霞、襲われる。
評価感想、してくれると嬉しいです。
現在、日本中の子供達は夏休みの真っ盛り。
宿題そっちのけで遊びまくっているだろう。
それは、僕にも当てはまることで、今はリビングで夏の甲子園を観ている。
「あ、ホームラン」
画面では、投手がガックリと膝をつき、ホームランを打ったバッターは片手を突き上げてダイヤモンドサークルを走っている。
「あら、打たれちゃったの」
母さんがリビングに入ってきた。
両手にエコバックを持っており、ご丁寧にネギが飛び出していた。
……ウチにいる女性陣はなぜこんなに暑いのに汗をかかないのだろう?
女性陣……この中に新たに組み入れられた涼は、特に変わった様子は無い。
ただ、現実から逃げているようだ。
まぁ、そのうち、現実と向き合わなければいけなくなるだろう。
その時、どうするかは涼次第だ。
……柄にもないことを考えてしまった。
暑さのせいで頭がオーバーヒートを起こしているのだろうか……?
だったら、少しヤバいかな……。
「ちょっと、霞。聞いてるの?」
ヤバいヤバい。
考え事をしていて、母さんの話聞いてなかった。
「ごめん、聞いてなかった」
「全く、あんたって子は……」
母さんがハァとため息をつく。
「そんなんだから女の子にモテないのよ」
「別にいいよ、モテなくても」
別にモテないからといって、困ることはない。
……僻みじゃないよ?本心だから。
まぁ、僕には恋愛なんて無理な話だよ。
初恋だってしてないね。
「……あんた、そんなこと言って悲しくない?」
「……?まったく」
母さんが呆れた感じで僕を見ている。
なんか、おかしいこと言ったか?
「……青春時代が台無しね」
「え?なんだって?」
「別に、何でもないわ。……あらら、人参とジャガイモ買い忘れてたわ」
母さんは頬に手を当て、困った表情。
「ちょっと、霞。買い物行ってくれない?母さん、夕飯の支度しないといけないから」
「え、ヤダ」
僕が即答すると、ソファーの前にあるテーブルにドンという音を立て、包丁が突き刺さった。
おそるおそる後ろを向くと、母さんが笑顔で……
「次は……無いわよ?」
「行ってきまーす!」
僕は、さっき母さんが使っていたエコバックを持つと、リビングから飛び出した。
全く、朱里さんだったら、買い忘れとかしないのに……。
ちなみに、すでに我が霧島家は、家事全般が朱里さんに依存している。
母さん曰わく、『花嫁修行よ』と言っているが、母さんが楽したいだけだろう。
現在、朱里さんは里帰りをしており、久々に母さんが主婦の働きをしているのだ。
「全く、母さんも人使いが荒いよ」
僕はブツブツ文句を言いながら商店街を歩く。
威勢のいい声が飛び交っている。
え、展開が早い?
僕の自慢の"俊足"で来たからそんなに時間がかかってないのだ。
僕はいつも買っている八百屋で、人参とジャガイモを買うと、(思いっ切り値切った)帰宅の途へつく。
―ピロロロ、ピロロロ―
突然、僕の携帯が鳴った。
液晶画面を見ると、母さんからみたいだ。
「何、母さん?」
「あ、霞?ついでに卵買ってきてね」
ブチ、ツーツー
母さんは用件だけ言うと勝手に切ってしまった。
全く、母さんって――!
――思考中断。
僕目掛けて飛んできた飛来物を人差し指と中指でキャッチする。
一体何事だ!?
飛来物を確認すると、僕もよく見る"手裏剣"だった。
同業者の仕業……。
一体誰がこんなことを……。
人通りが多い商店街で襲ってくるなんて……。
誰かに当たれば危ないですまないぞ。
僕は周りを見渡して見るが、周囲に人がたくさんいて、特定する事ができない。
とりあえず、早く卵を買って、人通りの少ない場所に行かなければ……。
最悪、周りを巻き込んでしまう。
「急ぐか……」
僕は走り出した。
……卵って、なに屋さんで買えばいいんだ?
○
なんとか、卵を探し出して買い、今度こそ帰宅の途へつく。
ちょっと前のこともあるので、出来るだけ人通りが少ない場所を歩く。
え?人通りが多いとこの方が狙われにくいだって?
確かにそうかもしれないが、僕を狙ってきた同業者に興味があってね。"生け捕り"にしようと思ってるんだ。
さて、一体こんなイタズラをする同業者はどんな奴だろうか?
お仕置きをしないとね〜。
……!どうやら、お見えになったようだね。
後方、50メートル。
様子見ってところか……。
「――っ!」
敵、後方より急速に接近!
人通りがないといっても、住宅地での戦闘は避けたい。
なら、とりあえず逃げるのみ!
僕は近くの家の屋根に飛び乗り、屋根づたいに跳んで行く。
背後から僕を追いかけてくる気配が一つ……いや、二つだ!
とにかく、人がいない場所……ちょっとばかし暴れられる場所は……。
僕は跳びながら周りを見渡す。
あった!工事現場!
マンション建設現場だったけど、会社の倒産で工事がストップしているってところだ。
あそこなら誰もいないし、多少暴れても大丈夫だな。
僕はその工事現場へ向かって跳んだ。
……卵、割れてないよね……?
