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湖畔の私へ  作者: 炬燵猫
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1. ここは何処ですか?


諸事情で放置してたら色々忘れてました(ノω`)

改めて練り直しつつ何とか進めていこうかと思います。


 

 水色の空、たなびく雲、風そよぐ木々。

 揺らぐ湖面に波紋が広がる。




 私何してたっけ、なんでこんな所にいるの?




 ゆっくりと立ち上がり、少し湿ったお尻の草を払う。水面をのぞき込むと、綺麗に澄んだ水の底には水草が見えた。


 山歩き用のブーツとレギンス、ショートパンツ。服的に軽く山か森に行く気の格好だし、自分でここに来たんだよね?

 

 怖っ。


 記憶喪失と言うやつ? 私は遭難者ですか? そうなんですか?


 今何時ぐらいなんだろう。太陽は右側に見えるけど。


 ······荷物、ザックは? 見廻すとすぐそばにハットとザックがあった。


 コンビニおにぎり1個、超軽量○印の水筒、ゴアテックスのカッパ、お菓子と椅子、シートとかのダラダラグッズ、なんと枕まで入ってる。


 私はガックリと膝をついた。何持ってきてるんだよ、どんだけダラダラしたいんだよ。


 気を取り戻して、10個はついてるポケットを漁る。飴にチョコ、グミ、塩こぶ、懐中電灯。

 

 はい、懐中電灯! 残念なサイズだけど最近のは明るいからね。あとは軟膏、ライター、髪留めに絆創膏、歯磨き……

 

 携帯無し、車にでも置いてきたかな? うん、よくやってたねそれ。


 いかん落ち着こう、お茶でも飲んでコブを齧ろう。椅子を出して座る。地面に座ると体が冷えるんだよ、湿るしね。



 草原に綺麗な池、絶対名所だね。

 携帯があって場所が確認出来たら、安心してゴロゴロしたいところだけど、そうはいかない。そーなんかもしれないしね!


  焦りながらも、コブを堪能していると、池からから猫が出てきた。


 もう1回言おう、池から猫が出てきた。シュッと出てきた!


 どういうこと? 淵に穴でもあって、そこから出てきたのかな、濡れてないしね。

 

 でっかい茶トラの猫が、しれっと毛づくろいしている。立派な骨格にオレンジと表現したくなるほど明るい毛色で、ハチワレっていうのかな、鼻先から豊かな毛を蓄える胸まで真っ白。手足の先も白くて、ピンクの鼻と肉球が可愛らしい。

 猫は毛づくろいを終えると、こっちをみて見た目に似合わぬ細く高い声でニャーと鳴いた。

 胸がキューとした、何この可愛い毛玉、もっふもふやがな。しゃがんだ私は、手を出して猫を呼んだ。


  「みー、こっちおいで」


 猫はゆっくりと近づいてきて、私の手に顔を擦り付けた。豊かなアンダーコートと長めのオーバーコート。手触りは最高です。ヒゲも長いねキミ。

 猫はそのまま私の横にスリスリしながらぬけて、スリスリしながら戻ってきた。


「お前立派な猫さんだね、どこから来たの?」


 手の下にぐっと頭を入れてくるので、遠慮なくもふる。糸のように目を細めた猫は、ゴロゴロいいながら私の至る所に匂いをつけるべくスリスリしてくる。


 お持ち帰りでお願いします。


 問題は私のお家がどこか分からない事だけ。思う存分もふった私は空を見た。左に登ってるから今は10時過ぎぐらい。

 早く車を探さなくては、日没まではまだあるけど、何事もゆとりを持って行動しないとね。特に記憶喪失の遭難者は!


 ここを拠点に、周りを見てまわろう。


「お前、着いてきてくれる?」


「にゃー」


 猫は可愛い声で返事をしてくれたけど、猫だしな~。連れて帰りたいけど、来てくれるかな。


 いざ探索と思ったら、犬の吠えまくる声が聴こえる。今どき野犬なんて聞かないけど、山には居るのかも?

 イノシシ狩りの猟犬とかだといいな。く、熊狩りはご勘弁ください。


 猫を撫でたおす。落ち着くわー。お前の名前考えないとね。


  「みう」


  撫でながら呼んでみた。


  「にゃー」


  お返事を頂いた。にゃーじゃあれかと思って、呼んでみたけどしっくりくるね。よし、お前はみうじゃ!


