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蠢きだした者達。


そこは山奥だった。

一般人では通れない、猟友会の人でも来ないような山奥だった。

そして、山奥であり、秘境であった。

周りを見れば、木が無数に立ち並び、名前もよく分からない草が生い茂っている。

そんな秘境でも、住所では日本の首都、東京都であるのだからビックリだ。

そんな秘境に小さな集落が形成されていた。

その集落の中で一番大きな日本家屋。

その中で多くの人間が集まっていた。

しかも皆さん忍び装束だ。

そんな皆さんの前で跪いている一人の少女、桃地 朱里だ。

周りの皆さんが忍び装束に対し、朱里は白のワンピース。

明らかに普通の恰好なのだが、いかせん、周りの皆さんが忍び装束なので物凄く浮いていた。


「朱里よ、霧島家はどうじゃ?」


忍び装束の皆さんの中でも一番ご高齢に見える老人が、少し身を乗り出して聞く。


「はい、皆さんいい人です」


「そうか……」


老人は長い髭を触りる。


「……で、お主の"夫"はどうじゃった」


「はい、私が思っていた通りの方で気に入りました」


「そうか、それは良かった」


ホッホッホと笑う老人。

しかし、すぐに笑わなくなり、只でさえ細い目を更に細め、声のトーンを少し低めに言った。


「そやつの忍びとしての実力は……どうじゃ?」


その瞬間、部屋の空気が冷たくなった感じを朱里は感じた。


「実力は計りかねますが……私のシバ吉を退けました」


「うむ、シバ吉を……。じゃが、それだけでは力量を計りかねるのぉ」


「……しかし、シバ吉に勝ったのであれば、それ以上の力量があるのでしょう」


老人の横にいた男性が、老人に耳打ちをし、さらに続ける。


「我が桃地の一族の同じくらいの年齢の者に、シバ吉に勝てる者は朱里ぐらいかと……」


「うむ……」


老人は難しそうな表情をする。


「朱里、もう良いぞ。長旅で疲れただろう。ゆっくりしていきなさい」


「はい」


朱里はお辞儀をすると、後ろに下がり、襖の奥へと消えていった。

部屋に残ったのは忍び装束の皆さんだけだ。


「やはり、霧島家の力は侮れんのぉ」


「確かに、霧島家の者は、"忍三家"には手に負えない特殊性を伴う出来事に駆り出されますからね。"忍三家"より、実力が上であるとは分かっていましたが……」


「さすが、霧島の血……というべきじゃな」


「そうですね。闇の世界が力をつけ、"忍三家"の力のみで対処仕切れなくなっている今、霧島の血は我々の新たな力として必要かと……」


忍び装束の皆さんが頷いた。


「将来、"忍三家"で我が桃地の一族が優位に立つには、我が桃地家に新たな血……霧島の血を入れ、技を手に入れる……」


老人の言葉に皆さんが再び頷く。


「……しかし、"忍三家"の他の一族も、我らと同じことを考えているはずじゃ」


「どういう事です?他の一族が、例え霧島の血を狙っていたとしても、霧島家の当主が桃地家の者から息子の嫁にという依頼があったのでしょう。なら、他の一族は諦めるはず……」


比較的、若いと思われる人からの疑問。

老人は静かに目をつむり


「確かに、霧島家の当主から、『誰か、息子に嫁を!』という便りがきたときは、そりゃ、かなり喜んだんじゃが……」


老人はカッと目を見開き


「あの霧島家の当主!他の一族にも同じ手紙を送っとった!」


老人の言葉に、周囲にざわめきが広がる。


「え〜〜い、静まらんかぁ!」


老人が声を張り上げ怒鳴る。

頭の血管がプッツンといってしまいそうな気迫だった。

その気迫に一気に皆さんが静まった。


「全く、年寄りへの配慮がたらん……」


老人はぼそっと一言いった後、咳払いを一回して立ち上がる。


「いいか、皆の者。我が一族の繁栄のため、何としても……。何としても、朱里と夫婦めおとにするのだあぁぁぁぁ!(出来れば婿として)」


老人の叫びに同調し、周りの方々も……


『うおぉぉぉぉ!!』


夜の秘境の集落に雄叫びが響き渡った。




その頃、霧島家邸宅……


へっくし!


「あら、風邪?」


「う〜〜ん、そうかな?」


確かに、ちょっと寒気だするが……


ゾクゾクッ


「う、なんだ?急に寒気が……」


「あら嫌だ。本当に風邪かしら?」


「……とりあえず、もう寝るよ」


「そうしなさい」


僕はリビングから出て、自分の部屋に入る。


何でも急に寒気なんか……。

まさか、これから別になにも起こらない……よね?

ただの風邪だよね……。


僕は自分にそう言い聞かせながら眠りにつく。嫌な予感がビンビンしてるのは……気のせいだよな。

どうも、シリーズで読んでいた小説が最終巻を迎え、悲しみに打ちひしがれている月見 岳です。 ……あぁ、楽しみがまた減った。 さて、今回はプロローグ的なものです。というか、最初は本当に話のプロローグの一部でした。 しかし、思いのほか長くなったので、"プロローグ的な一話"としました。 じゃあ、次回が本編なのだろうか……。むしろ、この小説自体、短編集であって本編はないのではないか……。深い事は考えません。問題は先送り。作者の計画性のなさが見えてしまいますね……。

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