第六章 学
想定内の出来事だったが、あそこまでドキドキしてしまったのはなぜだろう? 彼女は僕の顔をじっと見てきたが、何か顔に付いていたのだろうか。もしそれならそれで、これからはしっかりと鏡で身だしなみなどを整えなくては。でもなぜこれほど、考えてしまうのだろう? いつもの僕らしくない。
運動会練習が終わり、ぼーっとしながら教室で着替えていた。かなりざわざわと騒がしいのに、そんな声もまるで聞こえないようだった。
「おい、森沢、どうしたんだよ、ぼーっとして。おまえらしくないな」
親友の長野がすっかり着替えを済ませ、肩にぽんと手をおいてきた。
「僕はいつでも僕だよ?」
しれっと答える僕に、長野は笑いながら言った。
「とりあえず着替えろよ。あと三分か二分で女子たち入ってくるぜ?」
「あぁ……」
着替え終わり、僕はさっそく彼女の話を長野に話した。もちろん、自分が彼女を少しかわいいと思った、ということは口にしていない。
「ん? 今、一つ結びで猫背気味って言ったか?」
「あぁ、言ったが、何か心当たりでも?」
「うん……たぶんあいつだ」
「あいつって?」
長野はなぜかうれしそうににこにこしている。
「その子、福山 佐奈恵っていう子だよ。俺の幼馴染」
驚きだった。長野と彼女にそんな繋がりがあったとは。でも、確実に彼女とは限らない。
「もしよければ、今度会わせてほしい」
「佐奈恵が気になるのか?」
長野が彼女のことを下の名前で呼ぶのを聞いて、よくわからない、なんともいえない感情になった。
「いや、確認のためだ」
少し顔が熱くなるのを感じ、親友から目をそらす。何の確認かよくわからなかったが、思いつく言葉がそれくらいだった。
ほんっとーにありがとうございます!
第七話も是非!