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日々に変化の兆し

感想等あればしてください。


「いってきまーす」


僕はそう言って家を出る。

いつも一緒に行っている二人がいないことを除けばいつも通りだ。

舞はどうやら用事があるらしく、先に学校に行っている。

涼は僕が朝ご飯を食べている時点でまだ眠っていたから、きっと母さんによる恐怖の目覚めが待っているだろう。


「ひゃ〜〜〜〜!!」


朝の静かな住宅街に響き渡る涼の悲鳴。

全く、近所迷惑じゃないか。


僕は再び静かになった住宅街を歩く。

いつもと同じ景色だけど、今の僕には結構新鮮だ。

周りがよく見えるようになったし、いつも登校中に出会う小学生に『幽霊だ!』と指をさされることもなかった。

本当、周りから気味が悪いものを見るような眼で見られないようになって良かった。

僕は意気揚々と学校への道のりを歩く。


「にぃ〜ふぁ〜ん」


後ろから聞こえたくぐもった声に僕は振り返ると、涼がトーストをくわえて走ってきていた。


「に、にぃふぁん。おひふぇひふぁふぁふぃへ」


「なに言ってるか分かんないよ」


涼はくわえていたトーストを鞄を持っている手と逆の手に持つ。

口の中に入っていたのを飲み込むと、今度はちゃんと日本語を喋り出した。


「兄さん、おいてかないでよ」


「起きないのが悪い」


「起こしてくれてもいいじゃない」


トースト食べながら言われてもな……。

第一、トーストくわえて走って登校なんて普通するか?


「母さんが起こすだろ」


「母さんの起こし方じゃ、ボクの身が持たないよ」


「だったら自分で起きることだね」


「そんなぁ〜」


そんな子犬みたいな眼をしてもダメ。

もうその眼に対する耐性は出来ているんだ。


「兄さんの薄情者!」


「そうだけど?今更気がついたの?」


薄情なのは自覚している。


「……うぅ、嫌みが通じないよぉ〜」


あらら、涙目になっているよ。

涼って泣くと面倒なんだよな〜。

なかなか泣き止まないし、泣き声はうるさいし……。

まぁ、今じゃあおおっぴらに泣くようなことはなくなったけど……。


「ねぇ、兄さん。なんでボクを面倒なものを見るような目で見てるのさ!」


ん?よくわかったね。

今まで、涼は分からなかったのに……。

あっ、髪切ったからか。

今は普通に僕の顔は隠れてないしね。

あ〜あ、今までだったら表情とか読まれなかったのにな〜。


「ちょっと、兄さん!聞いてるの!?」


横で涼が何か喚いている。

うるさいったらありゃしない。

涼も泣きそうになったり怒ったりして大変だろうに……。

……情緒不安定なのかな?

とにかく、僕は横で喚いている涼の声がうるさいので聞き流すことにした。

涼は学校につく間、僕の横でずっと何か喚いていた。

途中、泣きそうな声で


「母さんに兄さんの悪事を捏造して言いつけてやる」


と聞こえたので、とりあえず兄弟の戯れとして絞めておいた。




学校に着き、僕はいつも通りに1-Cの教室の前。

そして、ためらいなく教室の扉を開く。

すでに教室に入っていたクラスメート達が、一瞬僕を見たけどすぐに興味を失して、各自自分のしていたことに戻る。

1秒、2秒、3秒、と時間が過ぎる。

そして、5秒たった時……。


―バッ!―


教室にいるクラスメート達が一斉に僕をみた。

なんか、視線が集中して恐いんですけど……。

僕は出来るだけ視線を気にせず、自分の席につくことにした。

あぁ、視線が痛い。


「なぁ、アイツ誰だ?」


「転校生じゃないのか」


「それだったら教室じゃなくて職員室だろ」


「というか、あそこの席誰だった?」


「え〜〜と確か……。ゴメン、分かんないや」


小声だけど、僕には聞こえる会話。

どうもクラスの中の僕は空気のような存在だったみたいだ。

正直、ちょっと悲しい。

まぁ、僕もクラスメートの名前なんて東と鳴海しか知らないけど。


「よっ!霞!」


その声と共に、背中に感じる衝撃と痛み。

その衝撃に少し驚きながらも僕は振り返る。


「おはよ、霧島君」


「あ、おはよう鳴海、東」


振り返るとそこにはやっぱり東と鳴海がいた。


「今日も『夫婦』で登校なんだ」


「いや、だから夫婦じゃないって」


「あっ、そっか。まだ東が18じゃないもんね、籍はまだ入れてないよね。……じゃあ今はカップル?」


「……言い方が悪かったな。霞、俺達は夫婦でもカップルでもない!ただの幼なじみだ!」


「それくらい知ってるよ。ただの冗談さ」


「……冗談にはキツすぎる」


そんな僕と東のやりとりを見ていたクラスメート達がざわめきだした。


「……霞って、まさか霧島のことか!?」


「たしか霧島君って、なんか幽霊みたいな人じゃなかった?」


「そうそう、なんか表情が前髪で隠れて分かんなくって気味悪かったわ」


「髪切るだけで人って変わるのね〜」


そんな感じの声が聞こえてくる。


「にしても、霞変わったな」


東が感嘆の声を漏らす。

その横では、鳴海が顔を真っ赤にしてこっちを凝視している。


「これは鳴海、急がないとヤバいんじゃねぇ〜か」


東が顔をニヤニヤさせて肘で鳴海を突く。


「え、いや、その……えっと……あの、だ、大丈夫だよ!」


顔が真っ赤なまま言う鳴海。

なにが大丈夫なんだろう……。


「そうか〜?今日の一件できっと狙ってくる奴が出て来るぞ。今までは鳴海一人だったから良かったけど、今度はそうも言ってられなくなるぞ」


「そうだけど……」


狙ってくる?

まさか鳴海は命を狙われているのか?

んなわけないか……。

きっとなにかの景品のことだろ。


「そんな弱気じゃいかん!女は度胸だろ!」


「女は度胸……」


「そうだ!度胸だ!」


「度胸……そうだよね!女は度胸だよね!」


なんか、東と鳴海が勝手に盛り上がっている。

盛り上がるのはいいけど、僕の席の隣でするのはやめてくれないかな……。


「ということで霧島君」


「へっ?なに?」


いきなり鳴海に会話を振られてびっくりした。


「今日から"霞君"って呼ぶことにしたから」


「あ、うん了解」


鳴海は僕の返事を聞くと満足そうな顔をして、スタスタと自分の席に行ってしまった。


「はは、少し進展だな鳴海」


「進展って、なにが?」


「……敵は意外と強敵かもな」


東は僕に呆れた感じで言うと自分の席に戻っていく。

一人残さた僕は、なんか今までに感じたことのない類の視線を感じ、その方向を見る。

そこには5人位の女子のグループが僕を凝視していた。

目立たず、普通に生活してきたのに……。

髪を切って素顔をさらけ出しただけで、なにか変わってしまった気がする。

……もぉ一体、なんなんだよぉ!

どうも! 月見 岳です。読者の皆様、こんな小説に付き合ってもらいありがとうございます。 さて、作者はこの小説、そろそろ最終回に繋げるような話を考えなければいけないと思っています。 しかし、全く思いつかない現状から、最終回はまだ先になることでしょう。 さっさと終わればいいのに! と思った方、どうもすいません。まだ色々とあるんです、はい……。 次回更新は少し遅いかもしれません。

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