表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
YES/NO『青春デビューに失敗した人間が、異世界デビューを成し遂げられるか?』  作者: 志島踏破
第壱章 異世界転生がなんか思ってたのと違うんだが
5/88

第四話 『この感触はッ?!』

「あのーう……すいませーん。俺どうなるんすかあ?」


 デカ乳をばいんばいんと揺らしながら、前を行くスーツの雌牛(めうし)OLに俺は尋ねる。

 が、彼女は完全に俺を空気として扱っているらしく、露とも関心を示さない。

 それが証拠にさっきからムッツリと黙ったままだった。


——何なの? もしかして今日、アノ日(・・・)なの?


 と問いたくなるくらいの無愛想さだ。

 そのツンケンな態度に、マイハートは完全にフワッてしまっている。


 閑話休題。


 先ほど神様、そしてリア充四人組達と別れた後、俺は地下室のようなものの中に押し込められた。


 今頃、彼らリア猿共は、異世界召喚の為、例のラスクとかいうインチキ神様に手取り足取りの待遇を受けているに違いない。

 俺はさっきからまるで犯罪者のような扱いを受けているってのに。


 まったく、何たる扱いの差だ!


 思い当たることなんて、女性用下着売り場で変態仮面ごっこ(パンティを被って、鼻息荒くフロアを徘徊して回る遊びです)をしたことくらいだぞ?! 


……アレ、スリルあって楽しかったんだよなぁ。


 特に必死に俺を追い回す警備員の手をかいくぐって走り回るのがリアル逃走中みたいで実に良かった。

 まあ、あれは若気の至りだからしょうがあるまい。人には破滅願望ってのがあるとも聞くし。

 おっと、話が逸れちまったみたいだ。

 すまないね、君。めんごぉぉ!




 俺と彼女が歩いているのは松明くらいしか光源のない、薄暗い回廊だった。無数に折れ曲がる通路は一度迷い込んだ者を二度と帰さないような死のオーラを放っている。


……まあ、もう死んでんだけどさ


 突然、ニートへの道を断たれた俺は諦観気味に彼女の先導に従う。さながら、強制労働に連れていかれる奴隷の如く。

 どうやら黄泉の国でも、エキサイティングなことが出来る特権はリア充だけのモノらしい。憎き奴らめ……。


 リアルを充実させるだけでは飽き足らず、アナザーワールドまで充実させようってのか。

 このアナ充共め。

 フン、せいぜいアナ(とも)同士、仲良くやってればいい。

 ……。

 何か『アナ(とも)』って響きがホモっぽいな。——うげぇ。想像しただけで恐ろしい。あいつら(鏑木と飯島)のBLとか絶対、需要ねぇだ……ありそうだなぁ。



と、こんな愚にもつかぬことを考えていると、突然、顔面にクッションをぶつけられた。


 パフッ、と冗談のようなマヌケな衝突音が鳴る。どうやら先を行くOL天使にぶつかってしまったらしい。


「むぎゅっ!」と苦しげな悲鳴を上げるが、その柔らかな感触にふと疑問。


 一般的な人間なら自分がどういう状況にあるか普通に分かろう。が、しかし、この齢にして彼女一人出来たことない、ぴゅあぴゅあボーイのボキュにそんなことは無理難題。


 そう何を隠そう、ってか、タイトルにもあるけど、俺様は童貞紳士なのだ!

 だから、今、自分が顔を(うず)めているのが何なのか解せぬも道理。

 右手でムニュムニュと揉んでみてソレが何なのか初めて理解した。


 俺はニヤリと笑う。


――この手触り! このミルクのようなカホリ(・・・)!! 間違いない!! 母なる双子mountain(マウンテン)だッシャアアァァァ!!!


 ああ、神よ! 今日この日に感謝致します! 貴方は何てサプライズ好きなんだ!


  

 (ほとばし)った感動と興奮が絶頂に達し、あっという間に賢者モードに突入。

 そして、俺は随分とすっきりした表情の顔を上げた。

 多分、今の俺はゴルゴサートゥーンよりもダンディーな表情をしているに違いない。やべ、俺、超クール。



 さて、もぞもぞと顔を上げるとお山とお山の隙間から太陽が見えました。

 轟々ごうごうと燃えるように真っ赤です。うーん。これどっかで見たことあるなあ。


――ピコーン!!


 せや、思い出したで! 工藤! コレ、奈良の東大寺南大門にある金剛力士像やんけ!! ごっつ怖ぇ顔しとるなあー。




「でへへ」と俺が悪戯(いたずら)小僧のようなスケべ顔を浮かべると、殺人的な右ストレートが風を切って飛んできた。


「ひでぶッ!!」


 ミケ・タイソンも真っ青の顔面パンチに俺の身体は毬のように吹っ飛んだ。人間とは便利なもので、一定以上の痛みは無痛となるらしい。


 俺は混乱する頭に喝を入れながらよろよろと立ち上がる。鼻から噴き出た俺のヘモグロビンが鮮やかに全身を彩っていた。

 その光景は、まるで母鹿ははじかの子宮から産み出されたばかりの小鹿ちゃんのよう。


 流石は、女王……容赦ないゼ……

 ジーザス……!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「暫く、ここで待機していて下さい。あと、部屋の備品には絶対触らないで」


 生ごみでも見るような目つきで彼女は俺を部屋にぶち込んだ。

 俺は柔道選手のように受け身をとって、衝撃に備える。効果は上々……。あ。


――ギィィ、バターン!


 と大きな扉が閉じられた。そして、外側からガチャガチャと、嫌な音がする。


 ……ってか、あの女鍵かけやがったか?!


 扉に駆け寄って体当たりをかましてみるが、うんともすんとも言わない。


「マジか……」


 袋小路に追い込まれ、俺は膝を折った。


 全く、何て災難な日なんだ……今日は。

 今朝はニュース『ハローワクワク』の占い通り、ちゃんとLUCKY(ラッキー) ITEM(アイテム)・クリップを持って出掛けたというのに。


 そして、俺はポケットをまさぐる。


 おっ、あったあった。


 ソイツを取り出して俺は睨み付ける。


「何だよテメー。全然、役に立たねぇじゃん。もう明日から来なくていいよ」


 ブラック企業のハゲ部長風に俺は派遣社員クリップをその辺に放り投げる。

 彼は転職先を探すように転々と転がっていった。


――ふん。コイツを寄越しやがった人材派遣会社『ハローワクワク』とも契約切ったるわい。


 さて、クリップ君に戦力外通告を言い渡した所で、俺監督はぐるりと周囲を見回した。


 この部屋、ローズのような香水の匂いが充満している。そういえば、あのOLからも同じ匂いがしたっけ。

 

 となると、この部屋は彼女の私室と見てまず間違いないようだ。置いている家具の調度とか、小物類も何処となく女物っぽいし。

 

「ってことはだ……」


 俺は腕を組んで仁王立ちになる。

 胸の内にメラメラと燃え上がるものがあった。

 そう、これは本能。男としての、変態仮面としての。

 

「ある! ここにはアレがあるんだ! くっくっく……」


 誰だって、一度は経験あるだろう? 好きな女の子の部屋に入れてもらい、いとをかし。その甘い香り漂う空間にただ一人。


 俺の中のインディが「探し出せ」とジョーンズしている。

 

 ふふふ……良かろう。

 絶対に探し出してやる。貴様パンティをなァッ!!

作品はフィクションです。

くれぐれも変態仮面の真似だけはしないようにお願い致します。

さもなくば、明日の一面は貴方の痴態が飾ることとなるでしょう。

By リア充追放委員会 B.O.T.T.I

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