐるぐるするだけだ。

 それでもエルちゃんは、あっちにフゴフゴこっちにフゴフゴと鼻を突っ込んで楽しそう。私の一歩の間に五歩はかかるぐらい小さいから、エルちゃんにとってはここでも十分かもしれない。


 三週もしてストレッチをしたら、私はこれでお終い。棒を使って武道の型のような動きをする、アミルくんを見守る。病み上がりだから、型が止まらず流れちゃうね。

 汗をかきながら真剣な顔で鍛錬するアミルくんを横目に見ながら、桶でお皿洗いしているとカイくんがやって来た。


 また仕事の合間にアミルくんの鍛錬相手をしに来たのかな?

 カイくんは挨拶したあと、物言いたげに私を見てからアミルくんと軽く打ち合いをした。

 うーん、カイくんは軽やかだね。比べるとアミルくんはまだ体が重そうだ。

 あ、私はサボっているのではなくて、アミルくんに加勢したがるエルちゃんを引き留めるという大任を果たしています。

 最近大分アミルくんの言うことを聞いてくれるようになったけど、打ち合いすると飛び込んで行っちゃうんだよね。


 一汗かいた後、カイくん胸元から小袋を取り出し、中を見せる。うん、あの時の種だね。アレ?ちょっと大きくない?くるみ大だった筈の種が、卵サイズになってた。


「たね、大きい?」


 うんうん頷くカイくん。


 まさか、このまま大きくなるんじゃないよね?今のところ、最小のソラちゃんですら卵にしたら結構大きいよ、絶対日常生活に支障が出るよね。


 カイくんが何かを期待するような目で見てくるけど、私には何も出来ません。

 卵と違って固そうだから、背負っても割れなさそうだけど……犬サイズにでもなったら大変だよね?




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