  「おまえの名前はみうだよ」


  言った瞬間、みうの毛がぶはってなってぶるぶるした。


  「一緒にお家に帰る道を探してくれる?」


  「にゃーーー」


 お返事が上手にゃ。犬の声も動かないし、時計回りに見ていこう。

 

 広葉樹が多い、 杉っぽいのもあるか、原生林って感じ。緑が目に優しい色をしてるよ。


  みうはつかず離れず先に行っては止まり、遊んでは走って来てと、気ままながら付いて来てる。


  池を右手に10分ぐらいの所で、道っぽい所を発見!周りと比べて草も薄いし、ならされてる。細いけど、道、認定。


  でも焦らない、まずは1周するのだ。


  池を右手に見ながら更に進む。この池ってそら豆みたいな形してたんだね、対岸が近くなって、真ん中に小さな柳の気が生えてるのが見える。なんか神秘的。


  30分ほど進むと結構ひらけてるところに出た。豆のへその辺り、うん絶景だね。 見惚れながら進んでいたら、ハイ道です!これは絶対本道だね。いやー、良かった良かった。


  「グー、ギュルギルギュル」


  「にゃうぁうまぅ」


  安心したらお腹なったよ! みうそんな声もでるの? 折角だからここで食べよう。

 

  池の正面に立つと、反対側に大きな白木の鳥居があるのが見える。えっ、今回ってきたのに全然気が付かなかったよ。近すぎて、木だと思ったのかな? 真ん中にあの道があるから、きっと参道なんだろう。あの奥に神社があるんだね。

  でも森の中にある神社かー、神主さんが常駐してる気がしない。


 とにかくご飯だ!

  レジャーシートを広げて座り、ご飯の準備。ジップロックの口の部分をクルクル巻いてお皿にする。シャケとご飯をしっかり混ぜて、みうの前に置く。スンスン匂いを嗅ぐみう。怪しいものではありません、しゃけご飯です。


  「いただきます」


  手を合わせて3分の2になったおにぎりを頂く。うーん、お米最高。

  帰ったら病院も行かないとな、記憶無いとか怖すぎる。頭打ったのかな?痛くないけど。


  「ご馳走様でした」


  みうはむはむ頑張ってるけど、お米が歯について気持ち悪いみたい。次はちゃんとカリカリ&トロトロにするね。

 

  シートを仕舞っていざ出発。もうすぐ1周するはずだ。


  「行くよ、みーう」


  「にゃー」


  しばらく歩くと、ひと跨ぎ出来るサイズの小川があった。源流ってやつかな、流れ込んでるところは無かったしこの池湧き水なんだね。ぴょんとな。


  それから10分ぐらいで元の場所に到着した。1周1時間はかかってない。道は2つ、ここは勿論大きい方に行ってみよう。

 

 よく見たら柳ここからも小さく見える。


  絶景だよね、今度はカメラ持ってこよう。


  幅のある道をみうと進む。風が気持ちいい。傾き始めた太陽を背にできるのもありがたい。 

  なだらかに下る道、分かれ道を見逃さない様に注意して歩く。

  あっちこっち行っては戻ってきてスリスリするみうに励まされながら進むと、先に森が開けて遠くまで見渡せそうなところがあった。


  足早に進む。やっと、先が見える!




 眼下に広がるのは、ひどくのどかな光景だった。田んぼに畑、農作業をする人々が見える。いわゆる田園風景。

 

 急になった傾斜を回避するために、うねうねと蛇行する道。そのカーブの先に、村が見える。珍しい事に、黒壁に木の屋根が多い。瓦の屋根もある。色がオレンジで、シンプルな形の大きな屋根ばかり。


  それに、道。あんなに村の近くなのに舗装されてない。田舎にしては、家が密集してる。村の周り、あんなに柵で囲ったら、畑に行く時に出入りがめんどくさい気がするんだけど。

  村の周りと、田畑の周りを柵が取り囲んでいる。

 

  閉鎖的な村なのかな? 激しく不安になってきた。宗教施設とかじゃないよね。異教徒狩りされないよね?


