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霞、遭遇する。

新しい連載しました。そちらもよろしくお願いします。

父さんたちの話から数日。

僕は胸につっかえるような感じがしていた。

なにか、僕は大事なことを忘れているような気がする……。

しかもかなり重要なことを。


「……う〜〜ん?」


このところ僕はずっと思い出そうとしている。

"あの話"の前のことだったと思うんだけど……。


「……う〜〜ん」


「おいおい、どうしたんだ。朝からずっと唸ってるじゃないか。道に落ちてるものでも食べたか?」


僕が首を捻って考えていると、東がとても失礼なことを言ってきた。


「失礼な!僕が東みたいに道に落ちてるものを食べる訳ないだろ」


「食べるか!」


「えっ!食べないの!?」


「……そんなにびっくりしないでくれるか」


東はがっくりと頭を垂れる。


「俺ってそう思われてたんだな」


「なにを今更」


「…………」


東は頭を垂れたまま、ヨロヨロと自分の席に戻っていった。

途中、他の人の机に当たって席の人にボールペンでつつかれていた。

なぜか東の周囲だけが薄暗く感じるのは気のせいか?


「ねぇねぇ霞君」


クイクイと制服の袖あたりを引かれる感じと共に背後から聞こえる声に僕は振り返る。

そこには最近、僕のことを"霧島君"から"霞君"と呼ぶようになった鳴海が後ろの席に座っていた。

確か僕の後ろは鳴海じゃなかったような……。


「なんかね、A組に今日転校生が来るみたいだよ」


「ふ〜ん、そうなんだ」


「あれ?気にならないの?転校生だよ?」


「うん、どちらかといえば、鳴海が僕の後ろの席に何故我が物顔で座っているかの方が気になる」


「え?さっき席替えしたじゃない」


「え!嘘!?」


そんなの知らないぞ。


「霞君、クジ引かないから同じ席なんだよ」


なんてこった……僕が思考の海を彷徨っている間にそんな事があったなんて。

……あれ?東の席、変わってないな。


「東、席変わってないけど……」


「あぁ、東君はクジを引いても同じとこだったんだよ」


うわっ、それは可哀想に……。

けど、なぜか僕の心が少し晴れた気がするのはなぜだろう。




午前中の授業を必要に思ったとこ以外、全て聞き流してそつなく過ごした。

そして、今は昼休み。

いつもなら、お弁当を持って中庭で食べるところだけど、今日は生憎母さんが『なんか、今日お弁当作る気がしない』という理由でお弁当を作ってくれなかった。

仕方なく、僕は食堂へと足を運ぶ羽目になったのだが……


「……一体、何事だ?」


教室を出てすぐに、廊下を埋め尽くす……とまではいかないけど、通行に支障をきたす程の人がいた。

どうも中心は1-Aみたいだ。


「……うわぁ〜、凄い人だね」


僕と同じく食堂に行くつもりだったのか、鳴海が僕に声をかける。


「これ全員、転校生を見にきた人達だよ」


「へ?転校生?」


「も〜〜霞君。朝に教えたでしょ」


……そう言えばそうだった。


「……仕方ない、回り道していこう」


「え!?転校生、どんな人か見に行かないの?」


「うん、特に知り合いになりたいとも思わないし」


それにあんなに人に囲まれては相手も嫌になるだろう。

そこにさらに人が増えるとなると相手が不憫だ。

それより、食堂でなに食べようかな……。

そんなにお金使いたくないんだよな〜。




僕は鳴海と二人で食堂に来た。

あまり食堂に来たことはないが、この学校の食堂はよく混んでいる。

これは座るところ探すのも大変だな。


「混んでいるな」


「う〜〜ん、そうだね。私が席を取っておくから、霞君は私の分も買ってきてくれない?」


「分かったよ、何がいい?」


「私、カレーがいいよ」


「了解」


僕は一番の混雑の様相をみせる一角に向かう。


「痛!誰だ、俺の足を踏みやがった奴は!」


「あ、そのカツ丼僕のです!」


「やべっ!20円足りねぇ」


「ちょっと、何順番抜かしてるのよ!」


「うわっ!誰だ、俺の制服にケチャップつけやがったの」


怒声が飛び交う人混みの中、僕は隙間を縫って進み、邪魔な奴は足を払って転かしたりして最前列に到達。


「おばちゃ〜ん、カレーライスとキツネうどん!」


僕は出来るだけ大きい声で言う。

何とか相手にも伝わったみたいだ。


「はい、カレーライスにキツネうどん!」


「ありがとう」


僕はおばちゃんに礼を言うと、混雑している一角から抜け出す。

さて、鳴海はどこか……。


「霞く〜ん、コッチコッチ」


食堂の一番端にあるテーブルの端に、僕の名前を呼ぶ鳴海がいた。

なんか、視線がこっちに飛んでくるんですけど……

いろんなとこから。

僕はそんな視線を気にすることを止めて近づく。


「はい、これ」


「ありがと〜」


僕は鳴海にカレーを渡すと隣に座る。


「大変だったでしょ」


「う〜ん、まぁ、人多かったしね」


ズルズルとうどんをすする。

うん、なかなか美味しいじゃないか。


「霞君は食堂初めて?」


「うん、いつもは弁当だからね。鳴海はいつも食堂なの?」


「いつもじゃないよ。たまにくるぐらいかな」


「そうなんだ」


油揚げをかじる。

お、これもなかなかだね。


「……あの、前いいですか?」


僕が油揚げの品評をしていると、向かいから声がかかった。

声からして女の子だ。


「どうぞどうぞ、座ってよ」


「は、はい。ありがとうございます」


どうやら僕の向かいに座ったようだ。

僕は今ダシを飲んでいてよく見えないけど……。


「……ふぅ」


ある程度ダシを味わい、鉢をテーブルに置く。

この時初めて向かいの女の子の姿を確認した。

黒いセミロングの髪にスッキリとした顔立ち……あれ?どっかで見たことがある顔だ……。

すぐに脳内で検索、そしてデータが出てきた。

朝の忘れ事と一緒に。


「な……っ!」


なんてこった!

今の今まで忘れてたけど、父さん達が勝手に人の結婚相手を決めやがったんだった。

そんでもって目の前にいるのは……


―お嫁さん―


確か名前は『桃地 朱里さん』だったな。

ってなんでこの学校に!?


「どうしたの霞君?」


「ななななんでもないですよ?」


いかん!

動揺しすぎだ!


「……あの」


「は、ハィ?」


いきなり話しかけられて変な発音になってしまった。

ヤバい、かなり不思議だ僕。


「霧島 霞さんですよね」


「ち、違いますよ」


「え?なに言ってるの霞君。そうじゃない」


な、なんて事を言ってるのさ鳴海は!


「やはりそうでしたか」


「霞君と知り合いなの?」


「知り合いもなにも……」


あ、なんかその後は言わないで。

と言うか言わないでください。

ヤバい事になりそうなんです。


「妻です」


この瞬間、周囲の空気が凍った。

鳴海を中心にして……。

ああ、嫌な予感がビンビンするよ……。

新しい連載しました。世界観は同じです。更新は出来るだけ頑張りますが、遅れていくことになると思われます。

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