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番外編・涼、散々な一日(前編)

番外編です。

涼が主人公です。

うぅ、ミンミンと蝉の声が朝っぱらから聞こえてうるさいったらありゃしない。

せっかくの夏休みなんだ。別にいつも通りに起きなくてもいい。

まだ、昨晩つけていたクーラーの冷気が残っていて、これがまた二度寝するのに最適な温度にしてくれている。

これは二度寝しないとね。

……と言うことで夢の世界にいってきます。


「起きろ愚妹」


ドゴォ!

壮絶な音を立て、強烈な姉さんの踵落としがボクの腹部にめり込んだ。


「くぅ……な…なにをするんだ…姉さん」


「夏休みだからといって、いつまでも寝ている愚妹が悪いのです」


「だからと言ってこんな起こし方はないよ」


「ならこれを使いましょうか?」


そう言って姉さんは一抱え程ある丸い球体を取り出した。

中にはきっと火薬が大量に入っているんだろう。

こんなもの使われたら、この家が吹き飛ぶよ……。


「今回は新たなチャレンジとして、プルトニウムを使ってみました」


「……え?」


プルトニウム?

……ヤバいよそれ!?

あらゆる面でヤバいよ!?


「冗談です」


……え、冗談?

そうだよね。冗談だよね。

普通に考えたら冗談だよね。

あ〜あ、一気に目が覚めちゃったよ。


「目が覚めたみたいですね愚妹。早く着替えて朝ご飯を食べに来なさい」


「うん、わかった」


姉さんはボクの部屋からスッと出て行った……と思ったら、ドアを少しだけ開けて


「さっきのは冗談です」


そう言って閉めた。


……えっと、なにが?

まさか冗談が冗談だとか?

……それだけは違ってほしい。


ボクはそう思いながら着替えるのだった。





「おはよー」


ボクがリビングに行くと、テーブルの上にトーストと目玉焼き、そして牛乳が置かれている。


……あれ?兄さんの姿が見えない。

まだ寝ているのかな?


「姉さん、兄さんまだ寝てるの?」


「兄上はすでに出かけました。愚妹、あなたと一緒にしてはいけません」


「……姉さん、ひどい」


でも、兄さんが休みの日にこんな早く出掛けるなんて珍しい……。


ボクはそう思いながらトーストをかじる。


「あら、涼くんは今起きたの?」


「あ、朱里さんおはよー」


「おはようございます」


台所にいたのか、エプロン姿の朱里さん。

なんというか、様になっている。


「あら………」


「??」


朱里はボクを見て少し困った顔をする。

ボクの体全体を見ている。


何か変なとこでもあるのかな?


気づけば、ボクはトーストをかじったままの状態で止まっていた。


「……女の子っぽくないわね」


「ふぁい?」


あ、トーストかじったままで返事したから変な声になっちゃった。

特におかしくはないと思う。

普通のジーンズに半そでのTシャツ。

しかも、Tシャツは柄物でなく無地だし……特に問題ないと思う。


「涼くん、女の子なんだから男物の服装は……」


「駄目ですか?」


確かに、どれも男物ではあるが、今まで着ていたものだし……。

というより、女物の服なんて無い。


「駄目って訳じゃないんだけどね〜」


「女として自覚がありません」


そりゃ、ちょっと前まで男だと信じて疑いませんでしたから。

それに、今だって男だと思ってるし……。

というか、そう思わないとボクの色々なものが壊れる。


「……愚妹、いい加減に現実と向き合いなさい」


「…………」


「あなたは"女"なのです」


分かってるよ。

だけど……


「ボクは……やっぱり男だよ。産まれてから十数年間そう過ごしてきたんだ。今更変えられないよ……」


そう、やっぱりいきなり変われっていうのは無理なんだよ。

ボクが俯いていると、それを無表情で見ていた姉さんが、


「なに柄にもなくシリアスになってやがるんですか愚妹。変な物でも食べたんですか?意地汚い。あっ、そう言えば愚妹の分の牛乳は消費期限が3日前に切れていましたね。それが原因でしょうか?とにかく、愚妹、あなたにシリアスな雰囲気は5年早いです。そんな雰囲気をかもし出すくらいなら、とっとと朝ご飯を食べてください。後あなたの食器を洗うだけですから」


……凄いや姉さん。噛まずにあんなにまくし立てることができるなんて。

そう言えば、なんか姉さんがボクを馬鹿にしてたような……それに、牛乳がどうとか言ってた気がするけど、姉さんの話すスピードが早くて聞き取れなかった。


「姉さんよく――」


「そんなことはどうでもいいです。早く食え」


そう姉さんは言うと台所に消えていった。

なんか、誤魔化された気がする。

ボクはなにか引っかかる感じを覚えながらも、朝食をとり始める。

そして、牛乳に手をかけたとき……


「あっ、涼くん。それはやめた方が……」


「えっ?」


「あ、アイスコーヒー煎れてきますね。ついでにその牛乳、捨ててきますね」


朱里さんは、ボクから牛乳の入ったコップを掻っ攫うと、姉さんと同じく台所へ消えていった。

ボクも家事手伝ったほうがいいのかな?

