霞、修羅場体験?
更新、遅れましたね。スミマセン……。
あの後、異様な雰囲気の中昼休みは過ぎ、午後の授業へと入った。
5時間目の数学の授業の間、後ろからの強烈な視線……もとい殺気を感じながら受けることになった。
始めは気にしないつもりだったが、その殺気はじわりじわりと僕にダメージを与えていき、胃がキリキリと痛んできた。
その痛みは時間がすぎることに増していき、そして6時間目は保健室で一時間休む羽目になった。
耐え忍ぶことが忍者として必要なのに……。
視線だけで僕の耐久力を奪うとは……。
……鳴海、侮れん。
「いたた」
くぅ〜〜、まだ少し痛いな。
だけどもう戻らないとな。
「先生、お邪魔しました」
「はいよ〜〜」
僕は保健室から出る。
それにしても軽い保険医だな。
僕はまだ感じる痛みを我慢しながら教室に向かう。
「――っ!いたた!き、急にまた痛みが……」
1-Cの教室がある廊下に足を一歩踏み入れた瞬間、痛みがまた……。
あ〜、なんかある教室から禍々しい雰囲気が漂っている。
忍者歴16年、今までいろんな経験をしてきた。
だけど、視認できるような殺気を見た(?)のは初めてだ。
「……あ、あそこに行かなければならないのか?」
というよりあそこに『行く』前に、先にあの世に『逝く』ような気がするんだが……。
そんな感じで僕は教室に向かうのを躊躇っていた時だった。
1-Cの教室の扉がガラッと音を立て開いた。
そしてそこから我らの担任、持田先生が顔を真っ青にして出てきた。
お腹でも痛いのかな……?
「……駄目だ、このままでは全滅してしまう……」
持田先生が僕の存在に気づく。
その瞬間、救世主が現れたような表情。
「霧島君!待っていたよ!さぁ、教室に入りたまえ!」
「え?いや、先生?あんな所に入ったらヤバいですよ?」
「あんな所とは失礼な!君のクラスだろ!」
「いやまぁそうですが……」
「それに君がいないと困るんだ!君はクラスの期待を背負ってるんだ!名誉なことだろ」
「別に名誉なんて欲しくありません」
「そんなことを言わずに……生け贄になってくれ」
「ちょ!生け贄ってどういうことですか!?」
「それは……教室に入ればわかることだ」
気がつけば教室の扉の目の前。
僕の生存本能が撤退を呼びかけている。
「さぁ、覚悟を決めたまえ」
「え?なに?僕が入ることは決定ですか?」
「君はC組の英雄だ」
持田先生は僕の背中を掴み、空いている方の手で扉を開き、教室に僕を投げ込んだ。
「うわっ!」
咄嗟のことだったので着地に受け身をとることが出来ず、腰を強打した。
しかし、そんな事は関係ない。
僕が教室に投げ込まれた時点で事態は急変した。
全ての殺気が僕に注がれている。
発生源は……鳴海。
……ちょっと待て、僕の席は鳴海の前じゃないか。
発生源に近づくという愚行は避けたいんだが……。
「霧島君、早く座りなさい」
教壇に立つ持田先生からの指示。
それでも僕が躊躇していると、
「周りの生徒を見てみなさい」
という持田先生。
僕は言うとおり周りの生徒を見て、そして気がついた。
クラスの全員といっていいほどの人数が机に突っ伏している。
みんな寝ているのではなく、失神しているようだ。
意識がある人をちらほらいるけど、みんな顔をしかめている。
「これ以上、犠牲者が……ぐっ……で、でる前に……君には生け贄に……」
持田先生が胸を押さえて苦しみながらも、教卓を支えにして踏ん張っている。
なかなか頑張っている。
だけど……僕は自分の身の安全を優先する!
