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――プロローグ――

※長くなるので早く本編が読みたい方は飛ばして下さい。


 はじめまして。少々読み辛い点や色々と至らぬ点があると思います、暖かい目で見守って頂けたらと思います。

 初めてなので前書きを書かせて頂きますが、基本的に前書きは無しでいこうと思います。

その方がサクッと本編を読んで頂けそうだからだからです。

 一応この作品は三人称という体裁を取っていますが、その場その場で微妙に登場人物に添った視点で描かれている為言葉が変化します。

その為、例えば登場する単語がその人が使っているものに準拠して変化する場合がありますがミスではありません。

そして正直著者は然程海外経験がある訳でも無いので間違った事を書いてしまうかも知れません。

また然して博学な訳でも有名大学出で学術知識豊富(世間一般では頭良いとか沢山ものを知ってる)という訳でもありません。

ただ、可能な限り正確に現実に即した内容になればなと思っています。

 それでは非常に長くなりましたが物語の開幕の言葉と替えさせて頂きます。




 夏が終わると新学期の季節になる。

今年も多くの新入生が新たに通う学校に、期待と不安の入り交じる中この船にやってくる。

 世界で唯一の船そのものが学校のこのエリュアウレーは、世界最大級の豪華客船丸ごと全てが学校になっている非常に珍しい学校だ。

当然豪華客船が学校などという事になっている以上、その学費は通常のそれとは異なり非常に高額であり、その多くは各国の王公貴族や大企業の子息令嬢ばかりだ。

入学金だけで日本円で二億六千万円以上に上り、学費は年間一億三千万円以上も掛かる。

 何故そんなにする学校に子供達が預けられるかと言えば、この学校の教育プログラムがそれだけ優れておりまた独特過ぎる点にある。

 この学校は、文字通り世界各国を巡りながら寄港する国々の文化や社会を学んでいく。

つまり安易なイメージで言ってしまえば一年毎日が修学旅行であり一般人が思春期に体験するあらゆる体験を凌駕して様々な経験を積める点がこの学校の特徴の一つなのだ。

勿論国際的な感覚は当然として、数多くの人達に出会うという事は人間的な成長も多いに期待出来るというものである。



 今年も最初の寄港地であるニューヨークには、約三百八十名の新入生がやってきていた。

 そんな港に集まる新入生達を眺めながら、リック・サイモンは溜め息を吐き出す。

「おーぉ。今年も可愛いひよっ子達が集まったなぁ。まぁ退屈しないから俺は大歓迎だけど……。馴れない内は苦労するんだろうなぁ」

苦笑混じりにそんな事を言いながら、自室の窓から外を眺めて初めて対面する者同士挨拶したり雑談したりしながらわいきゃい騒いでいる様子をどこか優しげな、それでいて皮肉げな表情を浮かべている。

リックも五年前は同様だったから懐かしくもあるが、高等部二年として恥ずかしくない態度で接さなければならない。

 とはいえリック自身はかなりざっくばらんな性格でどちらかと言えば軽薄という言葉が似合う様な人間でもある。

そういう意味では彼らとは仲良くやっていけそうではあるが、それによって相手がどう思うかはまた別の話しである。

 リックはそうして外を眺めた後、そのまま振り返ると自室のウォークインクローゼットに入っていった。

入学式は全生徒参加の行事であり正装をする必要がある。

 式典は午前十時からなのだ。



 入学生三百八十名の内、三十名は高等部からの入学である。

エリュアウレーは中高一貫の全寮制(船だから当たり前だが)である為、基本的には中学入学と同時に入ってくる者が殆どだが、こうして若干名の高校からの入学者もいる。

そうした者達の多くはまた別の所謂金持ち学校へ通っていた者が大半だが、そんな中にも例外という者がいる。

 四宮葵(しのみやあおい)はわくわくしながら今日という日を迎えた。

四宮家は古くは四葉財閥として明治時代に財を興し伯爵位を賜っていた旧家だったが、戦後の財閥解体の煽りを受けてバラバラになった。

 とはいえそれは今でもグループ企業として関係は続いている以上、四宮家は今も資産家でありその息女の葵もまた深窓の令嬢として蝶よ花よと育てられてきた。

 彼女がこのエリュアウレーの存在を知ったのは小学四年の頃でありそれ以来ずっと憧れ続けていたが、葵は小中一貫のエリート学校に通っていた為中学からの入学が果たせず高校からの入学となったのだった。

