番外編・涼、散々な一日(中編)
ちょっと短いかも……。
あ〜〜、暑いよ………。
太陽もこんなに頑張らずに、もう少し控えめにしてくれないかな……。
その分、冬に頑張ってくれればいいから……。
ボクは霧瀬市の繁華街を歩いている。
駅から少し離れたところだ。
夏休みということもあってか、若者たち(ボクらを含む)で溢れかえっている。
むぅ……人混みは苦手なんだけどな……。
「とりあえず、あそこのデパートに行きましょう。そこなら大体のものはあるはずです」
「そうね、舞ちゃんの言う通りね」
「そうと決まれば、さぁ行きましょう」
あの……、ボクに発言権はないのでしょうか……?
仕方ないので、ボクは姉さんたちの後ろを歩いていった。
○
「……アレ?」
最初に気付いたのはボクだった。
「どうしました愚妹」
「うん、あそこ……」
そう言って、ボクは向かい側の歩道を指差した。
姉さんたちも、つられてそっちを見る。
「あそこにいるの……兄さんじゃない?」
「……確かに兄上です」
「カスミさんですね」
そう、兄さんがいた。
しかも……
「女の子が一緒にいるね」
「鳴海先輩ですね」
「…………」
朱里さん、沈黙が怖いです。
目が……なんか鋭いです……。
とにかく、兄さんが鳴海先輩と一緒にいた。
もしかして……デート?
「もしかして兄さん、鳴海先輩とデートしてるのかな?」
この問いかけに反応したのは、朱里さんだった。
「ハハハ、なに言ってるの涼くん。そんな訳ないじゃないですか。カスミさんと私は許嫁の関係ですよ。つまり、婚約者な訳ですよ。もしデートでしたら浮気ですよ浮気」
「お、落ち着いて朱里さん」
「そうです。落ち着いて下さい。落ち着いてその苦無を納めてください!」
「なに?私は至って冷静ですよ?あの女をどうやって消すか、計画を立てられる位にね」
「ダメだよ!早まっちゃダメだよ!」
「そうです。今、鳴海先輩を消したら、朱里さんは兄上に嫌われます!」
「嫌われる?」
ピクッとして、殺気立っていた朱里さんが、急にブルーな雰囲気を醸し出した。
「…やはり、私はカスミさんに嫌われてるのでしょうか……」
『えっ?』
あまりに予想していない展開になったので、ボクと姉さんは同じ声を発した。
「最近冷たいですし、あまりに話しませんし、一緒に出掛けたくても既に居ませんし、ほかにも………」
……なんか、ドンドン朱里さんが沈んでいく。
「どうせ私なんか……」
「だ、大丈夫だよ……多分」
「多分ですか……」
あわわ、どうしよう〜〜、やっちゃったよ。
姉さん助けて〜。
「大丈夫です。兄上は朱里さんを嫌っていません」
「……本当?」
「はい。ただし、恋愛感情は無いでしょう。兄上はただの"居候"として、朱里さんを見ています」
「居候か……」
「居候です」
「でも、考えてみれば、まだチャンスはあるんですね」
「あります」
「そうか、なら頑張ります!!」
どうやら元気になったらしく、片手拳を上げている。
「何を頑張るんだ?」
『うわぁぁ!』
突然、かけられた声にみんな驚いた。
後ろを振り向くと、
「に、兄さん」
「兄上…」
「カスミさん」
兄さんだった。
隣には鳴海先輩もいる。
「なんだ、そんな驚いて?」
「いや、別に……」
「それより兄上、鳴海先輩と、その……デ、デートですか?」
「は?」
姉さんの言葉に、兄さんはポカンとする。
鳩が豆鉄砲をくらった感じ。
鳴海先輩は先輩で顔を真っ赤にさせて、頬に手を当ててクネクネしているし、朱里さんは無表情で、じ〜〜〜〜っと兄さんを見ている。
