表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/53

舞、社会科は苦手?

番外編……みたいな感じかな?

鬱陶しい梅雨も抜け、蝉が鳴き出して夏の趣が出てきたこの頃、7月に入り夏休みがもう、すぐそこまで来ている。

しかし、夏休みに入る前に、中高生達には越えなければいけない壁が存在する。


"期末テスト"


この壁を越えられなかった者は、夏休み期間中に学校に行き、補講を受けた上で追試を受けなければならない。

それが嫌で普段、机に向かうことがない生徒達も、机に向かい勉強する。

勿論、僕も机に向かって――


「あ、バッテリー切れた」


はい、某タッチペン式のゲーム機をしてますよ。

ちゃんと勉強机で……。

……えっ?遊んでるじゃないかって?

脳をトレーニングするやつだから遊んでないよ。

こんな事をしているけど、実はもうテスト3日前。

普通なら大変な目にあってるところだ。

しかし、僕はまだ余裕がある。

だからと言って、僕が天才な訳でもない。

成績は中の上だ。


まぁ、日々の努力の結果……と言いたいけど、僕は大体一夜漬けで勉強するからね。

一夜漬けのプロなのさ。

だから、テスト前日まで余裕があるんだよ。


僕はバッテリーが切れたゲーム機を充電器に繋ぎ、代わりに本棚から文庫本を取り出す。

ある映画の原作だ。


その文庫本を開いて読み始めた時、僕の部屋のドアがノックされた。


「どうぞ〜」


ガチャと音を立て開くドア。

入ってきたのは舞だった。


「失礼します兄上」


「舞、どうかしたの?」


「はい、実は……」


舞はおもむろに何かの本を出して


「勉強を教えていただきたく……」


差し出されたのは『歴史』の教科書。

ご丁寧に『地理』までセットになっている。


「えっと……自分でできないのか?」


「はい……教科書を読んでもサッパリ……」


恥ずかしそうに顔を俯かせる舞。

参ったな……。

歴史なんて暗記みたいなものじゃないか。


「分かった。教えてあげるよ」


「ありがとうございます兄上」


僕は立ち上がり、本棚の脇に立てかけていた折り畳み式のテーブルを部屋の真ん中におく。


「さて、テストの範囲は?」


「近代です」


僕は舞の教科書をめくり、近代のあたりが書いてあるところを開く。

途中、肖像画に落書きがあったのは見なかったことにしよう。


「え〜〜と、とりあえずどれだけ知識があるか問題を出すよ」


「分かりました」


「まず一問目」


1914年、オーストリアのフランツ・フェルディナント大公が暗殺されたサラエボ事件を契機に勃発した世界規模の戦争は?


「……第三次中東戦争」


「……えっと、それは思いっきり現代だよね」


「というのは嘘で……」


「嘘で?」


……舞の目が泳いでる。


「……た、太平天国の乱?」


「……答えは第一次世界大戦だからね」


「あ、あ〜〜〜、そっちですか」


そっちとはどっち何だよ。

分かってないだろ……。


「二問目」


明治になり、西洋の文化が入り、制度や習慣が変わった現象をなんと言うか?


「ぶ、ぶん……」


「ぶん?」


「文明……」


お、後少しだ。

もう正解に近づいている。

さぁ、大きな声で


「文明論之概略!」


―ガクッ―


僕は予想だにしない解答に頬杖をついていたのがズレて、机に顔を打ち付けてしまった。


文明論之概略って言ったら、一万円札の肖像画で有名な福沢諭吉の著書じゃないか。

まぁ、確かに刊行したのは1875年(明治8年)だけどさ!


「兄上、大丈夫ですか?」


「だ、大丈夫だけどさ……文明論之概略なんてよく出てきたね」


「もしかして……正解ですか!?」


「いや、不正解だ」


一瞬、嬉しそうな表情をしたがすぐにシュンとしてしまった。


「正解は文明開化だからな」


「引っかけ問題ですか……」


引っかけじゃないんだどな。


「次、地理の範囲は?」


「日本全体です」


「そうか、とりあえず……」


各都道府県の県庁所在地を述べよ。


「んじゃ、ノートに書いていって」


そう言って僕は舞にノートを渡す。

ノートを受け取った舞は、頭を抱えながらも書き始める。


――20分後


「で、出来ました……」


「ん、どれどれ」


舞からノートを受け取る。


「札幌市、富山市、那覇市……バラバラだな」


せめて、東北は東北とかでまとめて欲しかった。


「水戸市、神戸市、広島市……」


うん、なかなか順調に当たっている。


「高松市、松江市、前橋市……うん?甲賀市だと?」


滋賀県の県庁所在地が甲賀市になっている。

滋賀県は大津市だろ。

あれ、よく見れば三重県も伊賀市になっているじゃないか。

三重県は津市だろうが。

……まさかあれか?忍者繋がりか?


「どうですか?」


「う〜〜ん、滋賀県と三重県以外は正解」


「甲賀市と伊賀市ではないのですか?」


「大津市と津市だからね」


「惜しいですね」


……どこがだよ。

僕は溜め息をつく。


「舞、残念だけど、歴史に関しては僕が教えるより、まず基本的な事を覚えなきゃ。というより、歴史なんて覚えてなんぼだからね」


「……はい、分かりました」


「んじゃ、一人で歴史暗記しておきな」


「えっ?地理を教えてくれるんじゃ……」


「歴史、今すぐやらないと、多分酷いことなるぞ」


「……………」


「そんな点数、母さんに見せたら……」


「……(ビクッ!)」


舞の体が小刻みに震え出す。

どうも、脳内でシュミレートしたみたいだ。


「兄上、助けてください……」


ウルウルした目、しかも上目遣いで僕を見てくる。

普通ならここで折れる所だけど……


「ムリ!」


即答する。

もう、その目には抗体が出来てるんだよ。


「そ、そんな〜」


「まぁ、骨は拾ってあげるよ」


「あ、兄上〜〜」


「そんなに嫌なら朱里さんに教えてもらいなよ。僕ではお手上げ」


僕は実際に両手をあげてみせる。


「それはなんか……嫌です」


「なんで?」


「何というか……プライド?」


「そんなプライド捨てちまえ!」


全く、危機感がないんじゃないか?


「とにかく、母さんに殺され……じゃなかった、怒られたくなかったら朱里さんに教えてもらうこと。いいね?」


「……はい」


舞はうなだれて僕の部屋から出て行く。


「!舞、忘れ物!」


教科書を忘れていくとは……。

僕はドアが閉まる寸前に投げる。

教科書は隙間を通り、舞に直撃。

ドアが閉まると同時に舞が倒れる音がした。

……まっ、いっか。






その後、舞は朱里さんの教えもあり、78点という点数をとることができ、母さんの鉄槌が振り下ろされる事はなかった。

その代わり、他教科の点数が少し落ちたらしい……。

ちなみに僕はすべて平均点+15点という点数をとり、ある意味凄かった。

月見 岳です。 今回は霞が舞に勉強を教える(と言っても、さじを投げましたが)話でした。 あぁ、当初の舞の設定が壊れていく……。 初めは無口キャラのつもりだったのに……。 さて、次回更新は……少し遅いかも? 感想等してくれると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