 国籍も人種も宗教や文化さえ違う人間がこんなにも多くいて、これから一体どんな素敵な毎日が始まるのだろうと胸をときめかせていたのである。

 両親や兄弟と離れるのは少し寂しいが、元々利発的で明るい性格なのでネガティブな事よりもポジティブな事に思いを馳せる方が彼女は好きなのだ。

そして自分自身がそれをずっと望んでいた事もあり、不安が無いと言えば嘘になるが、それでも新しい生活、しかも初めて親元を離れて独立した生活を送るのだから、今迄以上にしっかりしなければならないと責任感の様なものに包まれて尚一層引き締まる思いである。

 いつも甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるお手伝いさん等の使用人もいなければ優しくも厳しい両親も、末っ子を溺愛している兄弟もいないのだ。

 そんな事を思いながら集合した時に挨拶して今も話をしている隣のアメリカの人ジェシカは、不動産で富を築いた富裕層らしく、最近富裕層が集うパーティーで社交界デビュー(と言っても貴族達が行うものではなくあくまで欧米で活躍する金持ち達の集まりでチャリティー名目の情報収集や商談といった内容のものだが)をしたという話しをしている。

漸く淑女(レディ)として認められる年齢になったと顔を綻ばせながら、嬉しそうに話すその顔は、まだどこか幼くも見えるが、身体つきは大人に近くなっていて葵はそんな彼女を一寸羨ましくも思った。

 別段彼女が幼女体型で出る所も引っ込んでいる所も無い訳ではない。

寧ろ彼女は歳の割には女性らしいふくよかな体型であり良くも悪くも中肉中背である。

 だが、欧米人はその身長が違う。

同じ女性らしい体型ならばスラリと高い身長の方が格好良くもあり大人びて見える。

日本人の葵の身長は百五六cmであり小さ過ぎはしないがそれでも決して高い訳ではない為やはり若干幼く見えてしまうのも無理はない。

ただでさえ東洋人は欧米人に比べて若く(幼く)見えてしまうのだから、初めて挨拶をした時、ジェシカに中学生に間違われ、今迄気にした事も無かったが自分が幼く見えているのだと気付かされて恥ずかしくなってしまったのだ。

 そんな他愛もない話しをしていると、どこかから悲鳴の様な声が聞こえてきた。


何事かと思ってそちらを向いても人だかりで騒ぎの原因は見えない。

何かトラブルがあったのかと人だかりをかき分けていくと、一人の少年が倒れ、その目の前に別の少年が見下ろす様に立っていた。

「お、お前こんな事して只で済むと思うなよ!?」

倒れている少年がそう怒鳴る。

「と言っても俺はただお前が殴り掛かってきたから払っただけなんだがな……?」

立ったままの少年はそう困惑するかの様な、面倒くさそうな表情で言った。

「お前が生意気な事言うからだ!僕は悪くない!」

怯えているのか倒れたままの姿勢で指を差しながら怒鳴る。

「だから、お前の方からぶつかってきたから気を付けろよって言っただけなのに、勝手に挑発されたと思って絡んできたんだろう?そんなの俺の所為じゃなくて自業自得じゃないか」

「お前って言うな!!僕はランディ・グラントって名前があるんだ!お前みたいな下っ端が軽々しく触れて良い相手じゃないんだぞ!?」

「どこをどうやったらそんな訳の分からない屁理屈を捏ねられるんだ?自分だけが特権階級だと思ったら大間違いだぞ!?――それよりよっぽど受けた教育が悪かったんだな。兎に角癇癪を起こして喚き立てるのを止めたらどうだ?恥があるならな!?」

「この野郎!言わせておけば良い気になって!!もう許さないぞ!!」

 言うが早いか起き上がり、また殴りかかろうとした所で恐らく先程もやったであろうその拳を避けながらその腕を取り投げ飛ばす。

今回はそれだけでなく掴んだ腕を離さず、投げたランディの身体を捻り地面にうつ伏せにさせた後に更にその腕を捻り上げる。

「痛ててててててっ!あっ――くっ、は、離せぇっ!?」

情けない声を上げながら涙目になりながらランディは訴える。

少年はそんなランディに冷ややかな視線を向けながら「それなら先に言うべき事があるんじゃないか?」と告げる。

「そ、そんなものは無い!それより早く離せ!本当に只じゃおかないぞ!?」と尚も強情に喚くランディに、「そうか。それなら腕の骨が折れるのが先か、お前が自分の非を認めるのが先かこのまま見届けるとしよう」そう言うが早いか更にその腕を絞り上げる。