だから朱里さん、怖いですって。
「あ、いや……。本当は東を含めた三人で映画に行くはずだったんだかな。東の野郎、昨日飲んだ牛乳が腐ってたらしくって、腹がヤバいと電話してきてな。結局、二人でこうして行ってるのさ」
「でも、それって結局デートじゃないの?」
「そうなのか?……こういうのデートっていうのか涼……?」
全く、この兄さんは……。
色恋沙汰に興味ないんだから……。
少しは青春したらいいのにって思う。
「そうです!デートなのです!」
鳴海先輩はそう言うと、思いっ切り兄さんの腕に引っ付いた。
兄さんは、突発的な先輩の行動にかなり驚いている。
そして、そんな鳴海先輩を見て、反応を起こした人間が一人いた。
「なぁぁぁにぃぃぃしてるですかぁぁぁ!!」
もちろん朱里さんだ。
怒声を響かせ、鳴海先輩を引き離そうとする。
だけど、鳴海先輩もしっかりと兄さんの腕に引っ付いて抵抗している。
「離れなさい。今すぐカスミさんから離れなさい!」
「イヤだね」
「離れなさい!泥棒猫!」
「誰が泥棒猫よ!この腹黒女!」
「私は腹黒くありません!」
兄さんを挟んで、ギャアギャアとふたりは罵りあう。
どんどんと、雰囲気が鋭く、黒くなってきた。
兄さんはかなり迷惑そうに、そして必死に何とかして鳴海先輩が掴む……もとい、抱きしめている腕を外そうとしている。
「くっ、外れない……!舞に涼、見てないで助けてくれ!……ええい、何でこの二人はこんなに仲が悪いんだ!」
それは兄さんが悪いんだよ。
それに、なぜか分からないけど、嫌な気分だし……。
なんか、ムカつく。
「あぁ、クソ。雰囲気にやられて胃が痛くなってきやがった。……とにかく離してくれ鳴海!この空間から逃げたいんだ!」
『ウルサい!ちょっと黙っててよ!』
「……ウルサいのはお前たちだよ」
『なんか言った?』
「いえ、なにも……」
ちょっと反抗したんだけど、兄さん、弱い……。
でも、あんなのに睨まれたら仕方ないよね。
「兎にも角にも、決着をつけないといけないみたいだね」
「そのようですね」
周りにさらに剣呑な雰囲気が流れる。
ちょっと、苦無を出さないで下さい朱里さん!
それに鳴海先輩も、何エアガンなんか取り出してるんですか!?
「ちょっと待ってください。ここで殺り合うには人目につきます」
姉さん、その止め方はどうかと……。
「場所を変えるべきです」
「……確かに、そうかもね」
「舞ちゃんの言う通りね」
あ〜〜あ、なんか変な方向に進んじゃってるよ。
一体何しに来たんだっけ?
「全く、この二人にも困ったものだな」
「そうだね、兄さん……」
「…………」
「…………」
「あれ?兄さん?いつの間に?」
気付いたら横に兄さんが立っていた。
あの喧騒の中心にいたはずなのに……。
「……あぁ、何とか逃げてきた。もうすぐ映画が始まる時間だしな。ということで、後は頼んだ」
兄さんはそう言い残すと、フッと姿が消えた。
そんな……後を任されても困る。
でも、この人達どうしょう……。
なんか、殺る気でいるし……。
それに姉さんは、面白がって煽ってるし……。
あぁ…、もうボク帰っていいかな……?
どうも〜、月見岳です。
やっぱ、コメディーっぽいのは書きやすいですね〜。
……ハッ!新キャラ忘れてた!
次回こそ、次回こそは……。
話は変わりますが、ちょっと気まぐれで涼を描いてみました。
……ビックリです。二頭身キャラでしか描けなくなってました。
まぁ、絵を描くのは苦手なんですけどね(笑)
自己満足です。
あと、皆さんいつでも好きなキャラを教えてください。