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最終章・奪回、魔法協会

なんか、やる気なくなってどーでもよくなってきたこの頃



『上陸部隊、上陸を開始。被害は5%。当初予想より非常に少ないです』


ナビィの声が鳴り響いた。


「それはよかった。戦闘機は?」


『現在も交戦中』


「オーケー。とにかく私たちはあのデカ物をやるわよ!」





鳴り響く発砲音。断続的な爆発音。そして硝煙の臭い。

まさに戦場だった。


「舞、涼!ついて来てるか!」


「はい、兄上!」


「うん!」


霞達は、飛び交う銃弾の中を突き進んでいた。

敵に出くわせば瞬時に叩きのめし、魔法を撃たれれば忍者刀で打ち返す。


「黒き霧の機関員ばかり……!」


先ほどから、銃と魔法の攻撃しかしてこなかった。

忍者がいるなら、刀の接近戦や苦無、手裏剣の投擲による攻撃があるはずだ。

しかし、それがないというのは忍者はどうしたのだろうか?

事前情報では、数は少ないが派遣されているはずだ。


《忍者さん。聞こえますか?こちら、フェニックスオペレーターです》


「感度良好、よく聞こえる」


迫り来る火炎の塊を、忍者刀を振り抜いて流し打ちをした。


《魔法協会の方々の居場所が判明しました。地下室です》


「地下室?どうやって行く?」


《突き当たりに扉があるはずです。しかし、それはダミーで、地下室の入り口は扉の下です》


しばらくして、霞の視界に大きなアンティーク調の木製の扉が現れた。


「あれか……!」


霞は扉をけり破り、扉があった場所に爆裂玉|(大)をセットした。


「離れろ!」


霞が言うとほぼ同時に、爆裂玉が爆発を起こした。

粉塵が舞う中、霞は目を凝らす。

爆裂玉の爆心地には、ポッカリと穴が空いていた。


「……発破したが、もしかしてダメだったか?」


今更だった。


《どうしました?》


「いや……敵の攻撃の爆発で、地下室の入り口が破壊された」


《大変!急いで突入して救助してください!そこだけが唯一の出入り口何ですから!》


「そいつは大変だぁ!」


白々しい霞に、妹たちの白い視線がビシバシと突き刺さる。

霞は全く堪えてないようだが。


「さて、敵に破壊されたが……突入だ!」


堂々と、躊躇いなく、霞は敵のせいにした。


「兄上は敵でしたか?」


「何のことだ?僕は何もしてないぞ。なぁ涼」


「えっと……ボクは目を閉じてたから」


いきなりふられても困る。

兄と姉、どちらに味方したとしても、後でひどい目に合いそうだ。

だから涼は適当にごまかした。


「とにもかくにも突入だ。簡易擬態させたとしても、精々リミットは五分だろう」


「そうですね。急ぎましょう」


「涼、ここの簡易擬態を頼むぞ」


「うん」


涼がこくりと頷いたのを確認して、霞と舞は穴の中に飛び込んだ。





その頃、フェニックスでは美里が声を張り上げて指示を飛ばしていた。


「前方シールド30%強化!推力10%減少!」


『敵、超硬レールガンに高エネルギー反応!』


「進路変更、面舵いっぱい!緊急降下!」


その途端、体が宙に浮く感覚を感じてフェニックスが降下する。

シャトルスがレールガンを発射する。

アルミとオリハルコンの合金でできた弾が、光を伴ってフェニックスの強化シールドに直撃する。

ビリビリと強化シールドが大きく振動し屈折する。同時に、衝撃でフェニックスが揺れた。

弾は、しばらく強化シールドを屈折させていたが、弾力のある強化シールドのせいで進行方向が変わって、そのまま飛んでいった。


「戦闘機は!?あのレールガンを攻撃してるの!?」


「弾幕で近付けないとのことです!ミサイルも撃ち落とされます!」


『高度なイージスシステムを採用しているのでしょうか?』


「知らないわよ!解析しなさい!」


『分かりました』


シャトルスが速射砲といった大量の砲装備で砲撃を行ってくる。まさに鉄の雨だ。

強化シールドのおかげで、フェニックス本体にはダメージはないが、シールド発生装置にかなりの負担がかかっている。


「全砲門、シャトルス艦橋に集中砲火!」


フェニックスに装備されている砲装備が、すべてシャトルスの方向に向く。


「ファイヤー!」


レーザーと砲弾が一斉掃射された。

シャトルスに直撃し、爆発を伴って艦橋部分が傾いていく。

爆発が爆発をよび、分厚い装甲が吹き飛んでいく。

風前の灯火だった。

トドメを刺すため、四機の戦闘機がミサイルを撃ち込む。

弾薬庫に引火したのか、今までにない大爆発を起こし、バラバラになりながらシャトルスは墜ちていった。


『敵艦撃沈……』


「終わったぁー!」


緊張感が抜けた美里は、背もたれに仰け反った。


『副長、まだ航空部隊が』


「大丈夫、心配ないわよ。時期に撤退するわ。燃料も多くないでしょうしね」


ぐいっと美里は背中を伸ばした。


「とにかく、フェニックスを停めましょう」


『分かりました。これより自動操縦に切り替えます。皆さんはしばし休憩してください』





その頃、霞と舞は薄暗い通路を突き進んでいた。


「この先に気配が」


「やっと着いたか」


緩やかに走る速度を緩めていく。


