表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

恋した相手がハーレム野郎だったら受け入れるのが愛の深さか?

 召喚勇者である花崎賢人は、テンプレ通りのハーレムを形成しいてる。そして、テンプレ通りに鈍感属性、優柔不断だ。

 そして私、浅倉楓はそのテンプレに巻き込まれた幼馴染みだ。もの凄く不本意だけど、賢人ことケンちゃんに恋をしている。

 本当に、くそ忌々しいことに、ケンちゃんはテンプレ鈍感主人公で、私は世話焼き幼馴染み。

 ただし、ラッキースケベなどは今まで一切起こしたことはない。そこだけは、はっきり言っておきたい。

 私以外のハーレムメンバーとは色々あったみたいだけどね!

 世で言うところのツンデレになるのかどうなのか知らないけど、私はケンちゃんにいわゆる恋する乙女のような行動は一切とったことが無かった。

 恋は、理屈じゃない。

 小さい頃から傍にいたから、ケンちゃんのことはよーく知ってる。長所も確かに知ってるけれど、今は欠点にばかりに目がいく。流され易く、好意的に取れば優しいけど、優柔不断。ケンちゃんのことを小さい頃から振り回しまくっていた自覚がある私にそんな事を言う資格はないんだけどね。

 私はよく言えば行動力があるけど、向こう見ずで正しいと思ったことにはがむしゃらに突き進む傾向がある迷惑なお子様だった。

 ケンちゃんはそんな私に迷惑そうな顔もせず、いつも付き合ってくれていた。

 お人好しで、優しくて、嫌と言えない性格。

 召喚前はケンちゃんがもてて、私が目の敵にされて邪魔されるなんてなかった。だからイライラしたことも無かったんだ。長所が裏を返せば欠点になるなって頭では分かってたけど、こういう風に身にしみて理解したのはこっちに来てからだ。

 まあ? 勇者だし?

 そのブランドだけでモテるのも、今までこっちの世界にいなかった性格っていう物珍しさでモテるのも、納得したく無いけど、まあ? そういうもんでしょ? って感じで諦めてはいる。

 でもさ、好意をあからさまに寄せて来る相手に対する鈍感発動は、無意識の偽装としか思えない。気付いてない前提だから、どの子に対しても良い顔をする。雲行きが怪しくなれば、適当に誤摩化して逃げる。

 目前の問題から逃亡する姿は、嫁姑バトルから目を逸らし続け、雲行きが怪しくなると黙り込むか自室に籠ってしまう父親の姿とかぶる。

 板挟みがどうとかいう言い訳は聞きたく無い。嫁である母にとって、我が家は祖母が支配してる敵陣と同じなのだ。伴侶である父が守らなくてどうするんだと言いたい。ケンちゃんは、たぶん結婚したら父と同じ行動をすると簡単に想像がつく。

 そういうことに今更ながら気付いてしまって、とてつもなくイライラする。ケンちゃんは長男で一人っ子だし、おばさんとは正直気が合わない。結婚しても同居だったら幸せになれる気がしない。

 それでも、だからといって恋が冷めるかといえばそういうもんでもないのが、超絶ムカつくのだ。

 まあ、元の世界には戻れないみたいだし、嫁姑戦争はどうやっても起こらないんだけど。


「わたくし達、協定を結びましたの」

「はぁ」


 ドヤ顔の金髪メロンなステラ姫の言葉に私はうんざり気味に頷いた。

 バービー人形みたいなゴージャス美女で、召喚を行った国の第二王女様だ。

 この人は最初から勇者様勇者様とケンちゃんにご執心だった。まだ何もしてなくても、勇者という肩書きは恋するのに十分だったらしい。

 当然、最初から私は目の敵にされている。


「勇者様のように偉大な方の妻が一人というのは不自然ですし、勇者様のようにお優しい方にわたくし達の中から一人を選ぶなどという辛い決断をさせるのも本意ではありませんの」

 

 ステラ姫後ろには、エルフのシルビア、青い前髪パッツンなロリ娘エリー、虎の獣人ミーシャがいる。

 ちなみにそれぞれ魔法使い、剣士、僧侶、格闘家。

 私? 雑用係だよ。


「ですから、醜い争いなどせずに仲良く平等に勇者様の愛を分かち合い、共に勇者様をお支えすることに決めましたの」

「はぁ」


 巻き込まれの私には何のチートもなかった。だから足手まといの雑用係でしかないけど、知らない世界にいきなり誘拐されて、知っている人がお互いしかいない私もケンちゃんも絶対引き離されまいとしたんだよ。たとえ魔王討伐への危険な旅だったとしても。

 

「政治的な配慮から、わたくしが正妻、エリー様が第二夫人、シルビアが第三夫人、ミーシャが第四夫人となります」


 エリーちゃんは大司教の娘で聖女だからねぇ。呼び方一つでも全然平等じゃないよなぁとぼんやり考える。ミーシャちゃんは元奴隷だし、お姫様からしたらかなり譲歩して寛大な対応なんだろうね。エルフは人間よりもずっと長寿で個人的な能力も高いけど、所詮は少数民族ってことか〜。

 納得してない顔を何となく見せているのは、シルビアさんくらい?

 

「貴女はどうなさいます? 正直貴女のような役立たずを末席とはいえ輝かしい勇者様の妻の一人に加えるのは反対なのですが、一応旅を共に過ごした仲間であることには違いありません。それに勇者様は『幼馴染み』という貴女を『妹』のように思っていらっしゃるようですし」


 妹じゃねえわ、どう考えても姉だわ!!

 心の中で叫んでから、深呼吸をした。

 正直なところ、私は自分の恋に自分で引導を渡そうとなんとなく決意していた。魔王討伐に成功した今、これからのことを考えないといけないし。

 こうやってはっきり聞かれたからか、今までウダウダモヤモヤしてたのが嘘みたいに私は踏ん切りがついた。

 そういう意味ではステラ姫に感謝だ。


「私はケンちゃんの……勇者様の妻になる気はないです」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