涼、帰宅せず!
なんでメイドを出したんだろ……?
西山さんが涼を連れて行って大分時間がたった。
そろそろ夕飯時、涼はまだまだ帰ってきていない。
「霞〜、涼知らない?」
僕がリビングにある42型の液晶テレビでレンタルした映画を観ていると母さんが邪魔をしてきた。
「涼なら友人の家だと思うよ」
「あら、困ったわね。もうすぐ夕飯なのに……」
母さんがおたまを片手に、もう片方の手を頬につける。
―ピロピロピロ、ピロピロピロ―
僕の携帯の着信音。
一体誰なんだ?
携帯の液晶画面には『涼』と表示されている。
なんだ、涼か。
僕は観ていた映画を一時停止にして電話にでる。
「はい、もし――」
―あ!もしもし兄さん!―
『もしもし』ぐらい言わせてよ。
―助けて!西山さんに閉じ込められたんだ―
「そうか、夕飯までに脱出しなよ」
―ちょっと兄さん!?助けてよ!―
「お前だって忍者だろ、それくらい出来なくてどうするんだよ」
―出来ないよ!何度も試みたけど、ここのメイドさん強くて捕まっちゃうんだ―
やっぱりメイドさんただ者ではなかったんだ……。
―とにかくボクじゃムリなんだよぉ〜―
あらら、泣きそうになってるよ。
―見つけましたよ、涼様―
電話口からあの時のメイドさんの声がする。
―香苗お嬢様がお待ちです、ついて来てもらいますよ―
―い、イヤだ!―
―仕方ありません。無理矢理連れて……あら?外部と連絡をとっていたのですか―
―あっ!返して!―
どうやら携帯をとられたみたいだ。
切られるか?
―とにかく涼様はお嬢様の所にいってもらいます―
パチン
ん、何の音だ?指を鳴らしたのか?
その後にたくさんの人の足音。
―うわぁぁぁ!兄さん助けて〜―
どっかに連れて行かれたか……。
―もしもし―
携帯を切ろうとした時に聞こえたメイドさんの声。
「もしもし」
―涼様のお兄様ですね、お名前は確か……―
「霧島 霞だ」
―そうでした、霞様でしたね―
「で、涼は夕飯までに解放してくれるんですよね?」
―お嬢様次第です―
お嬢様次第ですか………
―とにかく、涼様の身は私達が責任をもってお守りいたしますのでご安心ください―
「いや、そういうこ――」
―ではご機嫌よう―
ピッ!、プー、プー
きっ、切られた……。
なんか強引だったな。
「電話、涼からだったの?」
「うん、そうだけどなんか帰れない感じだったよ」
「あら、どうして?」
「逃げようとしてもメイドさんに捕まるみたい」
「メイドさん?」
そりゃあいきなりメイドさんって言われても分からないよね。
「メイドさんって言ったら西山さんちのメイドさん達のことかしら?」
えっ……通じちゃった?
よく分かったね母さん。
……じゃない!なんで母さんが西山さんのメイドさんを知っているんだ!?
「母さん知ってるの!?」
「知ってるもなにも、『西山家メイド部隊』といえばこの町の主婦の間では有名よ」
は?西山家メイド部隊?
意味分からん。
「炊事、洗濯、掃除といった家事を完璧にこなし、なおかつ接客に緊急時の対象も完璧、侵入者に対する戦闘はアメリカ軍に一目置かれてあるのよ」
ア、アメリカ軍?
「そりゃあ涼では逃げれないわ」
「へぇ〜、そうなんだ」
「でも困ったわね……皆揃わないと夕飯にできないし……」
母さんは頬に手をつけて悩みのポーズ。
その時にリビングに入ってくる人間。
舞だ。
「……母さん、どうかした?」
母さんは入ってきた舞を見てポンと手を叩いた。
何か考えが浮かんだようだ。
「ねぇ舞、ちょっと涼を迎えに行ってくれない?あの子ったら帰ってこれないみたいなの」
「帰ってこれない?どこから?」
「西山さんち」
「……わかった」
了解はしたけどイマイチ『帰ってこれない』の意味が分かっていないみたいだ。
「そうそう、霞も行きなさい。どうせ暇でしょ」
「母さん、僕はまだ映画を――」
「行くわよね?」
有無を言わさない僕の母。
いつの間に包丁なんか持っているのでしょうか……。
「行けばいいんでしょ行けば」
僕は投げやりに答える。
逆らったら後が怖いし……。
「それと忍道具はフル装備で行きなさい」
「えっ?なんで?」
「それは行けば分かるわ、早く装備を整えていきなさい」
母さんは僕と舞をリビングから追い出した。
仕方がない、装備をとってくるか……。
僕と舞がリビングから出て行った後、母さんが『フフフ、二人にいい修行になるわ』と言っていたのを僕と舞は知る由もない。
どうも、読んでいただきありがとうございます。次はちょっとバトルが入る予定でいます。後、感想を書いていただくと嬉しいです。