戦うメイドと忍者(前編)
主人公は忍者です。しかし人は殺しません。
西山家の邸宅地下室。
たくさんある中の一番深いところにある地下室。
そこは、モニターやパソコン、通信機といった沢山の機材や装置がところ狭しと並んでいる。
そんな地下室に場違いな人間……メイドさんが何人もいた。
そして装置をいじったり、パソコンをカタカタしたりと忙しそうに動き回っている。
そんなメイドさん達を高いところから見渡すメイドさん一人、何やら電話機で話している。
―スミマセン。侵入を許してしまいました!―
「そうですか……仕方ありません」
メイドさんは沢山並んでいるモニターに目を向ける。
モニターには西山家の敷地に設置されている監視カメラから送られてくる映像を映している。
そのモニターのひとつになにか横切ったような影が一瞬映ったのにメイドさんが気付く。
「97番カメラをメインモニターに、少し巻き戻してください」
「分かりました」
大画面に映る映像を凝視する。
「巻き戻して……ストップ、スロー再生……ストップ!」
ストップをかけたところ、そこには忍者の格好をした人間が映し出されている。
「侵入者は忍者ですか……」
顎に手を当て、どうやら思案の様子。
(コスプレ……という様子ではなさそうです)
そんなことを思っている時だった。
―ジリリリリ、ジリリリリ―
けたたましい音が鳴り響く。
非常事態を知らせる赤い電話機が鳴っていた。
メイドはすぐさま受話器をあげた。
「なんですか」
―大変です!屋上に配置していた狙撃部隊が全滅しました!―
「死傷者の数は?」
―それが……誰も傷ついてないんです―
「……?どういうことです」
―どうやら狙撃部隊全員の銃が破壊されたようで……―
「では、部隊のメイド達は全員無事なのですね」
―はい―
メイドは一度受話器を耳から外し、敷地内に配置しているメイドの位置を映し出すモニターをみる。
「狙撃部隊は二手に分かれ、中庭のハウンド隊と邸宅内を警戒しているビーグル隊と合流してください。私のドーベル隊も出ることにします」
―了解しました!―
メイドは返事を聞くと受話器を降ろす。
「では、ここは頼みましたよ」
メイドはそう言うと部屋から出て行く。
出て行く時、少し口元がニヤリとしていた。
僕と舞は今、西山さんの家の玄関にいる。
あの後、僕は屋上から僕達を狙撃銃で狙う人達を、苦無を投げて無力化させてここまできた。
あ〜あ、苦無って結構高価なのに……。
後で回収しないと小遣いが減らされる……。
「兄さん、溜め息ついてどうしました?」
「別になんでもないよ。それよりどう?まだ時間かかる?」
舞は今扉の鍵穴にガチャガチャとピッキング道具を差し込んでいる。
「技術の進歩というものは素晴らしいものです。すでに10回も開け閉めを繰り返してます」
「もうとっくに開いてたんだね……」
「いま閉まってます」
……おい
「はい、兄さん開きました」
「それじゃ、堂々と真っ正面から入りますか」
僕は忍者刀に片手をかけ、扉を開き侵入する。
中は特に危険はなさそうだ。
それにしても広いな……。
「兄さん、どうしますか?このように広いと部屋も沢山あるはずです。探すのにも限界が……」
確かに一部屋ずつ探してたら夕飯に間に合わない。
「誰か捕まえて聞き出しますか?」
「……そうだね。その方が手っ取り早い」
それじゃあ誰か見つけないと……。
ん?気配?誰かくるな。
飛んで火にいる夏の虫 てか。
「兄さん、捕縛しましょう」
「そうだね……本気でいこう」
僕と舞は一瞬にして消えた。
「人数は……三人か」
天井にぶら下がりながら僕は呟いた。
さて、どうするかな……。
「兄さん、あまり夕飯まで時間がありません。このままでは母さんがお怒りに……」
「……強行策にでるか。時間が惜しい」
僕と舞は一瞬にして巡回中のメイドの前に現れる。
メイドさん達はかなりびっくりした様子だったけど、すぐにアサルトライフルをこちらに向けてきた。
「こちらC班、侵入者発見!直ちに応援を送ってれ!」
ひとりがインカムのマイクに怒鳴っている。
あ〜あ、応援呼ばれちゃった。
「兄さん、のんびりしてられません。応援がきます」
「そうだね、とにかく潰そう」
僕は忍者刀を抜き放つ。
『月影』
これが僕の忍者刀の名前。
幼稚園の頃からの僕の愛刀だ。
「容赦はしないよ」
僕は常人では目に見えない速度で間合いを詰める。
そして、光が一閃。
―チン―
勝負は一瞬だった。
僕は涼しい音を鳴らし、忍者刀を鞘におさめる。
その途端、バタバタとメイドさん達が全員倒れる。
「兄さん、なにやってるんですか!」
「大丈夫、峰打ちだから。まぁ、骨までは分からないけど……」
「そうではありません。これでは涼の居場所を聞き出すことができません」
「……しまった。久しぶりだったからつい」
「つい、ではありません」
「仕方ない、応援の人から聞き出そう」
ドタドタと足音が聞こえてきた。
「兄さん、今度はちゃんとしてください」
「わかってるって」
僕は今度は懐から苦無を取り出す。
「てい!」
掛け声と共に放った苦無は廊下の角から出てきたメイドさんに命中、柄の方だから気絶……だよね?
「行きます!」
舞が掛け声と共に丸くて黒っぽいものを投げる。
……あれ?もしかして爆裂玉?
―ズドン、ズドンズドン―
爆裂玉が爆発した。
その爆発にメイドさんもろとも僕達も吹き飛んだ。
「なんてことしてくれたんだ!」
「……張り切りすぎました」
吹き飛ばされた僕たちは中庭と思われる場所に難なく着地。
忍者で助かった。
「そこまでです!」
いきなり現れたメイドさん達、周りをぐるりと囲まれた。
張っていたな……。
「仕方ない、潰すぞ!」
「はい!」
こうして忍者とメイドの見た目不思議な戦いが始まった。
まず始めになかなか更新できなくてすみません。諸事情により書くことができませんでした。これからも精進していくのでよろしくお願いします。