「わ、分かった。僕が悪かった!だからもう許してくれぇっ!!」

そう言うとぱっと腕を離し、「お、覚えていろよ!」等と涙を流しながらその場から離れていった。

そんなランディの様子に「ふんっ、下らん奴め。あんな奴の事なんか寝たら忘れるだろうさ」と鼻を鳴らした。

そんな様子を呆然と眺めていた葵は、はっとしていそいそと元の場所に戻って行った。

 やがて船の中から一人の男性が降りてきて、集まる群集に大きな声で呼び掛けた。

「皆さん、長らくお待たせしました。これより入学式を開会しますので乗船し、自分の部屋の案内を受けて荷物を置いてきたら準備をして講堂に集まって下さい。案内は上級生がしますので、その指示に従って下さい。それから、もう既に乗船手続きはこの場に到着してから済ませたでしょうから、渡されたカードキーを乗船する時に上級生に見せて下さい」

ざわざわとざわめいていたこれから生徒になる者達は、ぞろぞろと乗船していった。

 これから文字通り新しい旅立ちが始まるのである。



 葵はジェシカと別れた後、上級生に案内されながら船内を歩いていた。

船内は豪華客船といった造りで上品で見事なものである。

外観は白を基調とした船で、船底へと繋がる壁部分は赤と緑で何かの花の模様があしらわれ、その部分だけが青地になっていた。

船首はアルファベットでエリュアウレーと金字が描かれている。

船内は大半が壁面に木材が使われ、落ち着いた雰囲気があり、絨毯もふかふかだが毛が長過ぎない為動き難いという事は無い。

広間になっている所にはスワロフスキーであろう豪華なシャンデリアが吊るされているし、廊下は天井近くに金の燭台が付いている。

 そんな落ち着きある上品な雰囲気の廊下をキャサリンと名乗った上級生の後を歩きながら、葵は先程の衝撃的な出来事を思い出していた。

(あんな映画みたいな事が実際にあるのですねぇ)

生粋のお嬢様である葵には目の前で起きた出来事ながら、未だにまだ信じられないといった様子だった。

そもそも人があんな風に争う場面に出くわした事も無いし、しかもそれが現実離れした形での暴力を目の当たりにした事が無かったのだから、現実感というものがまるで無い。

生まれて初めて人が宙を舞っているのを見たのだから、気持ちが少し落ち着かない。

そしてそれをはしたなくも野次馬の様に見に行ってしまったのだから、やはりこのエリュアウレーに入学する事で気がそぞろになっていたのだろう。

 だからこそ恥ずかしくなってあの場を離れたのだ。

あの後どうなったか葵には分からない。

 そうして十分程歩いた後、キャサリンが「着いたわ。ここよ」と笑顔で振り返った。

「ありがとうございますキャサリン先輩。お陰様で無事に着きました」

そうお礼を述べながら四宮家の一員として無意識に近い状態迄慣れた笑顔で応じると、カードキーで自室の扉を開けた。

先輩が案内してるのに全く違う事を考えていた事などおくびにも出さないのは流石はそうした旧家の令嬢である。

 ほぼ全ての生徒がそうではあるが、世界各国から様々な人種が集い日々を過ごす部屋なのだ。当然違う文化があり暮らしてきた環境が違う。だから幾ら富裕層と言えど新しい環境の、新しい施設を何の説明も無しにすぐさま使える人間はほぼいない。いるとしたら似た様な設備を使ってきた者だけだ。

そういう訳で上級生も一緒に部屋に入る。基本的に同性の上級生が案内したのはそうした意味もあり、また生徒同士の交流の一環でもある為、そうした措置が習わしになっている。

 決して人員が足りないからという理由ではない。

 事実、これが縁で仲良くなる生徒もいる。

そうして部屋の内部を案内されながら、バスやトイレと言った基本的な設備の説明を受けたり利用方法を聞いている葵だが、当たり前ながら日本人である葵にとって、そうした事は基本的にあまり目新しいという事は無く、寧ろボタンの配置が違う程度の感覚しか無い。

