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学校にて

僕が通っている高校は柚城ユズシロ学園高等学校。

小中高の一貫校で、中学と高校は隣同士で簡単に行き来ができる……というか渡り廊下で直接繋がってたりする。

ちなみに小学校は全く違う場所に独立して存在している。

涼と舞と別れた僕は、そのまま校舎に入る。

教室に向かう途中、数人の知り合いと出会い、朝の挨拶を交わしたが、これといって変わったことではない。

1-Cの教室に辿り着き、何の躊躇いもなく扉を開く。

僕が扉を開いた瞬間、教室にいたクラスメート達がこちらを向いたが、すぐに興味をなくし、各自お喋りなどに戻る。

僕はそのまま自分の席に向かう。窓際の真ん中の席だ。

とりあえず僕は席につく。

あ〜〜〜、暇だな〜〜〜。

僕が机に突っ伏していると横の席に誰かやってきた。

たしか隣は………誰だったかな?

まぁ、忘れていたって問題はないっか。

ほとんどのクラスメートの名前なんて覚えてないし。

……そういえば、その事をある友人に言ったら、『お前、少し人間に興味を持てよ』って言われたっけ。


「よっ!霞」


そう言って僕の背中を思いっきり叩く男。

彼は僕の友人の一人で、僕に人間に興味を持てと述べた人間、早川ハヤカワ アズマという。

サッカー部所属でキーパーをしている。話に聞くと、どうやら1年生でありながらもレギュラーらしい。その事も関係してか、東はよくモテる。


「おはよう霧島君」


東の後ろからひょっこり現れる女子。

彼女は東の幼なじみ、滝川タキガワ 鳴海ナルミだ。

なかなか髪が長くて可愛らしい女の子で、学校で人気があるとかないとか……


「おや、今日も『夫婦』で登校ですか」


「あはは、やだな霧島君」


そう言って僕の背中をカバンで叩く。

思いっきり振りかぶられていたこともあり結構痛かった。東と鳴海は仲がいい。

二人は付き合っているという噂があるくらいだ。

僕は、この噂は正しいと思っている。


「そんな照れ隠ししなくても、もうみんなにバレてるよ」


僕は親切にその行為が無意味であることを告げてあげる。


「へっ、バレてるって?」


「二人が付き合っていること」


「…………」


あれ、黙っちゃった。

東のほうは固まってるし……。

僕、変なこと言ってないよね。


「私達、そんな風に思われているんだ」


「ああ、そうみたいだな」


錆びたブリキ人形みたいにギギギと首を動かし二人は視線を交わしていた。

いや〜、仲がいいね〜


「あのね、霧島君。私達は付き合ってなんかないよ?」


「そうだぞ、俺たちは付き合ってない」


「ははは、今更そんな嘘が――」


『付き合ってない!!』


二人がハモって否定する。

何か必死だな〜。

そんなに隠したいのか。


「……お前、まだ信じてないようだが俺達は本当に付き合ってないからな」


「そうだよ霧島君」


「………そうなんだ」


「良かった!信じてくれたんだ!」


「いや、まて!コイツ絶対信じてないぞ」


おっ、よくわかったね東。

この時ちょうどチャイムがなって、東と鳴海は自分の席に戻っていった。

担任の先生がやってきて朝の連絡を聞き流し、そして午前中の授業を特に居眠りをすることもなく、ただ無心の状態でボ〜〜〜っとして過ごした。



昼休み。

僕はいつも気に入っている場所で昼食をとっている。

その場所とはズバリ中庭の外れにある比較的大きな木の下。

日当たりがよい上にめったに人がくることがない。まさに独りで居たいときにぴったりの場所だ。

そして今日も僕はそこで昼食を独りで食べるつもりだった。


「アレ?誰かいる……」


どうやら先客がいるようだ。仕方ない、教室に戻ろうかな。


「あっ!兄さん!」


先客から声がかかる。

僕の知っている声、涼の声だ。

先客とは涼だったのか……


「涼はなんでここにいるのさ?」


「兄さんと一緒にお弁当食べようと思って……。姉さんももうすぐ来るよ」


「舞も来るのか……」


その時、僕達の上空を黒い影が通過し、木に突っ込んだ。


「………舞、大丈夫?」


僕がそう呼びかけると、


―シュタ―


舞が何事もなかったように一瞬で降りてきた。だけど髪には葉っぱとかが絡まっている。


「問題ない。ちょっと急ぎすぎただけ」


「姉さん!いくら急いでたからって『跳んで』きちゃダメだよ!誰かに見られたらどうするの!」


「それも問題ない。私を見切れるのは父さんと母さん、それに兄さんだけ」


「そうだけど……」


「それに、早く兄さんと一緒にお弁当を食べたかったから……」


「おい、僕は一緒に食べるなんて……」


僕はそれ以上言葉を発することができなかった。

だって、舞と涼が潤んだ目でこっちを見てくるし……。

涼、男なのにその顔はダメだろう。


「ハァ、仕方ない、はやく食べよう。昼休みが終わっちゃうよ」


僕はため息をつきながらそう告げると二人は顔を輝かせた。

あぁ、僕って押しに弱いんだな〜

そう自分で思いながら昼休みを過ごした。

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