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解散
「私は紘と……みんなと歌っていたい。ずっとずっと、いつまでもみんなと一緒にバンドを組んでいたいんだよ……」
────青春なんて時間の無駄だ。
かつて、そう言った自分を音楽の世界に引っ張ってくれた人は泣いていた。
「……だから、辞めるなんて言わないでよ」
「ごめん。俺だと、みんなの足手まといになるだけだからさ……」
ポケットに突っ込んだ紙きれが、くしゃくしゃと音をたてる。
つまるところ、俺は逃げたのだ。
夢や現実、仲間たち。色んなものから。
かつて、無駄の一言で一蹴した「青春」の終わりが怖くてすべてから逃げたのだ。
「だから、今日で俺たちNo.9は解散だ」
追い縋るように伸びる、震えた手を振り切って。
俺はその場を後にした。
それが、冬の出来事。
中学三年生のある冬の日だった。
その日、俺は自らの青春劇に幕をおろした。