「早退します」
と宣言をし、教室の出口へ右向け右。
「なっ、ちょっと待ちなさい。後、HRだけだから……」
「イエイエ、帰りますよ。死にたくないし」
「君はこのクラスを見捨てるのか!?」
「先生は僕を見捨てましたよね?」
「ぐっ、だ、第一、この状態にしたのは君のせいだろ」
「知りませんよ」
その時、今まで微動だにしなかった鳴海が、首だけ動かしてこっちを向く。
その顔を異様なまでの笑顔。
それがまた怖かった。
「霞君」
「はい」
「早く座りなよ」
「……えっと」
「座りなよ」
「……はい」
有無を言わせない。
そんな感じ。
僕は仕方なく自分の席に座る。
ぐっ、強烈な殺気が……。
一瞬で背中が嫌な汗でびっしょりだ。
持田先生、早くHRを終わらして!
僕の胃に穴が開く前に!
無事HRが終わり、さぁ帰ろう(もとい逃げよう)として、陸上短距離の選手もビックリのスタートダッシュを切ったのだが……。
「ちょっと待った」
と鳴海に肩を掴まれた。
東より力強くないか?
「霞君?今失礼なこと考えなかった?」
ミシミシと音を立てる僕の肩。
「そ、そんな事ナイヨ?それより、肩放してくれないかな?」
「ダメ」
あえなく却下されてしまった。
「それより、私ちょっと聞きたいことがあるんだ〜」
「へ、へぇ〜、なにを〜」
「それはここで言えないから、屋上へごあんな〜い」
僕はそのまま鳴海に引きずられていく。
誰か、僕と変わってください……。
今ならオマケもついてきますよ〜。
鳴海に引きずられて屋上へ。
そこには一人の女子生徒がいた。
僕も知っている桃地 朱里さんだ。
「さて、説明してもらうよ」
そう言って引きずってきた僕に、手を腰において顔を近づける鳴海。
「説明ってなにを?」
なんとなく察しはついているけど、あえてわからないふり。
「なにって……桃地さんが霞君の奥さんだってこと!」
「ハッハッハ、聞き間違いじゃないの?」
その時、朱里さんがボソッと
「……妻です」
空気が凍りついた。
僕は作り笑いをしたまま固まる。
「桃地さん?いまなんて?」
あ、鳴海から黒いオーラが出てる。
顔は笑ってるけど
「私はカスミさんの妻ですと言ったんです」
「……霞く〜ん?ど〜ゆ〜こと〜?」
「し、知らない」
「知らない訳ないでしょ!」
「ほ、ホントだって!僕の両親が勝手に決めたことだから!」
「……そう」
鳴海は僕をジト目で見ている。
どうもまだ信じていないな。
……というより、僕がなんでこんなに必死にならないといけないんだ。
なんか、馬鹿らしくなってきた。
「じゃ、話がそれだけなら僕は帰るから」
敬礼みたいな感じに手を上げ、出口へ向かおうと……。
「ちょっと待ってください」
朱里さんからストップがかかる。
予想していなかった人物からだったので少しビックリした。
てっきり鳴海からだと思っていたんだけど……。
「な、何かな?僕は早く帰りたいんだけど」
「え、いや、自己紹介がまだでしたんで……」
言われてみればそうだ。
「僕は霧島 霞」
「桃地 朱里です。今日からお世話になります」
「……あれ?鳴海は自己紹介しないの?」
「霞君が保健室にいる間にもうしたよ。朱里さん、霞君に会いに来てたから」
そうだったんだ。
「それじゃ、僕は帰るから!」
僕はそう言い残し、屋上から立ち去る。
鳴海が何か言ってたみたいだけど無視。
僕は階段を駆け降りていった。
帰ったら父さんに断固抗議してやる。
はい、やっと新キャラの桃地 朱里さんの登場です。 更新が遅れてすみません。この作品、主人公が忍者なのに忍者らしくないような気がして作品の方向を考えていました。今も悩んでます。なんとかなると思ってますが……。