○
「……さてと」
僕は中途半端に建っているマンションの鉄骨の上にいる。
追っ手を待ち受けている最中だ。
「……!」
僕の向かい側の鉄骨の上に二人の忍びがシュッと現れる。
僕はその二人を睨みつける。
「……おまえさん方、一体なにが目的だ」
「…………」
「…………」
二人の忍びはだんまりだ。
その代わり、行動で二人は意思を示した。
一人は忍者刀を構え、もう一人は手裏剣を指の間に大量に構えている。
敵意剥き出しだ。
「……同業者に恨まれるようなことした記憶ないんだけどな」
話せば分かる、なんて言っても聞くような相手じゃないし……。
とりあえず、相手してあげるしかなさそうだ。
「……仕方ない」
僕はそう呟くと、エコバックを放り投げ、着ている服を一気に剥ぎ取る。
その下から現れたのは忍び装束。
重力に従って落ちてくるエコバックを受け取り、
「相手、してやるよ!!」
と言う。
……エコバックを持った忍者って滑稽だよね。
そんな事より、お二人さんだ。
エコバックが邪魔だが……何とかいけるか?
僕は腰の後ろにある忍者刀『月影』を抜く。
夕陽の光を受けて、刀身が朱くなっている。
なんとも幻想的だけど、エコバックでぶち壊しだ。
「来ないなら……こっちから行くよ」
僕がそう言うと、二人は行動を起こした。
煌めきを放ちながら、大量の手裏剣が迫る。
それを僕は跳んで避ける。
そのまま、別の鉄骨に着地。
その着地を狙って、もう一人の忍びが忍者刀で斬りつけてくる。
―カキィィィン―
甲高い金属音が鳴り響く。
僕が忍者刀を"月影"で払ったからだ。
そのお陰で、相手の懐に一瞬の隙ができた。
僕がその隙を見逃す筈もなく、相手の懐の中に、火のついた爆裂玉(舞特製)を入れてあげる。
そして、相手の腹に蹴りを入れ、吹き飛ばす。
―ズガァァァァン―
吹っ飛んで、さらに爆発を受けて吹き飛ぶ忍者。
爆発をもろに喰らっているから、死んでなくとも戦線に戻るのは無理だろう。
「……あとは、お前さんだ」
「…………」
やっぱり、撤退してくれないか……。
一人倒せば、撤退してくれるかなって思ってたけど……甘かったか。
「ていや!」
「…………」
ほぼ、二人同時に放った苦無。
その全てが空中で激突する。
僕は瞬時に移動。
敵の側面から斬りつける。
手応えあり。
「――っ!変わり身!」
そこに突っ立っていたのはデカい丸太。
クソ、やられた!
僕は、別の鉄骨に飛び移る。
その瞬間、元いた場所に大量の苦無が突き刺さる。
おいおい、鉄骨に突き刺さってるよ……。
僕は振り返ると同時に、敵の位置を確認。
ありったけの手裏剣を放った。
しかし、残念ながら直撃する事はなかった。
まあ、カスったかもしれないが……。
再び飛来する手裏剣。
一体、どんだけ持ってんだ!
僕は月影を巧みに操り、半分を避け、半分は弾いた。
「霧島家奥義、斬撃・鎌鼬!(カマイタチ)」
月影を素早く振り、鎌鼬を発生させて遠くの敵を斬りつける技で、僕の十八番だ。
真空の刃は、敵の忍者に向かっていく。
「………!」
敵の忍者は何かに気付いたらしく、体を捻る。
真空の刃は敵の忍者の肩を斬りつけた。
忍者は肩を押さえ、しゃがみこむ。
「まだまだ!!」
僕は一気に敵の忍者と距離を詰める。
これで勝負をつける!
「我流・紫電颯刃!(しでんそうは)」
忍者刀で、ただ純粋に斬りつける技なのだが、高速で斬りつけるため、刀身の周りに真空の刃ができ、例え刀身が当たらなくとも、真空の刃で斬りつけることができる技だ。
―キイィィィィィン―
「――っ!」
なっ、防がれた!?
最初に倒したはずの忍者が僕の月影を……。
「ぐっ!」
突如、腹部に感じた圧迫と痛み。
蹴り込まれたか……。
蹴り飛ばされた僕。
なんとか体勢を立て直し、鉄骨に着地。
痛みをこらえ、敵の方を見る。
肩を怪我している忍者を、もう一人の忍者が抱えて……って、逃げるのか!?
「お、おい!?」
僕の叫びも虚しく、敵の忍者は煙玉を投げ、煙幕を張ってしまった。
「ケホ、ケホ」
せき込みながらも、僕は団扇で煙幕を晴らす。
え、なんで団扇があるか?
忍者だから。
「あ〜〜あ、逃げられた」
せっかく、痛めつけて生け捕りにして、何で僕を襲ったか問い詰めるつもりだったんだけどな……。
逃げられたんじゃ仕方ない。
とっとと帰……。
僕は手に持っている筈のエコバックがないことに気づく。
あれ?どこにいった?
キョロキョロと周りを見渡す。
そして見つけてしまった。
地面に落っこちているのを……。
見事に卵が割れている。
「なんじゃこりゃあぁぁぁぁ!?」
夕闇の霧瀬市に僕の叫びが響き渡った。
結局、霞は卵を自腹で買い直した。
さらに、今回の戦闘で紛失した苦無、手裏剣の数が多く、母さんに怒られた上に、小遣いの2ヶ月停止を言い渡された。
あの忍び共、許すまじ!
誰か、助けてください! ……どうも、月見 岳です。 参った。ネタがない。ストーリーが思いつかない。 ということで、更新が遅れます。 楽しみにしてる方、すみませんが、気長に待っていてください。