弟とおじさん
こっそり投稿。
前半が母(当時小学4年)、後半が現在の私。
同じ人物について書いています。
『弟』 花野
私の弟は、弱虫だ。
ほかの子とちっとも遊ばない。
自分より小さな子がそばに来ても逃げ出す。
それに、まだ乳母車に乗っている。
あと何日かで四歳なのに。
すぐおこるし、わがままだ。
外に行く時、私がちょっとでも先に出ると
おこってわあわあ泣き出す。
公園へ行っても
よその子がブランコに乗ると
自分の乗るところがちゃんとあっても
きまって泣く。
弟のすきなものは汽車の絵だ。
コンテナ車、ゆうがい車、とんせき車
なんでもとてもよく知っている。
「書いて書いて書いて」
またはじまった。
* * *
『おじさん』 れみ
わたしのおじさんは、わるい魔女と二人で住んでいる。
ほかの人とはちっとも話さない。
わるい魔女の言うことしか聞かない。
それに、まだ働いていない。
あと何日かで六十歳なのに。
わるい魔女があばれると、おじさんはご飯やお菓子をあげてなだめる。
つかれるとわたしのところへやってきて
じっと座っている。
おじさんは紙のようにぺらぺらなので
ドアや窓の隙間から入ってきてしまうのだ。
それでもわたしは、時々いないふりをする。
おじさんは、もえないごみの日をいつも覚えている。
にごり水、赤い羽根募金、町内会の集金
なんでもとてもよく知っている。
わたしが風邪をひくと、具合はどうかと聞きに来る。
わるい魔女と暮らしているけれど、きっとおじさんはわるい人ではない。
だけどわたしは、時々いないふりをする。
三分間だけ気配を消して、遠い場所で眠ったふりをする。