しかし何故そんな必要があるのかと言えば、例えば今や世界中に広がりを見せ始めたとは言えまだまだウォシュレット機能が初めてという生徒も少なくない為、この様な設備の説明は必要であり、また驚く者も少なくない。これはあくまで一例だがこうした設備面での失敗を無くす為には必要な事だった。

 ともあれ、一通り説明を受けた後、キャサリンは部屋を出て行ったがまだ扉の外にいる。

葵が着替えた後一緒に講堂へ行く為だ。

葵は急いで着替えると身なりを整え部屋を出た。

 キャサリンは笑顔を向け、「葵、とっても可愛いね。似合っているよ」と褒めた。

「ありがとうございます。褒めて頂けて嬉しいです」

と葵は答えて笑顔を向けた。

 互いに笑顔で先程同様雑談を交わしながら今度は講堂へと向かう。

勿論先程の様に考え事をするのは止めてキャサリンとの話しに意識を向けながら……。



 講堂では既に人が集まっていたがそこここで話しに花を咲かせているのか割と騒々しかった。

キャサリンとは講堂の入口で別れ、改めて礼を言うと笑顔で「またね」と言ってクラスの方へと帰って行った。

明るく気持ちの良い先輩だなと思いながら、葵は自分の席へと向かう。

まだクラス分けも発表されていないので中等部と高等部に分かれてはいるものの一年生はおおよその場所で分かれているだけだ。

適当な席に着けばいいだけで特に決まった席が無いから葵は隣に誰もいない所に座る。

 暫くそうして待っているとやがて生徒達が集まってきたのか次々と席は埋まっていき、葵の隣にも生徒が座る。講堂は広い空間なので人が座っていても人が一人通れる通路が前に確保されている。隣に座ったエレナと名乗るフランス人の少女と挨拶し話しをしていると、反対側の隣の席に一人の少年が座ってきた。

 葵は挨拶しようと顔を向けたがそのままその表情が凍りついてしまう。

彼がエリュアウレーに乗船する前に乱闘騒ぎを起こした張本人だからであった。



 彼の名は秋月八紘あきづきやひろ。日本人でありエリュアウレーでは珍しい一般人である。

だからなのか少し言葉遣いも態度も荒いし臆病な人間ならば萎縮してしまう様な印象を与える少年だった。聞けば本人はそういうつもりは無く、至って普通にしているという事なので、どうやらただ狂暴な訳ではないという事だった。

 だが、葵はそれでもあんな恐ろしい事を涼しい顔でやってしまう少年に、怯んでしまうのだった。

「何か怯えてないか!?俺そんなに恐い人間じゃないぞ?」

あけすけにそんな事を言っているが、葵としては人を投げ飛ばしてしまう様な人間である。恐がるなという方が難しい。

 話してみれば確かにそこまで恐い人ではないのかも知れないが、葵はどうしてもあの光景が頭にある。

勇気を持って今朝の出来事を話したからか、八紘はそう言うが、こんなに乱暴な言葉遣いの人間とは関わった事の無い葵にはどう接して良いか分からない。

 だが幸い、そんな困惑中の葵を救ったのは全員が揃い時間になったのだろう、先程港に出てきた男性が壇上に上がって、話しをし始めたのだ。

「時間になりましたのでこれより入学式を始めます――」




 やっぱりというか何と言うか、少々冗長になってしまったのでもっと細かく描写したかった所がズバズバ切れちゃってますね……。

いやそれだけならばまだ良いですが、無駄に長くなった分大事な所が割とあっさりとした仕上がりになってしまいました。

本当はもっと書きたかったのですが、何せ当初の予定では秋月八尋の登場で話しを区切るつもりだったのですが、あまりにも四宮葵の事を書いてしまったので急遽少しだけ自己紹介を兼ねて書いてしまいました。

色々と反省です。


 次の話しからはまた別の視点で書けたらなと思います。

実は何もかもが初めての事なのでこのサイトの使い方もまだ満足に把握しきれてません。

一応気が付いたら後で直しが入るかと思います。

今は誤字脱字を無くし正確に書こうと思っています。

本来の小説の書式をなるべく踏襲している都合上読み難い点もあるかも知れませんがどうかお付き合い下さいます様お願いします。


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