姉さんよりはできる自信あるし……。

姉さんの作る料理、不味くはないんだけど美味しくもないんだよね。

なんか……そう、味がない。

その一言に尽きるんだよね。


そんなことを考えていると、額になにやら衝撃と痛みが走った。


「〜〜〜〜〜っ」


声にならない悲鳴をあげる。

どうやら、お玉が飛んできたみたい。


「愚妹、さっき失礼なこと考えましたね」


「そんなこと、思ってないよ」


「はいはい、嘘だって丸分かりです」


姉さんは再び台所へ消えていった。


……ところで、お玉はどうするの?




朝食を食べおわり、自分の部屋で漫画を読んでいる時だった。


―トントン―


ボクの部屋がノックされた。


「どーぞー」


「邪魔します、愚妹」


「どうしたの姉さん」


「出掛けます。とっとと準備しやがれ」


「えっ?どこに?」


「そんなの着けばわかります。では下で待っています」


バンと音を立ててドアを閉めて、姉さんはボクの部屋から出て行った。


(一体なんだろ?)


と思いながら、取り敢えず、愛用五年になる小さな肩掛けのカバンに、財布と携帯を放り込む。

うん、特にほかに入らないからこれでいい。


カバンを肩に掛け、下に降りて、さあリビングに――


「遅い」


姉さんの短い言葉を認識したと同時に顔面に衝撃を受けた。

突然のことだったので、衝撃に耐えきれず、そのまま体が後ろに傾いて――


「ヒギャ!」


ゴチンという音が聞こえたと思う。

後頭部を思いっ切り床に打ちつけた。

一瞬、意識がブラックアウトしかけた……。


痛む後頭部をさすり、何とか立ち上がる。


「……姉さん。何するのさ」


「ただクッションを投げただけです。大袈裟すぎです愚妹」


「……クッション?」


確かに自分の足下には、いつもソファーの上にあるクッションが転がっていた。


「それすら気付きませんでしたか……忍者失格です」


「……むぅ」


それは酷いよ姉さん。


「ほら、二人共。遊びはそこまでにして出掛けましょ」


視線で火花を散らしていたボクたちの間に入ったのは、朱里さんだった。

あれ、朱里も一緒に出掛けるの?


「そうよ?」


「!なんでボクの考えてたことが!?」


「声にでてましたよ愚妹」


「…………」


あ、そうなんだ……

今度から注意しよう。


「ところでさ、ボクたち何しに出掛けるの?」


ボクがフツーに疑問に思っていることを言う。

いきなりボクの部屋にやって来て、とにかく出掛ける準備をしろだし……。

外はくそ暑いのに出かけるなんて、訳が分からない。


「あぁ、言ってませんでしたね。これから衣料品を買いに行くのですよ。愚妹、アナタのね」


「服?いーよ別に……」


「ダメ、涼くん。地味な服……というより、男性物の服しかないんだからちゃんと買わないと」


そう言われても……

別にボクは服装なんてどうでもいいし……。


「愚妹、あなたの意見はまったく反映されません。母さんからの厳命です」


え……


「もし、拒否した場合は明日から"メイド服"というもので生活だそうです」


イヤだーーー!!

ゼッーーータイに嫌だ!!

そんなの着たらボクの尊厳というか、なんか色々なものが霧散しそうだ。


「それが嫌なら……分かってますね?」


「……はぃ」


「朱里ちゃん、なんか怖い」


うぅ、なぜだろう。目から涙が……。


ボクは姉さんに引きずられて、泣く泣く服を買いに行く事になったのだった。


誰か、助けて……

どうも、月見岳です。

今回は番外編ということで、涼が主人公です。

この番外編で新キャラでも出したいな〜とでも思っています。

気づけばこれで三十話、グダグダとやっていましが、結構いけるもんですね。

ふと思いましたが、この小説のキャラはどれが人気があるのでしょう?

というより、この小説キャラが少ないか?

もしくは霧島家の子供たちのキャラが濃くないか?

いや、除霊にエアガンを使う巫女の鳴海もインパクトが……どうだろう?

東は論外か……。

ということで、皆様、できればこの小説で好きなキャラを教えてください。

お願いします。

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