「扉……?」


アンティーク調の木製の扉が現れた。

霞はゆっくりと扉を開いた。

中にいる人が息をのむのが分かった。


「…………」


中には、ローブに三角帽子といういかにもな人達が潜んでいた。

霞は、その人達を無言で見渡した。


「あ……、霧島の者です」


お届けものです、というような宅配便の人のように自己紹介。

その言葉に、緊張していた魔法使いはホッとするのがわかった。


「霧島の忍者が来たということは、助けがきたのですね」


全身真っ黒な格好をした女性が近づいてきた。

まさに、魔法使いといった格好だ。しかし、気味悪さはなく、むしろ高貴な感じを漂わせていた。


「今、暗部の機関員が掃討作戦を行っている」


「そうですか……では皆さん、私達も行きましょうか」


そう一言いうと、いく人かの魔法使いの姿が消えた。


「そういえば、あなたは加奈と知り合いでしたね?」


「加奈?あぁ確かに」


霞は頷いた。


「あの娘は現在負傷してまして……出来るなら治療を」


「……舞、治療を」


霞は背後に立っていた舞に言った。


「どこにいますか?」


「奥の部屋です」


舞はスタスタと奥の部屋に入っていった。

同時に、霞の通信機に通信が入る。


《こちらオペレーター。施設内を制圧しました。そちらはどうです?》


「こちらも保護した」


《そうですか。よかった》


ふと、よぎった引っ掛かりを感じて霞は尋ねた。


「忍者は……見たか?」


《忍者ですか?しばらくお待ちください》


通信機がしばらく沈黙した。


《いえ、忍者は確認されていません》


「おかしいな……」


霞は眉をしかめた。


「どうしました」


「いや、忍者が確認されていないんだ。どこに潜んでいる……」


その瞬間だった。


「こんなところに隠れていたか」


部屋に男の声が響いた。

低く、冷たい声だ。


「……に……兄さん…」


「……涼!」


ズタボロになった涼が、ひょっとこのお面を被った忍者に捕まっていた。

涼の忍装束は、至る所が切り裂かれていた。


「……貴様、何しやがった」


珍しく、敵意剥き出しで霞は威圧的に言った。

目は鋭く細められ、臨戦態勢だ。


「小細工をしていたからな。ただ邪魔を排除したまでだ。しかし……坊主と思ったら嬢ちゃんだとはな」


――ガチン!


金属音が響き渡った。

霞が瞬時に斬り込んだのだが、苦無によって阻止された。

鍔迫り合いにより金属が擦れ合う音が響き、火花が散る。


「涼になにしやがった」


「何もしてないさ。今はな」


霞は力押しで忍者刀で苦無を払う。

そして一歩踏み込み、腰の捻りと腕の力を使い、忍者刀を方向を変え、大きく横に斬りつける。


――ガキッ!


再び、忍者刀と苦無が火花を散らす。

霞は連続して斬り込んで畳み込む。相手の忍者は防戦一方だった。

しかし、厳しい状況であるはずなのに、焦っている様子はない。むしろ、余裕に思えた。


「怒りは周囲を曇らせる」


「そんなの――!」


知っているとは言えなかった。

周囲に細い糸が張り巡らされており、それに気付いた霞は瞬時に離脱を試みたからだ。


「無駄だ!」


「――っ!」


細い糸が爆発を起こした。糸に超高性能爆薬を編み込んでいたようだ。


「奥義・爆裂蜘蛛の巣。焼け死にな」


「……そうはいかないんだよ!」


炎獄の中から、霞が飛び出してきた。

そして、そのまま斬りつける。

霞の斬撃を、寸前のところでかわしたが、ひょっとこのお面は真っ二つとなり、素顔が現れる。


「くぅ……!」


「残念だな。さっきのは変わり身だ!」


更に一歩踏み込む。


「我流・紫電颯刃!!」


忍者刀の背が、鳩尾にクリーンヒットした。

そのまま、相手は吹き飛んでいき、壁にぶちのめされる。

起き上がる隙を与えず、霞は追撃を行い、相手の鳩尾に拳を喰らわせた。


「ぐぅ……!」


更に霞は拳を振り上げて、


「終わりだぁ!!」


思いっきり叩き付けた。

衝撃で、大理石っぽい床がヒビが入るぐらいだ。

相手の忍者は白目を剥き、口からは泡を吹いて気を失った。


「……貴様は手を出してはいけない一つに手をかけた。愚行だったな」


そう呟くと、倒れている涼の所にいってしゃがみ込んだ。


「大丈夫か?」


「……精神面が酷いかも」


「……そうか」


霞はそれ以上詮索せずに、涼を持ち上げた。

何があったかは聞かない。涼もきっとあまり言いたくないだろう。


「……ちょ、兄さん。これは流石に恥ずかしい」


涼は俗に言う"お姫様だっこ"の状態で霞に持たれている。

あまりの恥ずかしさに暴れ出す。


「コラ、暴れるな。落としてしまう」


「下ろして!下ろしてぇ!!」


「はいはい。舞に手当してもらいに行こうな」


「いやぁ!自分で歩くぅ!」


「無理言うな」


そんなやりとりをしながら、霞と涼は舞のいる奥の部屋に消えていった。


「あらあら、微笑ましいわ」


スッカリ忘れ去られていた黒衣の女性が、口に手を当てて柔和な笑みを浮かべていた。


魔法協会、奪還。

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