  この高さから見てあの距離だと、行けてもあの村がせいぜいだと思う。野犬の声を聴いてしまった今となっては、山で寝るのは無理。


 引き返して神社に? それも怖い。


「取り敢えず、行こう。みう」


  あの村を偵察して、無理そうなら池に戻ろう。で、陽があったら神社を見てみよう。


  うねうね道を進む。

 

  曲がりくねった~道の先に~♪ 行ったり来たりさせられながら、たどり着きました麓の村。木々の影から村を観察する。


 門っぽい所があるんだけど、勝手に入っていいものかな。農作業してる人を呼んだ方がいいのかな?


  『おい、お前。何をしている』


  ぬぉ、びっくりした。突然後ろからおっきな声出すから! それ何語ですか?

  って、犬犬犬! さっき吠えてたのお前らかい。

 

  10メートルぐらい向こうに、犬を従えた少年が立っていた。浅葱色の、なんだろう?作務衣を長袖にして肘のあたりと、手首で紐で縛った服をきている。ズボンも同じように膝と足首で引き絞られている。

  キリッとした、凛々しい眉毛と涼し気な目元、しっかり通った鼻筋に引き結ばれた唇。


  お友達になりたいです。


  私の足元に座るみうを抱き上げる。犬に驚いて、迷子になったら大変だ。


  「あの、言葉が分からないんですが、日本語は話せますか?」


  リードも付けてないのに、犬達は大人しく吠える様子もない。男の子は、私が話すのを聞いて眉間にシワを寄せた。お祭りに来た観光客とか? ならお犬様たちはなんですか?

 

『お前はイリンムイにいた。何をしてしていたのだ』

 

  「えっと、迷ってしまったのだけど、この辺に駐車場ありませんか? 車で来たと思うんですけど。それか、タクシー乗り場か、バス停教えて貰えると助かります。パーキングラット? タクシー?」


  where isでいいの? あ、the付けるんだよね? 文章で話すのなんか恥ずかしい!


『分からん、着いてこい。こっちに来い』


  暫く首をひねっていた男の子は、ため息をついて歩き出した。くむ? くーわ? 同じ言葉を繰り返して、手招きしてるので着いてこいということだろう。

  入れてくれるらしい。良かった。村の人に聞けば、駐車場なんてすぐ分かる。こんな田舎に何個もないだろうし。最悪、車は置いてバスで帰ればいいや。

  あ、猫って乗れる?




  あぜ道を暫く歩いて、村に向かう。農作業をする人達も、作務衣的なものを着ている。紐はついてるけどね。あ、みの背負ってる! 蓑懐かしいな、おばあちゃんは未だに愛用してるけど。


  二個目の柵を目の前にして、私は冷や汗を流した。目前の景色が異様だったからだ。

 

 焼き杉? の黒壁に木の皮が貼られたやたらでかい屋根。開け放たれた戸から見えるうちの中には何も無い。いや、あるけど! 現代文明を感じさせるものは無い。機織りしてる人は居るけどね。囲炉裏もあるけど!

 

  家の前では派手な鶏? がつむつむし、犬と小さな子供が戯れてる。


  ここは原点回帰を目指してる方々の集まりなんですか? 勿論、電話も禁止なんですよね?

  で、でも緊急時のために村長さんの家には置いてあるんですよね? むしろ村長さん家はオール電化とかいう落ちですよね?


  硬直する私に、柵を開けてくーむくーむ繰り返す男の子。


  「ど、どう言う事だってばよ」


  みうを無意識ににぎにぎしながら立ち尽くす私。くーむ少年がくーむくーむ繰り返す。


  いや、分かってるよ、来いってことでしょ? でも、なんか話のわかる人に合わせてもらえる気がしなくなってきたというか、ほかの人たちがくーむくーむ言い出したらどうすればいいですか?


  遠慮がちに肩に添えられた手に、我に返った私はくーむ少年を見た。


  「くーむ、くーむ」


  遠い目をした私は、重い足を引きずりながら促される方向へと歩き出した。


 



色々減らしました。夕菜のザックの中身は、


コンビニおにぎり1個、超軽量○印の水筒、小さな携帯椅子、折りたたみの軽量アルミミニテーブル、ウィンドブレーカー、裏起毛のフリース毛布、裏が防水断熱で表が厚手の布の気持ちのいいレジャーシート、もちもち猫枕、単行本1冊、チョコチップクッキーひと袋、タオル1枚、濡れティシュひと袋、芯抜きトイレットペーパー1巻きビニール袋2枚ジップロック2枚、後は買った時から入れっぱなしの280gのシェルフと超軽量ダウンジャケット。



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