霧島家に居候。
思ったより早く更新できました。
僕は、一旦家に帰った後、某王手レンタルビデオショップに借りていた映画を返しに行った。
すると、そこで偶然にも中学時代のクラスメートに出会い、話しかけられた。
相手は僕が変わったことに驚いていたが、僕は相手の名前が思い出せず、とりあえずその事がバレないように適当に話を合わせていた。
中学時代といっても3ヶ月ぐらい前に卒業したんだけど……。
コラ、そこ!薄情なんて言わない!自覚してるから。
まぁ、そんなハプニングを乗り越えて、僕は返すついでに、新たに映画を借りてきた。
今度はスパイアクション。
こういう映画に出てくる道具とかはなかなか面白いものが多く、新しい忍具の開発に役立つ……と思う。
そしてその帰り、急がないと夕飯に間に合いそうになかったので、僕は建物の屋根を『跳んで』行くことにした。
これなら、家まで一直線で帰れるし、なにより車に轢かれる心配もない。(当たり前)
いつもは見つかるとヤバいからやらないんだけど……。
そのおかげで無事、夕飯前にたどり着くことができた。
玄関を開け
「ただいま」
というと、
「おかえり〜」
と母さんの声がリビングから聞こえた。
他にも涼と舞の声も聞こえる。
あれ?他にも女性の声が……あっ、テレビか。
僕は取りあえず皆が揃っているであろうリビングに向かう。
「あ〜、お腹減ったよ」
そう言ってリビングに入る。
「それじゃあ夕飯にしましょうか」
皆が食卓につく。
父さんがまだ帰ってきていないのはいつものことだ。
『いただきます』
と、手を合わせ声をそろえる。
今時こんな事をする家庭は少ないんじゃないだろうか……。
「ねぇ、兄さん。また映画借りてきたの?」
「あぁ、今度はスパイアクションだ」
「へぇ〜、観るときには言ってね。ボクもみたいから」
「兄上は恋愛物は観ませんね」
「そうだね、なんか純愛とか観ているとムカついてくるんだよね。絶対なんか別の思惑があるだろって思っちゃうから」
「……僻み?」
「涼、あとで覚えてろ」
こんな感じで、いつものように賑やかな食卓。
会話に花が咲く。
僕は冷や奴を食べようとして、醤油をかけていない事に気づく。
醤油さしは涼の前。
「涼、ちょっと醤油取って」
「どうぞカスミさん」
「あ、どうも朱里さん」
涼の向かい、つまり僕の隣から醤油さしが差し出された。
僕は醤油さしを受け取り、冷や奴にかける。
あっ、醤油かけすぎた。
……アレ?なんかおかしい。
冷や奴にネギが乗ってないことか?
……そんなことじゃない。
一体なにが変なんだ?いつもと何かが違う
「どうかされましたか?カスミさん」
「いや、何かへ……」
「へ?」
「…………」
「……カスミさん?」
「……な、なんで朱里さんがウチに居るんだ!?」
今更気付いたけど、僕の隣には朱里さんが座っている。
というか、ウチの食卓に馴染みまくっている。
「霞、食事中に大声を出すもんじゃないわよ」
「いやだって――」
「霞、わかった?」
「……はい」
仕方が無いじゃないか。
まさかテーブルの下から僕のお腹に忍者刀を突きつけてくるんだから……。
母さんには逆らえないよ、ホント。
夕飯を食べ終わり、とりあえず僕は朱里さんがなぜウチにいるか本人から聞いてみることにした。
「ちょっと朱里さん、今いいかな?」
「はい、いいですよ」
母さんの代わりに食器洗いをしていた手を止める。
朱里は自ら食器洗いを申し出たのだ。
今時、こんな娘はいないだろう。
そして、仕事を請け負ってもらった母さんは、現在ソファーに座ってくつろいでいる。
「あのさ、君の事なんだけど……」
「私がどうかしましたか?」
「うん、なんでウチに居るの?」
「えっと、妻だからです」
また『妻』か……。
この娘大丈夫か?
「あのさ、妻って……誰の?」
「そんなの決まってますよ。あなたのです」
朱里さんはそう言って僕を指差す。
つられて僕も自分を指差す。
「僕?なんで?」
「写真を拝見させてもらいました」
写真?
「その写真を見て衝撃を受け――」
「ちょ、ちょっと待って!写真てどんな?」
「えっと、ちょっと待ってください」
朱里さんがゴソゴソとズボンのポケットを探る。
「あっ、これです」
差し出されたのは一枚の写真。
そこには僕が写っている。
髪を切った日に撮った写真だった。
「この写真を見た瞬間、カスミさんを気に入りまして……カスミさんがどのような人物か知るためにここに来たんです」
「そ、そうなんだ。ところでこの写真はどうして?」
「これはカスミさんのお父様から送られてきたんです」
あのクソ親父!!
勝手になにやってんだ!
あの時に撮った写真にこんな思惑があったなんて!
「あの……カスミさん?」
「あ、ゴメン。ちょっと考え事してた」
「そうですか」
「まぁ、君がここに来た理由は分かったよ。でも一人でこの町に来たの?」
「はい」
「じゃあ、一人暮らしなんだ。大変だね」
「いえ、そのことですが……」
急に歯切れが悪くなる朱里さん。
その様子に嫌な予感がする。
「あら、朱里さんならウチに住んでもらうわよ」
リビングでくつろいでいたはずの母さんが台所にやって来た。
……ちょっと待て。
ウチに住んでもらうってどういうことだ。
「母さん、どういう事だよ」
「朱里さんはウチで預かるの。つまり下宿よ下宿。ちょうど一部屋余っているし、相手の親御さんも一人暮らしさせるのも不安でしょうしね」
なんか、最もらしい理由だけど、絶対に面白がってやってるよ。
「と言うこと何で……」
朱里さんはおもむろに、着けていたエプロンを外すと、その場で正座をして三つ指をたてると、
「ふつつかもので御座いますが、よろしくお願いします」
朱里さんは深々と頭を下げた。
こうして、霧島家に新しい住人が加わることになった。
はい、どうも読んでくださってありがとうございます。 はてさて、実は作者、今まで忘れてました。 ……霞の母親の名前。 皆さんは覚えてますか〜? この前、読み返してみて気がついたんですけど、霧島 千里なんですよ、一番最初のお話を読んでください。 霧島家で名前がないのは父親だけなんですよね。 そのうち明らかになると思います。 では、また近いうちに更新をしたいと思います。 これからもよろしくお願いします。 次回は久し振りにちゃんと東が登場(予定)です。