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YES/NO『青春デビューに失敗した人間が、異世界デビューを成し遂げられるか?』  作者: 志島踏破
第壱章 異世界転生がなんか思ってたのと違うんだが
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第五話 『くんかくんかするお!』

——めがねめがね


 このワードを口ずさみつつ眼鏡がんきょうを探すのはもはやテンプレートと化したネタである。

 大抵の場合、その探し物は頭の上に乗っかっているのだが、俺が探しているのは残念ながら眼鏡ではない。

 では何かと聞かれれば、答えてあげるが世の情け。


 そうっ、パンティであるッッ!!


 当然。俺はソイツを常日頃から被っているわけではない。

 必然。いや、そうしたい欲求はあるのだが、そんなことをしてしまえば、たちまちポリスメンのお縄にかかっちまう。


 だから、密林で頼んだ少女用Tバッグ(最近は男性用のTバッグやブラもあるらしい。流石に闇が深すぎて手が出せなかった)を被るときも部屋に一人、親の目が届かない所でやってる。


 母よ。貴女の知らぬ所で息子はこんなことをやっているんですよ。

 芳醇なパンティのかほりに酔いしれつつも、肩にマントを靡かせ鏡の前でポージングを決めたものだ。この背徳感がまた、たまらないのである。 変態? それ誉め言葉ね。


 因みに、前回、変態仮面ごっこ(女性もの下着コーナーでパンティを被って走り回る競技だ。恐らく、2020東京オリンピックで正式採用されるのではないかと勝手に思ってる)がどうじゃのこうじゃの言った覚えがあるが、あんなものはただの妄想に過ぎない。

 百歩譲って下着売り場に他の女性客が居なかったとしても、断じてそんなことはしない。


 あえて一線を引くことで背徳感を(以下略)である。



 さて、そんな俺のモットーに従って言うなれば、現状況は非常に俺に好都合。

 例の女は「部屋の備品に触るな」とか言っていたが、知ったことか。


 色気ムンムンだったOL天使の部屋に我が身一つ。あれだけグラマラスなボディーを包み込むには大層な下着がこのダンジョンに眠っているに違いない。

 そんなお宝を前にして、このトレジャーハンターが黙っているとでも?


「くききききき……」


 キモい鳴き声を上げながら、俺は首を回す。

 これはコウモリの習性を利用したもので、音響反射を利用して獲物を探索するという科学的根拠に基づいている。君たちも明日から真似してみるといい。

 誰だ、今、ゾンビとか言った奴は。


 ねっとりとした視線を部屋の各所へ走らせた。


 クローゼットっぽい木扉。

――違う。こういうヤツには上着とかしか収納されない。

 

 でっかいクマさんのぬいぐるみ。

――うわ、似合わねぇ……一発殴っとこ☆

 

 本棚。

 並ぶ本の背表紙は『愛想の良い振る舞い方 秘書編』とか『すぐに手を出す奴はバカ』とかいうものばかり。

――いちおう気にしてんのね。ポイント高い。



 その他種々のものがあるが、やはり一番怪しいのはあの収納棚だろう。


 俺はそれに歩み寄ると、その引き出し上段に手をかけた。

 がぽん、と木製家具特有の摩擦音がしてソイツは開く。

 「ぶひひっ!」と興奮の声を上げたが、そこには何も入っていなかった。


「ハズレかぁ」


 少しばかり肩すかし。ぽふん、とそいつを押し戻す。さっきからいちいち効果音が可愛いな。


 俺は今戻した段のさらに下を見た。残るは三段。さて、アタリの入ったおせち箱はどれだろう?


 ワクワク気分で次の段をオープン! そこには白シャツが綺麗に畳まれて入っている!

 

 「すーはぁああー、すーはぁああー……ぶぇっっくしょいッ!!」


 一通りくんかくんかしていると、くしゃみが出ちゃった。

 ゴシゴシ、とそのシャツで鼻水を拭い、次の段へ。罪悪感とかねーから。


 残るは二段。


 開けゴマァ! という掛け声と共に引き出しを引き出す。かつてここまでヒキダシの開閉に気合を入れたことがあろうか。

 恐らく乙女のヒミツが俺の内に渦巻く無限の欲望を惹きだし(・・・・)ているのだろう。フッ、まったく……、今日はHIKIDASHI記念日だな。


「うっ……!」


 喉の奥で悲鳴が出た。何だこれは……。

 俺は眼前に広がる恐ろしい光景にごくりと息を呑む。

 なんと、その中にはズラリと大量の刃物が並んでいたのだ。

 こんなの整理が苦手な女子が引き出しに色んなモノを収納しちゃってる、とかそういったてへぺろカワイイ話ではない。

 てか、おかしいだろ、コレ。

 こんなとこにあるってことは、アイツ毎朝こんなモノ装備してんのかよ。

 ラクス様、下手したらあの女に切られちゃうかもよ? ってか、さっきは俺も刺されるとこだったのか。


 おお、こわ。


 冷たく光る刀身がジロリとこっちを睨んだような気がして、俺は愛想笑いを浮かべながら静かに彼らへ別れを告げる。


「見なかったことにしておこう……うん」


 大量のナイ―フに若干ブルーになりながらも、俺は次の段に取り掛かった。

 最下段のコイツが最後(・・)である。

 爆弾とか入ってて最期(・・)にならなければいいが……。


 アーメン、と唱えて俺は取っ手を握る右手に力をこめた。


――がこんっ!


……あれ? 


 何かにひっかかるような確かな手応え。何故か一番下の段だけ鍵がかけられていた。

 

 南無三(なむさん)ッ!!

次回、『祝 派遣くん、正規雇用』(大嘘)

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